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姫子は朝からいない。
買い物に行くと言っていた。

両親は友達と出掛けていない、姉貴はコミケの資金集めだとか言ってバイトに行った。
つまり、俺は1人でお留守番という訳だ。
自由だ!
いっつも口の悪いちびっ子の相手させられて、心の休まる時がなかったが、今日は自由だ!
もう一度言う!自由だ!!
こういう時、飛騨から連絡が来るんだが生憎、飛騨は用事だとか。
真の自由だ!

さて、真の自由を体感するために
「ゲームだな」
いっつも口の悪いちびっ子に邪魔されて、ノビノビとゲーム出来なかったからな。
蛇を狩ろうとしたら、マジ切れするし。
因みに西部劇のゲームだ。

******

ひとしきりゲームをし時計を見ると12時を少し回っている。
メシにしよう。カップめんでいいや。
ブルーレイでも見ながらメシにしよう。

……
テレビのスピーカーから軍曹の罵声が流れ、画面にはデブが映っている。
「フルメ●ルジャケット」とか言う映画だ。親父が借りてきてた。
カップめんを食べ終わった俺は、ぼんやり映画を見ていた。


……
…………
古い映画なので長い。
気が付いたら寝ていた。
映画も終わっている。
「やべ、何時だ?」
携帯を見ようと手を伸ばして時だ。

―ピンポーン―

呼び鈴だ。
「はいはい」
部屋を出て、四歩で玄関に着く。
ドアを開けると…誰もいない。
「あれ?」
誰も居ねえじゃねえか。今時ピンホンダッシュかよ。
7月は中頃だ。けっこう暑いのによくやるわ。
憎しみも暑さの前に沈黙したままで、沸き上がりすらしない。
「んだよ。近所のガキか?」
「誰が近所のガキです。殺しますよ?」
声がした。
目線を下げると―
「……姫子?」
によく似ている。だが小さい。
姫子をそのまま小さくした感じだ。
しかし、喪服みたいな真っ黒な服を着込んでいる。…暑くないの?
「私は大蛇公子(オロチキミコ)と申します、初めまして」
「あ、初めまして。篠田勇太です」
「いつもお姉様がお世話になっております」
やっぱり姫子の関係者か。
名字が同じだし、何より姫子にそっくりだ。
「篠田様、お姉様は御在宅ですか?」
「いや、今日は友達と買い物に行ったよ。服を買うとか言ってたが…何か用か?連絡するか?」
「お気遣い恐悦至極に御座います。しかし、急ぎではありませんので」
やけに古臭い口調だな。
見た目的に小学二年生とかだと思ったが違うのか?それに姫子を『お姉様』とか言ってるし、年下だろう。俺より年下なんだろう?
「しかし、今日も暑いな。外は暑いだろ、上がれよ」
「はい!失礼します」
待ってましたと言わんばかりの口調だ。
何が目的で来たのかも訊きたいしちょうどいいや。
暑いし。

