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ボルン内乱
ボルン共和国政府軍と反政府ゲリラの内戦
国連軍が派遣され治安は維持されたが政府軍、ゲリラ、民間人合わせて約五万人の死傷者を出し、そして国連軍570人の戦死者を出す事態となった
現地指揮官が責任を取り自殺するなどあらゆる点で混乱が生じ国連軍の汚点と言われている




とある国の白昼の繁華街、それは突然起きた。

国が独立の象徴として有名な建築家に依頼して建築したオリエント・ビル。
オフィスや洒落た喫茶店、政府機関などが入っている60階建ての超高層ビルだ。独立200年記念に建築され首都の東に建てられたからオリエント・ビルと名付けられた。

今日は国の独立記念日。
何百周年だか知らないが各地でイベントが行われ、祝日という事もあり繁華街は買い物客で賑わっていた。

******

ゆっくりとした速度で軍用トラックと装甲車が走る。
ゆっくりと、歩く速度と同じぐらいで進む。
『第205独立遊撃中隊』
そう書かれた旗を掲げた車列が買い物客で賑わう繁華街に現れた。
「何?」
「映画のロケじゃない?」
車列を見る人々は特に重大だと思っていないらしい。
しかし、車から漂うのただならぬ気配を感じてか警察官が1人走っていく。
車列を制止しようと前に出た。
笛を吹き鳴らし、小型拡声器で叫ぶ。
「止まれ!!何をしているか!」
…銃声
先頭を進んでいた装甲車の車載機銃から煙があがっている。
警察官は鮮血と共に仰向けに倒れた。
血溜まりに警官が沈んでいく…一拍おいて通行人の悲鳴が響く。
しかし、騒がしくなる繁華街を後目に車列は何事もなかったかのごとくビルの方角へと車輪を進めた。

********

警備部緊急通報センター
13時07分

"コール音"

"男性オペレーター"『はい、警察です。事件ですか?事故ですか?』
"通報者"「助けて!撃たれたんだ!!」
『落ち着いて。撃たれたんですか?』
「警官が迷彩服着た人に撃たれた!!早く来てくれよ!」
『救急車は呼びましたか?』
「別の人が呼んだよ!」
『場所を教えて下さい。近くのパトカーを向かわせます』
「オリエントの6ブロック、21番!」
『分かりました、パトカーが急行します。犯人はまだ近くに居ますか?居たら避難して下さい』
「犯人って1人や2人じゃないぞ。50人はいる!」
『……50人?』
「軍用トラックと装甲車に乗った奴らが撃ったんだよ」
『……そんな…』
「おい!!早くパトカー呼べよ!?切るぞ!?」
『は、はい。危険ですから避難して下さいよ?間違っても野次馬はいけませ―』

通話終了。同時に録音終了。

********

ビルの入口をトラックから下ろした土嚢で囲み、兵隊数名と車両を残し中隊はビルへと侵入した。
繁華街は野次馬で溢れている。
いずれ警察とマスコミで更に混乱するだろう。

『Welcome to ORIENT BUILDING』
ロビーにデカデカと掲げられた横断幕。
今の状況からすると随分と皮肉な文章だ。
思わず笑いかけた一団を出迎えたのは受付のスタッフではなく警備員だった。
守衛室で監視カメラをモニターしていたのだろう。真っ青な顔をした警備員は声を裏返しながら言った。
「何なんだ君達は!?」
警棒を抜き、一団の先頭に向けた。
「我々は陸軍第205独立遊撃中隊!!只今よりこのビルは我々の勢力下になった。女と40歳未満の者は今すぐ出ていけ!」
傍らにいる男が天井へ自動小銃を乱射し本気であることを示した。
蛍光灯が銃弾で弾け飛び、破片がロビーに降り注ぐ。
銃声に驚いた警備員は真っ青な顔色を更に青くさせ、砕け落ちるように尻餅をつき、声にならない何かをブツブツ言っている。
まぁ無理は無い、この警備員の脳の許容量など既にパンクしているだろう。
「展開!」
先頭の男が言うと同時に50名近い男たちが各フロアへ散った。
乾いた銃声がしばらくの間ビルに響き渡りあちこちで悲鳴があがった。

