上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
暑い
7月も半ばだ。
なのに俺は走っていた。

*********

友人宅、行き着けのファミレス、学校……etc.etc.
見つからない。
痕跡1つ見つからない。
随分走った。
何十分走ったろう…流石に体力の限界だ。少し休憩しようと、ふと横を見ると…
「…神社」
そう、神社だ。所謂、姫子の実家だった。
証拠があったわけじゃない。だが、確信していた。
姫子はここにいる。

******

参道を歩き、境内へ。
誰か居る。
誰だ?姫子か?
「残念。姫子ではない…って体型全然違うし、髪型も違うだろ!?」
和服を着た男だった。
確かに姫子とは比べ物にならない程ガッシリした体型に短髪。むしろ俺のオヤジに近い。
「はじめましてだな。俺ぁ大蛇家現当主にしてオオヘビノカミ、大蛇勝利よ」
…大蛇勝利。
聞いた事あるな。
「前回、姫子が説明してただろ?姫子の父親だよ」
あぁ、そういやそんな事言ってたな。
「ところでどうした?この糞あっちいのに走ってよ。探しものか?生憎ウチは失せ物は探せねぇ。猫神の所へ」
「姫子はここだろ?」
俺のセリフによって勝利のセリフが遮られる。
てか、失せ物じゃねえよ。
姫子を捜してんだよ。
「ようやく出番なんだからもうちょい喋らせろよ。…はぁ、お前な姫子をどうしたいんだ?」
「………」
………どうしたいんだ
勝利の言葉が頭の中で反復した。
だが、答えは見つからない。
俺は姫子を見つけて、連れて帰って、どうするんだ?
わざわざ家族の元から引き離す必要なんてないだろう。
「お前みたいなフニャけた男に可愛い娘をやる訳にゃいかねぇ。後、教えといてやる。姫子はな―」
勝利が一歩近づいた。
殴られる!!
親父がぶん殴る時と同じ殺気を感じた俺は一歩下がろうとした。
しかし
「お父様、お止め下さい」
…姫子だ。
しかし、俺の知る姫子は髪を左右で結わいだ所謂、ツインテールで、服装は洋服ばっかりだが、今回は違う。
ストレートのロングヘアに和服。いつもとは真逆だ。
「お父様、篠田勇太と話があります。よろしいですか?」
「…チッ…しゃあねえな。いいか?姫子を泣かしてみろ、文字通り八つ裂きにしてやるからな」
そう言って勝利は神社の奥へ消えた。
必然的にここには俺と姫子しかいない訳だ。
蝉の鳴き声がわんわん響き、静寂なんて言葉とは程遠い筈だ。
だが、今は静寂が一番似合う。
真っ黒…漆黒の髪を靡かせ姫子がこちらへ歩いてきた。
どうやら、姫子は化粧をしているみたいだ。
頬が朱色だし、唇には口紅を塗っている。
「…勇太」
姫子が言った。
「急に飛び出してすまなかった。…その、……怒ってるか?」
いつもの姫子だった。
見た目は完全に違うヤツだが、中身は姫子だ。
「別に怒ってねえよ。それより教えろよ、何で出て行ったんだ」
キョトンとした表情をする姫子。
何でそんな不思議そうな顔すんだよ。
「まさかとは思うが、まだ分からないのか?」
「なにが?」
「…ホントに馬鹿だな。どんだけ鈍いんだ」
本気で呆れている表情だ。
てか鈍いってなんだよ。さっぱり分かんねえよ。
「いいか?私は勇太に嫌われたくないから、選択肢の答えを言わなかったんだ。…分かったか?」
「分からない」
「ほんっとに!貴様という奴は!私は、私は……勇太が好きなんだ!」
………
………え?
「勇太が好きだから、勇太に嫌われたくないから、選択肢の答えを言わなかった。勇太が選んでくれて嬉しかった。でも、言い出せなかった。いきなり結婚しろなどと言えば断られるし、次からどんな顔すればいいんだ。……だが、もういいんだ。私は大蛇家に戻る。勇太も全て忘れて前の生活に戻れ」
姫子が何か言っている。
俺の耳にはさっぱり入ってこない。
え?姫子が俺を好き?
…ちょ、ちょちょ、ちょっと待って。
「すまん、意味が分からん。もっかい最初か―」
セリフが途切れたのは口を塞がれたからだ、唇で。
これ以上言わすな。

