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春の章 第三話「真実」


2010年 3月27日 土曜日
14時39分 町の外れにあるトンネル

どのくらい歩いただろう、町の外れにあるトンネルに案内されたがそのトンネルは崩落で閉鎖された筈だ。しかしトンネルは黒い口を開けており風が通っている。
「このトンネルは閉鎖されたんじゃ…」
トンネルの中に入って行く藍坂は振り向きこっちに来るように促した。
仕方ない…
トンネルの中は予想通り狭くて暗かった。崩落した筈のトンネルは長くまるで永遠に続くようだった。
「このトンネルを抜けると三途の川があります、脱衣婆(だつえば)に死装束をもらって橋を渡ります」
この先の説明をする藍坂は慣れているのだろう、真っ暗のトンネルでもサクサク進んで行く。
「三途の川には橋が在るの?川の中を歩くんじゃなくて?」
子供の頃に読んだ本には「三途の川は川の中を歩いて渡る」と書いてあったのを思い出し訊いてみる。
「三途の川は橋があります、歩いて渡るのはスゴい昔の話です。橋には橋姫という番人がいますから注意して下さい」
「橋姫って何?」
注意するも何も橋姫がわからない
「橋姫は嫉妬深い質(たち)の悪い奴です。冥界と現世の橋の番人をしています。但し嫉妬深いので橋を渡る時に神妙そうな顔をしていないと呪われますよ」
と何だかんだしてるうちにトンネルの端が見えてきた。

トンネルを抜けるとそこは…………どこだろう?
見た目は…僕達の町と大して変わらない。
服を回収してる老婆がいる、おそらくあれが脱衣婆だろう。
「あのお婆さんに服を渡せばいいのかな?」
藍坂は書類を見ながら何か呟いている。
「えーと…雛さん?」
やっと気付いたのかスゴく驚いた様子だ。
「え!?あ!はい!そうですあのお婆さんが脱衣婆です!」
何を呟いていたのか引っ掛かったがとりあえず脱衣婆に死装束をもらい脱衣室で服を着替える。なんと脱衣室には死装束の着方まで書いてあった。
服を着替え脱衣婆に服を渡す、「逝ってらっしゃい」脱衣婆は服を受けとるとそんな事を言った。返答に困ったが次の人にも同じ事を言っている、適当に割りきった僕は藍坂のもとに戻った。

「では橋を渡ります。先程も言いましたが、神妙な顔で渡って下さい」
神妙な顔とは何かを考えたがよく分からなかったので、下を向いて渡る事にした。
ごく普通の橋だ、何のへんてつもない。

「どんな死に方したんだい?苦しかったかい?」
橋姫は死人に訊いてまわる。半笑いなのが腹立つ、だが、大したことも起きず三途の川を渡りきった。
「では、改めて冥界にようこそ。」
あっさり冥界に入ってしまった。
「ここが冥界?あんまり変わんないなぁ」
「正確に言うとここは冥界ではなく冥府で、その中でも彼岸なんですがね」
字が違う以外に違いがわからないが…彼岸はなんとなく解るけど。
「冥府は裁判所や官舎があります、冥界は冥府や全てを引っくるめていうんですが普段は転生を待つ魂が生活する場って意味があります」
冥府は役所ってわけだ
「じゃあ閻魔大王の裁きを受けにいきますか」
藍坂は僕の発言に少し驚いた様子で
「え?…あ!はい、行きますか」
率先して裁きを受けるなんて…
そんな呟きが聞こえた

2010年 3月27日 土曜日
16時25分 裁判所

裁判所は意外に空いていた。
「今日は死者が少なかったみたいですね。酷い時は3日ぐらい待たされたりもするんですけどね」
裁判所の中を見た藍坂が話す。
どうやら直ぐに裁判を受けられそうだ。
まず藍坂が裁判所の受付に書類を渡す、5分程で呼ばれた。
第二八法廷と書かれた部屋に案内され、開廷を待った。
「もうしばらくすると閻魔様が参ります。閻魔様の前では嘘はつかないで下さいね」
案内した人が説明した。藍坂はというと僕の横で椅子に座っている。
すると扉が開き1人の男性が入ってきた。横にいた藍坂が気をつけをして礼をした。どうやら閻魔様のようだ、胸の鏡、手に持った棒?が無ければ普通の中年男性だ。
「では、俗名『クスノキ ユウイチ』の裁判を開廷します」
少し低めの声で閻魔様は言った。
「あ~…クスノキ君?1つ注意ね? もう聞いたかもしれないけど僕の前では嘘はつかないでね?嘘ついても直ぐバレるからね」
閻魔様はおっとりとした喋り方だ。
「はい、分かりました」
僕の返答を聞いて大きく頷いた閻魔様は書類を確認し始めた。
「クスノキ君、名前の確認をするからね?『楠 祐一』で間違いないね?」
閻魔様は書類を見せて確認を求めた。
字が違う…
「いえ、違います。僕は『楠木 祐一』です。『木』が1つ足りません」
法廷の空気が変わった、藍坂や閻魔様も案内した人も驚いている。
閻魔様が話す。
「え?ちょっと待って?正直に話してね?この名前は間違いなの?」
「はい、この名前ではないです」
大変だ…閻魔様は呟くと
「ちょっと確認してくるから待ってて」
そう言って出ていってしまった。
「どうして黙っていたんですか!?大問題ですよ!?」
藍坂に怒鳴られているのは僕のようだ、とはいえ何で怒鳴られているのか分からない。
「どうゆうことなの?名前の字が違うだけじゃ━━」
「そんな軽い問題ではありません!」
間発を入れずに怒鳴る
「いいですか?名前が違うってことは人を間違えた危険性が高いんです」
もっと解りやすく説明してほしい。
「つまりアナタは『楠木 祐一』?ですが『楠 祐一』という人もいます、書類の
ミスで寿命を迎えさせる人を間違えたんです」
藍坂はかなりの早口で話す。
「ホントは『楠 祐一』って人が死ぬ筈だったのか?」
藍坂は俯くと小さい声で
「その通りです」
それは大変だ。
「まだそうと決まった訳じゃないですよ」
そう言ったのは案内した人だ。
「名前の間違いはたまにありますけど人を間違えたのは滅多にないですよ」
それはそうですけど…
藍坂は呟く
閻魔様が戻ってきた、表情が少し暗い。
「楠木君?うん…さっきね確認してもらったらね人違いだった…」
人違いですまないだろ…
「ホントに申し訳ない…たまに間違いでやっちゃう事があるんだよ」
そんな言い訳はどうでもいい。
「それでね?申し訳ないんだけど楠木君ね?転生出来ないんだわ」
ちょっと待て!
「冥界の法律でね決まってるの、君は『楠 祐一』さんの寿命で死んで『楠 祐一』さんは君の寿命で死ぬんだよ」
かなりおっとりした口調で閻魔様は話す。
聞きたいのはそこじゃない!その前だ!
「転生出来ないってどうゆうことですか!?」
閻魔様は落ち着いた様子で喋る。
「きちんと寿命を迎えてない魂は転生させるわけにはいかないの、正常な輪廻転生では無くなるからね」
どうにもならないらしい…
「何か措置を与えるのはどうでしょうか」
藍坂だ。
「案内人にするのはどうでしょう、見たところ魂はかなり丈夫そうです」
話がえらい方向に転がっている、案内人になるの?僕が?

第三話 終
第四話「第四二管区」に続く
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