*********

オリエントビル5階 情報統括管理センター

「少佐、12階から上の各フロアにC4、廊下にブービートラップ、バリケードを構築し放棄しました」
目出し帽を被った兵士が革張りの椅子に座る男に言った。
「うん、上出来だ。特殊部隊が来るまでにロビーの要塞化を急げよ?くれぐれも急げよ?国の命運が掛かってるんだからな」
目出し帽の兵士は敬礼すると部屋を出る。
革張りの椅子に座り、真黒なベレー、上等なコートを羽織り見るからに将校…階級は少佐。
ラッキーストライクのタバコをくわえマッチで火を点ける。
「…少佐、兵士たちは少佐の大義名分を疑っておりません。しかし…本当に…」
少佐の隣で背の高い将校が言った。
「大尉。我々の目的は一寸も1ミクロンもぶれてはいないぞ。戦友の無念を晴らす…大尉始めるぞ。オペレーション『ヴァルハラ街道』状況開始」

******

陸軍 第201歩兵連隊司令部

軍靴を鳴らして軍服姿の男が歩いている。
誰がどうみても焦っている顔だ。
『第201歩兵連隊々長私室』と掛かった高級そうな扉の前で立ち止まった。
「連隊長!」
ノックも挨拶も疎かに扉を開けた。
椅子に座って読書中であった中年男は怪訝そうな顔で入ってきた男を睨む。
「挨拶…ノック…はぁ、ファルケン大尉、君はいつもだな…」
「申し訳ありません。って連隊長!違います。それどころでは!」
「少佐だろう?君とは士官学校からの同級生。但し彼の方が経験豊富で階級は少佐、君は大尉」
「その少佐が」
「オリエントビルを武力制圧した」
ファルケン大尉は驚いた表情をしたが怪訝な表情に切り替え連隊長に問う。
「……何故そこまでご存知なので?さっき国防部から流れてきた情報ですよ」
「ふむ…もう国防部が動いたか。特殊部隊も時間の問題だな」
「それは…一体…」
口角を少し上げ連隊長がニヤリと笑う。
「自分の質問に答えて頂きたい、何故その情報を知っている!グラヌス・エニグマ少将!!」
語気を強め言った。完全に上官に対する口調ではなく、1人の人間としてのセリフだった。
「君は無礼だな。知らなければ良かった事もあることを覚えておきたまえ。コート・ファルケン大尉」
「な、何を!?」
突如ファルケン大尉の自由が無くなった。
理由としては迷彩服を着た屈強な男に羽交い締めにされているからだ。
「なっ!離せ!少将!!一体何をするつもりだ!!答えろ!」
「君は優秀は兵隊だ。中隊の副隊長にしとくには惜しい男だったよ。…そうだな、教えてやろう。少佐のしようとしていることを……いや、やはり止めておこう」
大尉の拳銃を奪うと大尉のコメカミに銃口先を当てた。
「や、やめろ!チクショウ離せ!軍曹、命令だぞ!!」
「大尉は親友を止められなかった無念から自殺なされた…という事にしておこう」
「やめろ!やめろ!やめろ!チクショウ!チクショウ!」

乾いた銃声が響いた。

*******

入り口に頭から色々撒き散らした血まみれの死体が1つ。
顔は半分吹き飛び、個人の判別は不能である。肩の階級章は大尉。
カーペットは血でグジュグジュに汚れている。
「ふむ…軍曹、チェスは出来るか?」
「サーッ!嗜む程度に出来ます!サーッ!」
「よし、では時間まで相手してくれ。」
「サーッ!イエス!サーッ!」
ガラス製のチェス盤と駒を机の引き出しから取り出し手早く並べた。
軍曹も顔に付いた血をサッと拭くと連隊長の向かいに座った。

