上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
8月も後半に入り少し秋らしくなったある日。
俺は織姫と出会った。

*******


大学生の8月9月は夏休みだと相場が決まっている。
だが、夏休みは課題が付き物だ。
俺は夏休み後半を今以上に遊ぶため、只今奮戦中である。

毎日少しずつやっていたが、1日30分では少なかったらしい。
大体が終わらずに今の今までかかっている。
9月は何かと予定がある。バイトとかバイトとかだ。
そのためにも、ここ3日程は毎日課題と激戦を繰り広げていた。

……
…………


丸3日費やした甲斐があったのか大方終わってきた。
後はレポートを仕上げるだけだ。
だがまぁ、さすがに疲れた。息抜きの為にコーラを片手にベランダで休憩しよう。

少しずつ秋に近づいているとは言え、まだ熱帯夜は続いている。
ベランダへと続くガラス戸を開けると、纏わりつくような湿気と熱気、部屋の不快指数が途端に上昇する。
「うへぇ…暑い…」
ベランダに出ると幾分かマシだが、暑い。
ムカムカするほど暑い。
だが、ちょうど風が吹き抜けた。
纏わりつく湿気を引き離し、少しだが不快指数が下がる。
「はあ、下界がこれほど暑いとはのう……全く、下人はよく住んでられるの」
「だよなぁ、クソあっちいよな」
……ん?
俺は今、誰と会話した?ベランダには俺しかいないぞ。それどころか、俺は一人暮らしだ。話し相手なんか居もしない。
……お盆も終わってんだ、そんな事あってたまるかよ。
「こっちじゃ。こっちを向かぬか、おはん以外に誰も居らぬであろう」
声は「こっちを向け」と言っている。
だがな、俺はホラーが苦手なんだよ!!足とかガックガクなんだからな!
「なんとまあ。情けない大和男の子よのう。まあよい、時間がないからの」
突然肩を掴まれ、左へ90度回された。
目の前に居たのは、言葉では言い表しがたい程の美人のオネイサンだ。
着物姿が凄まじく似合っていて、半透明の羽衣も美しい。
顔も俺が今まで見てきた人間の中で、ぶっちぎりの美しさ。
美しすぎる**とか比ではない。
美しすぎて逆に軽く引くレベルだ。
「どうしたのかの?妾の顔に何か付いとるか?」
首を傾げて不思議そうな顔をする。
やべえ…かわいい。
「まあ良いか。さて、そちよ。この短冊は覚えとるか?」
何処からか取り出したのは赤い紙。
裏は白だが、何か判読不能の文字(?)が書かれている。
覚えとるかって言われてもな。
「やはり、覚えとらんか。まぁ14年も昔の事では仕方ないの。そちはまだ4つであったからの」
14年前?確かに14年前なら俺は4歳だが…何で俺の歳知ってんの?
「そちは七夕に願い事を短冊に書くであろう?願い事は妾たちの下に届くまで7年も掛かるのじゃ。妾たちは願い事の統計を取り、この国がキチンと繁栄しとるか調べておるのじゃよ。たが、この短冊に書かれた事が分からなかった、仕方ない故、7年掛けて直接訊きに来た訳じゃ」
……つまり、この人は…
「妾は織女星一等織女官のコトと申す。織女星の者は七夕の時しか星外に出られぬ故な時間があまりないのだ。さっさと願い事を思い出して貰えぬか」
……正体云々はもういいや。
考えるだけ無駄な気がしてきた。
簡単に言うと宇宙人で、とどのつまり織姫だという事だ。
だが、俺はコトに1つ言うべき事がある。

*******

「今日は七夕じゃない」

俺が真実を言うとコトは目を見開き、持っていた短冊を落とした。
「…どういうことか?七夕じゃない?今宵は7月7日の筈であろう?」
俺は今日が8月24日であること。
多分、今日が7月7日だと言うは旧暦であること。
大体願い事を忘れてしまった事を教えた。
「そ、そんな…旧暦とな?つまり…ひと月ばかり遅れた?」
飲み込みが早くて助かる。
「では妾は帰れぬのではないのか?何という事か…」

普通に帰れないのか?
「残念ながら織女星の者は7月7日以外に外に出られない。出ていたら川に流されてしまう。それに、そちの願い事も叶えておらぬし…」
半分泣きそうになりながらコトは言った。
うん、すごくかあいい。ヤバい、マジヤバイ。
…って、そうじゃないな。
コトは俯いているし、泣きそうになってるし。どうしよう。
「よし!決めた。」
俯いていたと思ったら急に顔を上げ、俺の目を見る。
吸い込まれそうな瞳は今まで(テレビで)見た宝石より綺麗だ。
視線が絡み合い、すごく恥ずかしい。
「頼みがある。願い事が分からないままでは妾は帰れぬ。それに、来年の七夕まで出発出来ぬと来たもんだ。」
うん、それはさっき言ってたよな。
だからどうした。
「うむ、妾を来年の七夕まで居候させて貰えぬだろうか?勿論、家事は手伝うし色々と頑張る故……ダメ?」
…卑怯だ。
行き先が無くて、美人でかわいいオネイサンが泊めろと言っている。
断れるか?俺には無理だ。
「そなたにはお願いをもうひとつ。来年の七夕までに願い事を思い出せ。良いな?」
…これ、思い出せなかったらどうなるんだ。
まあいいか。
なるように、なるだろう。
「そうじゃの。まず、そなたの名前を教えてくれぬか?」
「俺の名前は――」
こうして俺は織姫と出会った。
たった1日だけではなく、今日から一年間顔を会わせる事になる。
不思議と悪い気はしなかった。
スポンサーサイト
Secret

TrackBackURL
→http://436c75746368.blog73.fc2.com/tb.php/867-61a42599
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。