******

リビングのエアコンを点け、キンキンに冷えた麦茶を差し出す。
プレステに入れっぱなしだったディスクを取り出し、電源を落としてリビングに戻った。
結露したグラスを物珍しそうに眺め、つついたりしている姫子…いや公子。
…似すぎなんだよ。
「んで?姫子に何か用か?」
「え?あ、はい。そうでしたね」
コホン
咳払いをすると公子は言った。
「お姉様と子作りはなさいましたか?」
ちょういいえがおでいった。
俺、耳鼻科行った方がいいな、ちょっと疲れてるのかも知れねえ。
「あれ?訊き方が悪かったですかね?…コホン、お姉様とセッ」
「言い直さなくていい!」
何言ってんのこの子!?
作者を色んな意味で殺す気かよ!
「メタな発言は止めた方がいいですよ」
「うっせえ」
この一家は読心術でも会得してんのか?
メタ発言多すぎるわ。
「で?何が目的で来たんだよ」
「お姉様から聞いてないですか?」
「何を?神の子ってやつか?」
「いえ、それではなく。まぁ半分当たりなんですが」
えらくもったいぶるな。
「このままではお姉様は大蛇家の跡取りとして帰って来なくてはならないのです」
…うん。うん?
いいんじゃないの?それはいけないのか?
「そんなお姉様の意志を無視した行為を許す訳にはいきません。キズモノにすれば跡取りでなくなりますから」
そんな懇願されてもなぁ…
さすがになぁ…なぁ?
「遅かれ早かれすることになるんですから」
「どういうことだ?」
「?…勇太様はお姉様を嫁にすると聴きましたが?」
公子はキョトンとした顔で言った。
すげぇ事をキョトンとした顔で言いやがった。
「公子さん?どういうことかな?」
「お姉様は勇太様が選ばれたと仰有られておりましたが」
意味わかんねー!
俺が姫子を嫁にするだとぅ!?一言も言ってねぇよ!!
「…勇太様、お姉様に何と言われました?あの…一番最初にです。選べとか言われませんでした?」
一番最初?
あれか?生きるか死ぬかみたいなあれか?
でもあれは
「姫子の世話をするってので決着したんじゃないのか?」
「……違います。勇太様がその場で殺され責任を果たすか、伴侶として―」
「ヤメロ!」
公子のセリフを断ち切る声。
俺の背中側、つまりリビングのドア側から聞こえた。
「お姉様」
「余計な事を吹き込むな」
声の主は公子…否、姫子。
まったく似すぎなんだよ。
「勇太、同じネタを被せる事を天丼と言うらしいな」
「さすがに二回目はちょっと…」
軽くゴミを見る目で俺を見る姉妹。
何?俺、そんな扱い?
ってそうじゃないな。公子の言っていた事だよ。
「姫子、教えろ。嫁だの子作りだのどういうことだ」
姫子のこちらを見る目がいつにも増して鋭い。
めっちゃ怖い。
だが退く訳にはいかない、はっきりさせるべきだ。
「妹の戯言だ、気にするな」
「戯言ではありません!お姉様、どうしてそんな嘘を言うのです」
姉妹の睨み合いは続く。
「じゃあ公子は俺に嘘を言って理由はなんだ?」
「嘘ではありません!全て事実です!勇太様がお姉様を嫁に迎えねば、大蛇家にお戻りになられ、見ず知らずの者と結婚することになるんです」
「……姫子、どういうことだよ」
姫子は黙ったままだ。
結婚?戻る?意味わかんねーよ!!
「どういうことだよ!!」
思わず怒鳴ってしまった。
公子が驚いたのがわかった。
「頼むよ姫子。教えてくれ、どういうことだ?」
「……公子が言った通りだ」
ポソッと言う。
「私は」

*********

「私は大蛇家当主、大蛇勝利の長女にして次期当主の大蛇姫子だ」
それは知っている。
いや、そんな肩書きは知らん。
「そして篠田勇太に腹を切らせる為ここにいる
「だが篠田勇太は私と契りを交わし生きる道を選んだ
「その契りというのが…
「所謂、婚姻だ
「それは篠田勇太に伝えられなかった。怖かったんだ。いきなりそんな事を言っては嫌われる。だから有耶無耶にした
「嫌われたら殺せばいいだと?…それもそうだ、だがな…」
淡々と話していた姫子が突然黙った。
「だがな…」
「どうした?」
「…気付かないのか?」
「何がだよ」
「…ばか!!だから勇太はアホなんだ!」
突然、姫子はボロボロと涙を流し叫んだ。
俺には何で泣くのかさっぱり分からない。
姫子の頬を伝う涙が重力に引かれ、フローリングの床に落ちた。
「勇太のアホ!朴念仁!」
そう叫ぶと姫子は玄関まで駆け抜け出て行った。
一瞬の出来事で制止出来なかったが、どうやら俺の所為らしい。
さっきから公子がすっげえジト目で見てくる。
「俺の所為?」
「…勇太様」
「何だよ」
「死んで詫びるかお姉様を追い掛けるかの二つに一つです」
死ぬのは嫌だな。
追い掛けるか…
エアコンの効いた部屋から出るのは億劫だったが、そんな事を言える状況ではなかった。
むしろ、もっと早く姫子に気付いてやるべきだった。

家を出ると姫子は見えない。
走って行ったようだ。
当てずっぽうで走る他ない、アイツが行きそうな場所を虱潰しに当たる他ない。

「チクショー、何だってんだよ」
暑さより姫子が言おうとした事のが気になった。
さっぱり分からないし姫子に直接訊くしかない。
…とりあえず行くか
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