上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
俺は小学生のころ近所の神社で猫を拾った。

もちろん家には持って帰れないのでその神社で飼うことにした訳だ。

虎猫のメスで名前は「さくら」と名付けた。
さくらクレパスのダンボールに入っていたからだ。
何故かさくらは神社から出ようとせず、完全に神社に居着いていた。

******

月日は流れて、いつしか俺は小学生ではなく大学生になっていた。
今は実家を出て、同じ市内だが独り暮らしをしている。
独り暮らしだがアパートにさくらを連れて行く訳にもいかないので、今でも毎日会いに行っている。
さくらは俺が神社に行くと大抵、日向ぼっこをして寝ているか、床下から飛び出して来るかのどちらかだ。
俺はさくらが大好きだった。

*******

夏のある日
最近のさくらは暑さの所為か木陰で怠そうに寝ている事が多い。
夏バテだろうから、奮発して刺身詰め合わせを買った俺は神社へ向かった。
夏バテなんて食えば治るからな。


……
いつも日影で寝ているのに今日はいない。
まだ寝床で寝ているのか?
…床下にもいない。
「さくらーッ」
…出て来ない。
おかしい。いつもなら呼べば飛んで出て来るのに。
「ご主人様!」
真後ろから声がしたので振り向くと、和服を着た女の子がいた。
黒髪のおかっぱ頭に紅い着物。まるで漫画のキャラクターのようだ。
「会いとうございました、ご主人様!」
つーか誰だよ。
女の子は呆然とする俺に駆け寄り、上目遣いで(重要)まだ話す。
「…ご主人様はさくらに会いとうなかったですか?」
女の子は少し悲しみを含んで俺を見てくるが、これはもう反則だ。
ちょうかわいい
って、今「さくら」って。
「さくら?」
「はい、さくらです」
「……?」
あれ?俺の知っているさくらは猫じゃ…
「ご主人様とお話しがしてみたくて、神様にずっと、ずぅっとお願いしていたのです。すると、どうでしょう。体が怠くて寝ていたら、まさか人間になっているとは!」
「………」
さくら(?)は楽しそうに、それはそれは楽しそうに話す。
何かどうでもよくなるって事はないが、さくらが楽しそうだから、そんな気分になりそうだ。
「ご主人様ぁ、さくらはご主人様にとっても、とぉっても感謝しているのです。だからお礼を言わせて下さい。拾ってくれてありがとうご主人様。大好きです」
えへへ~、とはにかんだ表情をするが反則的に可愛い。

それはさておき仮にさくらだったとしよう。
俺はどうすりゃいいんだ。
いや、まださくらだと決まった訳じゃない。そんな非科学的な事あってたまるか。
そうだな…1つテストをしてみよう。
「さくら。昨日のメシは何を食べたか覚えているか?」
「昨日ですか?昨日は……猫元気ですね」
当たっている!
カリカリとか言うかと思ったら銘柄を当てやがった。
「体が怠くてあまり食べてないですけど、あれは猫元気で間違いないです」
「…じゃあ一昨日は」
「猫まっしぐらですね。因みにその前は銀のスプーンですよ」
か、完璧だ。
つか、3日前は俺が覚えてない。
…つまり、コイツは本物のさくらって事か。
マジカヨ。
「ご主人様、人間になったらしたかった事があるのです」
「何だよ」
「…お箸で食事をしてみたいのです」
あぁ、何だそんな事か。
ちょうど刺身詰め合わせと割り箸があるからそれでいいや。
「ほら」
封を開けた刺身詰め合わせを渡すと、さくらは目を輝かせ、とても嬉しそうにクルクルと回った。
嬉しさのあまり踊っているのだろう。
「ご主人様、好き!」
「ありがとう」
…さて、さくら(仮)が刺身に夢中な内に整理しよう。
まず、さくらは俺が小学生の頃に拾ったメス猫だ。
そして、さくら(猫)はこの場にいない。
だが、目の前にいる女の子は自らを「さくら」だと名乗り、俺がさくら(猫)に与えた3日間の飯を完璧に当てた。
…さっぱり整理出来ねえな。
何がどうなってんだよ。
「さくらはこんな美味しい物を食べて良いのでしょうか。…ハッ!!もしかしてご主人様の晩御飯でしたか?」
「それはさくら(猫)にやるヤツだ。俺んじゃない」
「あわわわわ。こ、これをさくら一人で頂くなど滅相もありません。どうぞご主人様も食べて下さい」
「いいから食ってろ」
「……ご主人様、もしかしてさくらを疑ってますか?もし、そうなら逆に訊きます。何故、さくらはさくらの事を知っているのでしょうか」
「それが分からねえんだよ」
「簡単ですよ。さくらはさくらで他の誰でも無いのです。名前も十年もさくらと呼ばれていれば覚えちゃいます。一応、脳みそはあるんですから」
確かにさくらを拾って十年になる。
…ホントにさくらなのか。
だが状況的にさくら以外有り得ない、というか何かどうでもよくなってきた。
「…分かった。お前の事を信じる」
まぁ、こんな小さな女の子が嘘なんか吐くハズがない。
「ありがとうございます!!……それで、その…折り入ってお願いが」
「何だ」
「あの…猫なら此処に住んでいても問題ないですよね?で、でも人間が、しかも女の子ご住んでいたら問題が…」
「なんだよ。要件を言えよ」
「す、すいません。その…ご主人様の家に置いてもらえませんか?」
…なるほど。
確かにさくらは小学生ぐらいの見た目だ。
女の子がこんな神社に住んでいたら警察と児童相談所の出番だ。
「…とりあえず」
とりあえず、どうする。
どうしようもねえよ。
いくら独り暮らしだからって言っても養える程稼いでいる訳じゃない、つか大学生だ。
バイトはしているが、所詮はバイトだ。大して稼いでいない。
「ご、ゴメンナサイ。さくら無茶を言いました。また神様に頼んで猫にしてもらいます」
表情が一気に曇る。
感情の起伏の激しい奴だな。
だが、こんな可愛い女の子を悲しませては男が廃る。根性で何とかなる問題ではないが何とかするしかないのだろう。
「…まあ待て。バイトのシフトを増やしてもらえば何とかなる。ダメでも当てはある」
「ホントですか!?じゃ、じゃあ」
今度は一気に笑顔になった。
「俺んちに置いてやる」
「ありがとうございます!!毎日ご主人様のお世話します!ご飯作ります、お部屋掃除します、お金のやりくりします!さくら頑張ります」
眉を上げ、ガッツポーズをし決意を見せる。
頼りがいがありそうだが、見た目が見た目だけに心配だよ。

はぁ…バイトのシフトは多分増やせるだろう。
それでも、さくらと俺がギリギリ食っていける程度だ。
つまり、掛け持ちしかないか。

こりゃあ大変だな。
ま、独り暮らしの寂しさを軽減出来るならそれ以上の事はないな。

後編へ続く
スポンサーサイト
Secret

TrackBackURL
→http://436c75746368.blog73.fc2.com/tb.php/830-dbbf3954
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。