重なっている時間はほんの一瞬。
だが、何分にも何十分にも思えた。
それは理解するのに十分過ぎる時間だった。
「…ぷはっ……分かったか?理解したか?」
頷くしか出来ない。
全くもってヘタレだ。
「……これでお終いだ。私は大蛇家に戻る。サヨウナラ勇太、楽しかったぞ。…香織を大事にしろ、いい奴だからな。……じゃあな、今までありがとう」
髪を靡かせ姫子は後ろを向いた。
一歩ずつ距離が遠のく。
止めねば。止めて姫子を連れ帰らねば。
くそっ、ビックリしてまだ声が出ない。自分のヘタレ具合が嫌になる。
「ちょ、…ちょっと待てよ」
ちょっと声が裏返った…
姫子は止まらない。
「俺はまだ責任を果たしてねえんだ!」
姫子が止まった。
しかし、しばらくしてまた歩き出した。
「責任をとらせろよ!そうじゃねえと、親父に殺されるし、俺もお前も嫌な思いをしたままだ」
まだ止まらない。
「家に帰るのはお前の本心なのか!?俺達ともう会えねえのか!?来週は海に行くんだろ!?」
止まった。
これは効いたか?
震えている。
小刻みな震えから肩を震わし…所謂、嗚咽。
「わ、わたし、私は…っ…えり…たくっな、い」
「何だって?」
「帰りたくない!勇太と居たい!香織や姫路や加西ともっと遊びたい!」
ついでに飛騨もいれてやれ。
「初めて出来た友達だ!離れたくない!」
姫子はそこまで叫ぶと声を上げて泣いた。
心の叫びというヤツだろう。
てか、帰りたくないなら帰らなきゃいいだろ。わざわざ行きたくない場所に行く必要ないだろ。
「帰りたくないならこっちに来い!」
気付いたらそう叫んでいた。
恥ずかしい奴が居たもんだ。…まぁ俺なんだが。
それはさておき、姫子は真っ赤に腫らした目で俺を見ていた。
高価そうな和服の袖で涙と鼻水を拭き、一呼吸置く。
「…勇太、勇太は…私を嫁に…いや、嫁じゃなくてもいい、一緒に居てくれるか?」
「当たり前―」
「そうは問屋が卸さねえ」
目の前に現れたのは大蛇勝利。
まるで湧いて出たかのように現れた。
手には日本刀が握られている。
「可愛い娘の唇奪いやがって、しかも今更嫁にするだぁ?ぶっ殺すぞテメェ」
「お父様、お止め下さい。勇太は悪くありま―」
「黙ってろ!!俺はな、姫子を、娘を完全に完璧に信頼してんだ。そんな娘が信頼する男だ、いい奴なんだろう。でもな、分かるだろ!?篠田勇太!見ず知らずの奴に娘を渡す気持ちがよぉ!だから、一発殴らせろ」
…なるほど。
随分、喧嘩腰だったのはそう言う事か。
『神』とはいえ父親は父親なんだ。
「…オッサンの気が済むまで殴れよ」
勝利はビックリした表情を浮かべた。
しかし、ニヤリと笑うと一歩下がり、刀を鞘に納めた。
「姫子が見込んだだけある。気に入った、次からは『お義父さん』と呼べ」
え?何?
「なりません」
耳に聞こえた、というよりも脳に直接聞こえてきた、と言った方が正しい。
「このような、どこぞの馬の骨とも分からぬ人間を姫子御嬢様と結婚させるなどと…なりませぬ!」
声の主は俺の真横にいた。
いつ現れたのかは分からない。ただ、俺の真横に居て、姫子を連れ戻そうとしていて、俺の右脇腹に日本刀を突き付けていた。
「金閣!止めろ!!勇太に手を出してみろ、死ぬより恐ろしい目にあわせるぞ!!」
「姫子御嬢様が居なくなるよりマシで御座います
「篠田勇太殿、申し訳御座いません。少しの辛抱です故」

―サクッ―

「勇太!」
刀は右脇腹から侵入し、肺を3センチ程、貫いた。

"刺された"

そう自覚したのは刺されてから数秒後、何が起きたのかさっぱり分からず、麻痺していたのか痛みもなかった。
だが、ズルッという音と共に刀が抜け、電流が走ったかのように痛みが体中を駆け抜けた。
傷口から血が溢れる。
肺を傷つけているから息が出来ない。
口からも血が溢れた。
もう、立っていられない…膝から砕けるようにうつ伏せに倒れた。
「勇太!勇太!」
姫子が駆け寄って来たのだろう、傷口を押さえ止血しようとしているのだろう。
直に触ったら痛ぇよ。
「死んじゃダメだ!気をしっかり持て」
息をしても大半が傷口から抜ける、血も止まらない。
……死ぬなこれは。
「勇太!お願いだ…!目を…目を開けてくれ!勇太!」


続く
スポンサーサイト
Secret

TrackBackURL
→http://436c75746368.blog73.fc2.com/tb.php/813-c73ae964
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。