さて、部屋に入ってきた者は何と思うだろうか。
まぁ1つしか無いだろう。
考えるだけ無駄のようだ。

そこから銃声を聞きつけた兵隊が部屋に来るまで5分と掛からなかった。

********

オリエントビル ロビー

「少尉!準備完了です。土嚢、バリケード、爆破準備。全て完璧に終了であります」
「よし、特殊部隊が来るまで待機」
ビルの前は警察と野次馬、マスコミで大混乱になっている。
ロビーから見ていると、まるで喜劇でも見ているようで滑稽だ。
「少尉殿、撃っていいですか?」
色黒の若い兵士が言った。
軽機関銃を持ち、撃ちたくて仕方ないといった顔をしている。ウズウズしている。
「馬鹿たれ。撃つな」
「でも、もっと混乱しますよ」
「一般人に被害が出るだろう。だからダメだ」
兵士は残念そうに下がった。
「少尉、少佐が空砲を外に撃てと下令されました」
「……そうか、分かった。傾注!!各員、空砲を装填!空砲のみ発砲許可!方向は報道陣!」
「…装填!」
「……構え!」

「……ッテー!」

********

テレビの映像
国営テレビ、報道特別番組
オリエントビルから生中継

『武装占拠事件から3時間が経ちましたが犯人側から何の声明もありません』
画面はオリエントビルのロビーが映っている。
犯人と思われる人が、バリケードの後ろで銃の弾倉を交換している様子が見える。
『犯人かと思われます。迷彩服を着た10人程の人がバリケードの後ろに横一列で並んでいます。あっ!銃をこちらに向けました!!』
『下がりなさい!急いで下がって!!』
『盾!前出ろ!!狙撃班はどうした!早く撃てよ!!』
『下がれって言ってんだろ!!』
『警察が報道陣と一般人に対して下がるように叫んで…』

銃声
同時に悲鳴

『伏せろ!!伏せろ!!』
『発砲です!犯人側は我々に対して発砲してきました!』
『応射しろ!!応射だよ!早く!』
『下がりなさい!危険だから下がりなさい!』
『現場は大混乱です!安全な場所まで下がって中継いたしますのでスタジオにお返しします!!』

中継終わり

*******

オリエントビル武装占拠事件対策本部
会見場

ひっきりなしに電話が鳴り、怒号のように報道陣が話している。

「もうすぐ会見しますから!お静かに願います!!」
「本部長!急いで」
「あ、あぁ」
黒い警察の制服を着た初老の男性が促されるように真ん中の椅子に座った。
無数のフラッシュが瞬いた。
初老の男は目をしかめ、咳払いを一回。
「え~。対策本部長のシュレイです。まず、事件の経過ですが…本日10時30分ごろ陸軍ミュレー基地にて第201歩兵連隊第2大隊デルタ中隊が第205独立遊撃中隊を名乗り武装発起―」
「何故、武装発起したんですか!!」
「声明は発表されてないんですか!?」
「205独立遊撃中隊に意味は!?」
シュレイは顔をしかめマスコミを見た。
「犯行声明はまだ発表されておりません」
マスコミを見渡し質問がないのを確認すると、原稿へ目を戻した。
さっさと会見を済ませたいのだろう。
読み上げるスピードがさっきより早い。
「え~、その後13時5分にオリエントビル近くで警官1名を射殺。そして13時15分オリエントビル占拠、現在に至ります」
「ミュレー基地にて将校が自殺されてますが、それは関係ありますか?」
「現在調査中です」
「先程、犯人側から発砲されたそうですが被害はあったんですか?」
「その件ですが、犯人は空砲を使用した模様です。よって被害はありません」
「ミュレータイムズのクハラです。本部長、突入はいつですか?」
「……未定です。現場に戻りますので会見終了します」
「本部長!未定ってことは突入するんですか!?本部長!」
一斉に本社に電話を掛けるマスコミを残し、シュレイは会見場を後にした。
前代未聞の大事件に終止符打つ為だ。

******

この事件があんな幕切れをするなどと誰が予想出来たろう。
誰も、この会見場にいる警官やマスコミ、軍関係者。そしてオリエントビルを占拠した反乱軍全ての人間に予想は不可能なエンディングだった。
否、ただ1人。たった1人だけが分かっていた。

「安全レバーの外れた手榴弾は爆発するしかないのだよ。我々はその手榴弾だ」

後半へ続く
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