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『夢』
私には夢がある。
小説家になりたいのだ。

この世には、ゴマンと仕事があるだろう。
細分化すれば、それこそ星の数程にあるだろう。
そんな中、自分に合った天職は一つしかないと私は考えている。
どうせ働くなら自分の好きな事をしたい、だから小説家だ。

この事は誰にも内緒だ。
親には勿論、友人にも内緒である。
放課後の教室で勉強するフリをしながらコッソリ小説を書いては納得いかずに捨てていた。

*****

そして今日も誰もいない教室でひっそりと書いていたのだが…
「まだ勉強してんのか?早く帰れよ、先生が帰れねえだろ」
先生が来てしまった。
クラスの担任教師だ、担当は現国。
「あと少しだけ」
「別に構わないがな。ところで何の勉強してんだ?現国か?」
この辺は抜かりない。
誰か来た時の為に現国の問題集を広げている。
「お、現国じゃねえか。感心感心。ちょっと見せてみろ」
なんだって?
見せろ?それはマズい。問題集の下は原稿用紙だ。
「ま、まだ出来て、ないから。ダメです」
「途中経過でもいいからさ」
「ダメです!」
「お、おぉ。…そうかわかった。ダメなら仕方ないな」
怪しまれただろうか?
問題集如きにここまで頑なに拒否すると、流石に怪しいだろう。
頑なな拒否は逆に怪しいモノだからな。
「まあ、早く帰れよ。先生は職員室に戻るからな。……あ、そうそう。小説、出来たら見せろな」
…………
………バレてる!!?
うぇ!?な、なななな、なんで!?
意味が分からない、意味が分からない!
「せ、せせせせせせせせ」
「だ、大丈夫か?落ち着いて、な?」
「どどどどど」
「バレてないと思ってたのか?その問題集の下だろ?お前なら小説家になれるよ。だから小説読ませろよ」
どうしよう、どうしよう!
完全にバレてる!!
「なんでバレたかって顔だな」
そんな顔してたのだろうか…
「実はな、先生も学生の頃小説書いてたんだよ。思い出しても恥ずかしいクソみたいな話しばっかり書いてな。勿論誰にも見せずに棄てちまった。俺は先生になってからもその事をたまに後悔してんだよ。『どっかに投稿でもすりゃ良かったてな』もう遅いけどな。…だからお前みたいに俺みたいな事してる奴は感覚的に分かるんだよ。自分の為だけに小説書いてるような奴は特にな」
先生はそう言うと、回れ右で背を向けた。
「他人に見せるのは恥ずかしいよな?でもそれを褒められてみろ、最高だぞ。まぁ、強制はしないけどな、せっかく書いたんだ。日の目見せてやろうや。気が向いたら俺に見せろ、小説の書き方教えてやるよ。……先輩の言うことは聞いといて損はしねえよ」


*****

電気屋のショーウィンドウに並ぶ液晶テレビ。
その液晶テレビに一人の女性が映っている。
最近デビューした小説家で、云十年に一度の逸材だそうだ。
『では、××さんがデビューできたのは高校の時に先生が薦めてくれたからと』
『はい、あの時先生がいなかったら私は確実に小説家になってなかったです。先生には感謝しても足りないぐらいですよ』
『なるほど、ではその先生に何か一言ありますか?』
『……先生、先生がいたから今の私がいます。…あれ?どうしよう、言いたい事がいっぱいありすぎて……』
俺はそこまで見て電気屋の前を離れた。
三歩歩いた所で立ち止まり、ショーウィンドウに目をやる。
まだ小説家は映っていた。
緊張しているのが丸わかりだ。
自然と顔が緩む。
今度会ったら言ってやらねえとな。

先輩の言うことは聞いといて損はしねえだろ?
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