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図書室
昼休みと放課後、ワタシは必ずここに来る。


図書委員だというのはあくまで表向きの理由だ。
本当の理由は他にある。

「委員長、この本貸して下さい」
詰め襟のホックを外し、少しラフな着こなしをしている男子生徒。
読者の方にはバラしておこう。話が進めやすい。
彼がワタシが図書室にいつも来る理由。彼が居るから図書室に行く。……所謂、ワタシの片恋相手だ。
彼がしょっちゅう図書室に来るから気になり始め、最近になって恋だと気付いた。因みにちょっとイケメンだ。

さて、男子生徒が手にした本は大人気映画の小説版、今日入荷したばっかりの本だ。
「…日付、書名、書籍番号、学年、クラス、出席番号、名前」
実はけっこうドキドキしている。
それはもちろん好きな人が目の前に居るからだ。
髪型とか変じゃないだろうか…変な寝癖は付いてなかったはずだ。
「えぇと、日付、書名……」
男子生徒はサラサラと貸出票へ書く、意外と綺麗な字だ。
「ところで、委員長は何読んでんの?」
男子生徒は書きながら訊いてきた。
心臓が飛び出るかと思う程ビックリした。
ワタシの心臓は早鐘のように脈打つ。

確かにワタシは膝の上に本を置いて読んでいる。
だがカウンターの死角になって見えない筈だ。
見て欲しくなかったし…変な趣味だと思われたくない。
「…秘密」
「面白い?」
「うん」
「例えば?」
「知ってどうするの」
「俺も読みたい」
「…何で?ワタシには面白くても、アナタには面白くないかも知れないじゃない」
「委員長の勧めてくれた本は面白いからさ。ホラ、この前の…終戦のローレライ。あれ、面白かったなぁ」
確かに以前、オススメの小説は無いかと訊かれて勧めた事がある。
「だから、その本も面白い」
何という理屈だ。
この男子生徒はワタシの好みと自分の好みは全く同じだと言いたいらしい。
でも…そう思っているなら少し嬉しい。

男子生徒は引き下がらず、是非とも読んでみたいと食い下がった。
「…この本、マンガだけど」
「大歓迎」
むしろ好印象になった。
ますますもって断りづらい。
「委員長頼むよぉ。読ませてぇ」
駄々をこね始めた。
それでも断る。
「じゃあ買ってくるからその本の名前教えて」
それが出来たら苦労しない。
この本がどんなジャンルか知ったらどん引きするに決まっている。
「…ダメ、教えない」
「ケチ~」
そこでワタシは一つの疑問にぶつかる。
「どうして、そんなに知りたいの?」
「え?いや、そんな隠すように読んでたら気になるからさ。もしかしたら、エロいのかなって」

「…最低」
ホントに引いた。
軽く幻滅した。
泣きそうだ。ワタシはこんな男に惚れてしまったのかと思うと泣きそうになる。
「冗談だよ、冗談。他の人には知られたくないような本なんだろ?」
むしろ、アナタにだけは知られたくないジャンルの本だ。
「でも俺は内緒にするからさ、な?」
「な、じゃない」
そもそもこの男子生徒は何ゆえワタシにこんな突っかかってくるんだ。
一向に構わないが、こう…何というか、その……勘違いしてしまいそうだ。
「何て言うか、委員長は独特のオーラみたいなんがあるからさ。ほっとけないっていうかさ」
「クラスで浮いてて友達もいないのに」
「そうなの?俺、委員長の友達じゃなかったんだ…何かショックだな」
悲しそうな表情をする。
「委員長に頑張って話しかけて、オススメの本借りて一人喜んでさ…」
「……」
どうしよう、嫌われたかな。
嫌だ。そんなの嫌だよ。
嫌われたくない。
「…こ、この本は」
気付いたら言っていた。
この本の名前、作者名を言おうとしていた。
「委員長!」
「は、はい!?」
ビックリした。
ワタシも思わず大きな声で返事をする。
「俺、委員長の事が好きだ!委員長の事をもっと知りたい!だから教えて欲しい」
………告られた。
好きな人から。
突然。
「ずっと前から好きだったんだよ。だから、図書室に通い詰めた。頑張って話しかけた。委員長の事が好きだから」
二つのセリフで三回も『好き』だと言われた。
ちなみに冷静に分析している風な事言っているが、テンパっている。
心臓はバクバクしているし、顔は真っ赤。でも嬉しくて泣きそうだ。
というか泣いている。
「委員長」
「はい」
「好きだ」
「…ワタシもです」
言ってしまった。
キャラがおかしな方向へ向かっているのは勘弁して欲しい、それだけテンパっているのだから。
「…でも」
これだけは言っておかないと。
「…この本は『オメガ7』っていう戦争マンガ」
男子生徒はキョトンとしている。
まぁ、そうだろう。仕方あるまい。
だが言わないと。
「他にも戦争マンガ、戦争映画、戦争小説…色々見たし読んだ」
時間は夕方。
西日が図書室を照らしていた。
オレンジ色の光が包んでいた。

一呼吸おいて、あるセリフを言う。
「軍事オタクな女の子でも好きですか?」
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