上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
2012.08.07 不器用物語
池田翠は俺の幼なじみだ。
黒髪ショートカットでメガネ、小柄な体型に少し大きめの制服、控え目な性格。
そして図書委員をしている。

*******

俺の知っている池田翠はこんなんではなかった。
体型は小柄で黒髪というのは同じたが、ストレートのロングヘアだったし、控え目な性格どころか誰とでも仲良くなれる奴だった。
本も小説より、ファッション雑誌を読むような、どちらかと言うと今時な女の子で、図書委員とは無縁であった。
だが、池田は高校入学と同時に長かった髪をバッサリ切って登校し、更に中学時代の友人達と距離を置き孤立していった。
そりゃあ、休み時間にずっと小説を読んでいたら孤立もするわな。

池田と俺は幼なじみと言うぐらいだから家は近所、ではないが保育所からずっと同じクラス…所謂、腐れ縁という奴だ。
だから、まぁ知っているというか…昔っからの付き合いだ、こいつは休み時間に小説を読むようなキャラじゃない。
友達と騒いでケラケラ笑うような明るい奴だ。

*******

今日も池田は文庫本を読んでいる。
中学までならnon・noやらCanCamを読んでいた奴が、ひと月以上ずっと小説を読んでいる。
流石に心配になった俺は話しかける事にした。
体を捻り、真後ろの席の池田に話しかける。
「なぁ池田」
「…………」
無視するか。
「お前、なんか悩み事でもあんのか?」
「…………」
まだ無視するか。
「何の本読んでんだよ」
「…………」
文庫本にブックカバーを付けて黙々と読む。
だがライトノベルであることは間違いない。挿絵があるか否かで大抵判断出来る。
「何だ?ハルヒか?」
「…………」
外れか。
「何読んでのかぐらい教えてくれよ」
「…………」
ハイ、無視ですね。
「なぁ池田よ、何で無視すんだよ。中学まで普通に話し出来てただろ?」
「………うっさい」
「?」
「うっさい!集中出来ない!!」
いきなり叫びやがった。
何なんだよ。…いや、話し掛けた俺が悪いのか。
「す、すまん。って、それより何で無視すんだよ」
「……バカ」
「あ?」
「うるさい。アタシは読書で忙しいんだから」
「んだよ。せっかく心配してやってんのに。そんなんだから孤立すんだよ」
言い終わった直後だ。
顔面
それも鼻に強い衝撃を受けた。
「!!?」
体を中途半端に捻っていたから、後ろに仰け反る訳でもなく、何かよく分からない具合に体を回転させながら椅子から転げ落ちた。
…どうやら殴られたようだ。
いてぇ…
超いてぇ…
「バカ!人間の屑!」
体を戻し、池田を見ると、泣いていた。
目を真っ赤にし、ボロボロと泣いていた。
流れ落ちる涙を拭おうともせず、肩で息をし泣いていた。
「うっ…うぅ……アタシが…」
「ちょ、どうしたんだよ」
「うるさい!ボケ!」
そう叫ぶと池田は教室を出て行った。

******

池田が出て行ってから友人らが寄ってくる。
完全に野次馬だ。
「大丈夫か?」
「鼻が痛い」
「そりゃそうだ。鼻血がすげえ」
「え?」
鼻の下を擦るとヌルヌルする。手を見ると真っ赤だ。
近寄ってきた女子に手鏡を借り、確認。
確かに鼻血が出ている。
ワイシャツの襟から胸元が真っ赤になる程の出血でちょっと尋常ではない。
「ヤバいな。鼻折れたんじゃないか?」
「曲がってないから折れてはねえよ。とりあえずティッシュくれ」
とにかくティッシュを詰め、止血をしないとな。
「池田さんがあんなに怒るなんて」
近くにいた女子が言った。
この女子は高校から一緒になった奴だ、つまり中学までの池田を知らない。
「翠はけっこう他人の事で怒るよね」
「誰より仲間を大事にする奴だよ」
昔からアイツを知っている輩はウンウンと頷く。
俺は大事にされてねえよな。
「それより追いかけなくていいの?」
「何で俺が追いかける」
「泣かしたじゃん」
…俺が泣かしたの?
アイツの泣いた理由がサッパリ分からないんだが。
「とりあえず追いかけろよ」
「…マジで?俺の所為なの?」
「お前の所為じゃなかったら殴らねえだろ」
あぁ、なるほど。確かにそうだ。
じゃあ仕方ない。追いかけよう、ついでにクリーニングも要求しよう。

******

さて、とりあえず池田の行きそうな場所は…図書室、保健室、屋上といった所だ。
屋上から捜そう。


……
…いたよ。
一発で見つかった。
屋上へ続く階段の途中に座っている。
膝を抱えて俯いて座っている。
「…何してんだお前」
「うっさい」
「教室もどんぞ」
「勝手に帰れ」
「てか、何で屋上に上がってねえんだよ。中学の頃はしょっちゅう居ただろ?」
「…鍵掛かってた」
「あぁ、なるほど」
そりゃあ確かに屋上へ行けないわな。
まぁいいや。
コイツと話したかったし、ここなら他の奴らもいないから話してくれるだろ。
「隣座るぞ」
「………」
無視
「で?何があったんだよ。最近おかしいぞお前」
「………」
無視
「他の奴らも心配してる」
「………」
無視
「ちょっとくらい話してもいいだろ?」
「………」
無視
「聞いてんのかよ。おい、池田」
肩を揺すってやろうと手を伸ばしたが、弾かれた。
「触れんな」
「ひでぇ」
てか俯いたままなのに、何で手を伸ばしたのが分かんだよ。
横に目が付いてんのかコイツ。

……沈黙
「…ねぇ」
しばらくの沈黙の後、池田が口を開いた。
これは大いなる成果だ。
池田から話しかけて来ることなど何ヶ月振りだろう。半年ぐらいかな?
「…さっき他の奴らも心配してるって言ってたけど…『も』ってなに?」
「も?」
「『他の奴らも』って事は同じように心配してる人がいるんでしょ?誰の事よ」
「そりゃ、俺だよ」
「え?」
「保育所からの付き合いだから心配してねえ訳ないだろ。何か悩んでんなら一言相談しろよな、何年友達してると思ってんだよ」
「トモダチ……」
「そ、友達」
そして、俺が友達とはなんたるかを語ろうかと口を開きかけた所で顎に衝撃が走る。
「…おめぇ、顎はヤメろよ。意識が飛びかけただろう」
「………バカ」
なんだよ。
人の顎殴っといてバカはねえだろう。
むしろバカはどっちだよ。
「…私はあんたを友達だなんて思った事ない。……私は、私は…」

******

ようやく池田を教室に連れ戻した時には授業は終わっていた。
随分長いこと池田と話していたようだ。
おかげで色々わかったがな。

池田が高校になってキャラが変わった理由
図書委員に入った理由
ずっと小説を読んで、友達と距離を置いた理由
…俺にやたらと暴力を振るう理由
実は全部に共通点があるのだが、それはまた今度にしよう。

今日はここまで、また機会があれば続きを話すことにする。
そうだな、池田には内緒で。
スポンサーサイト
Secret

TrackBackURL
→http://436c75746368.blog73.fc2.com/tb.php/864-ab9fb719
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。