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え~と。もういいんですか?はい。
コホン
小野香織と申します。
県立城山高等学校二年二組の学級委員長をしています。
お父さんは警察官、お母さんは海上保安官で神戸に単身赴任しています。寂しくはありません……今は。


チャイム
教室備え付けのスピーカーが空気を震わせ時間であることを知らせる。
同時に教室中…いや、学校中から溜め息が溢れた。
「はぁい。これにて期末テスト終了で~す。みんなお疲れ様」
「バンザーイ!バンザーイ!」
飛騨君と三田君が万歳している。
「勇太、終わった…のか?」
「あぁ、色々とな」
大蛇さんと篠田君は放心状態と言った感じかな。
実際、今回の期末テストは相当範囲が広かった。特に日本史の範囲が広く平安時代から江戸時代までの総復習で、殆どの記憶容量を日本史に費やしたほどだ(と姫路さんが言っていた)
「勉強とやらは…ダメだ」
パタと大蛇さんが机に突っ伏す。
ひと月前に突然、編入してきた篠田君の親戚。
両親の仕事で京都や島根を転々としていたけど、不幸があって親戚を頼り、この町に来たそうだ。
「小野は余裕だったんだろ?」
さっきまで机に突っ伏して耳しか見えていなかったのに、いつの間にか篠田君がこっちを向いている。
「そ、そそ…ソンナコトナイヨ~」
…失敗した。
焦ってボーカロイドっぽくなってしまった。
穴があったら入りたい…いや、自動小銃があったら頭をぶち抜きたい。
「こら、篠田!!香織に何してんのさ!!」
「何もしてねえよ。テストの話してただけだ」
……クラスはいつもこんな感じです。
でも、私はこの感じが大好きでとても心地よいのです。
家より家らしい感じですかね?

********

「海に行こう」
ファミリーレストラン「ハーキュリーズ」のボックス席を2つも使い、6人の高校生が話している。
「夏休みだしさ、来年はみんな忙しいでしょ?だったら、この夏休みは遊び倒そう」
こんな事を言い出すの大抵、飛騨君。そして今回も飛騨君。
いつもは軽く流されてお終いなのだが、今回はちょっと違う。
「海!?行きたい!なあ勇太、行こう」
大蛇さんだ。
彼女の家とんでもなく厳しい家だそうで、海どころか友達と遊びにすら行った事がない。
家庭の事情らしいけど、奇妙な生い立ちが彼女のどこか神秘的というか不思議な印象に拍車を掛けているんだろう。
「飛騨にしては珍しく、いい提案だな。で?いつ行くんだ?」
加西君は乗り気、同様に姫路さんも乗り気だ。
私は…まぁ、どっちでもいいや。…どっちでも。
みんなが決めた方へ行く。それでいい。
私なんかが意見を述べるなんて恐れ多い。
「…い…野…小野!」
覗き込むように私の顔を見る篠田君が言った。って近い近い!
「大丈夫か?何かボーっとしてたぞ」
「だ、大丈夫大丈夫。ちょっと考え事してただけだから」
「で海に行くことになったんだけど、いつがいい?出来たら早い方がいいんだけどさ」
飛騨君が言う。
姫路「来週末ならバイト休みだよ」
加西「俺は週末ならOK。平日は土方のバイトすっから無理な」
篠田「俺と姫子はいつでも」
大蛇「うむ、いつでも良い!」
「私は……」
どうしよう、来週末は夏休みの宿題を終わらせる予定だったんだけど…
でも、宿題なんて…でも、先延ばしにするのは良くないし…
「何か予定でもあるのか?だったらそっちを優先すりゃいい。海は逃げねえからな」篠田君が言った。

「あっ…ううん、来週末なら大丈夫」
「じゃあ来週末で決定!集合は駅前に午前6時30分」
「じゃあ帰るか。姫子、帰んぞ」
「え?まだ『ぱふぇ』を食べてないぞ」
「数学教えろって言った奴は誰だよ。帰んぞ」
パフェが食べられなかったのがよほど不服なのか、目をつり上げ頬を膨らませる。まるで、アニメかマンガのキャラクターだ。活字だけで伝わりにくいかも知れないが、とても可愛い。
「…じゃあ私も帰るね」
そう言って自分の勘定を置いて、席を立った。
家に帰って勉強しないと。
来年は受験である。

*******

レストランを出ると、知った顔が2つあった。
「見ろ勇太。香織が出てくるって言っただろ?」
「いいから帰ろう。暑くてやってらんねえよ」
先に帰った篠田君と大蛇さんだった。
何故、待っていたんだろう?
「香織は途中まで一緒だからな。一緒に帰ろ?」
…理由なんて特になかった。
友達と一緒に帰るのに理由なんていらないんだ。
だって友達だから。
「うん、帰ろう」
一緒に

******

太陽は少し傾いた午後2時。
一番暑い時間帯を3人は歩く。
「勇太、どうしても数学はしなくちゃいけないか?」
「どうしてもだ。公式を暗記すれば簡単だ、お前なら出来るから安心しろ」
…………
「あ、当たり前だ!私にかかれば数学なぞポポイのポイだ」
得意気に言う。
ナニコレ…ナニコノ、カップル
私という存在がとても場違いな気がして仕方ない。
さっさと退散したい気分に駆られた。
「ところで香織、海に行くには何がいるんだ?行った事ないから分からないんだ」
「え?あ、海?……水着?」
少しテンパりかけたけど大丈夫。
回答としては無難。
「ふむ…持ってないな。どこで手に入る?」
「も、もちろん服屋とか」
「じゃあ明日行こう」
え?
「早くから手に入れておいて問題ないだろう。それに……」
言葉に詰まる大蛇さん。
「勇太、耳を塞げ。命令だ!」
篠田君はものすごく面倒そうに耳を塞いだ。
それはそれは面倒そうに。
石油ストーブの灯油が無くなったので、給油しといて、と頼まれた時ぐらい面倒そうに。
だが、そんなの見たこと無いのでもちろんイメージだ。
「…む、胸の事とかあるだろう?」
あぁ、確かに大蛇さんは普通より胸のサイズは小さい。
でも、気にする事無いのに。
「香織…失礼な事を思ってないか?」
「え!?お、おお、思ってないよ!」
そういえば篠田君が大蛇さんはモノローグを読む癖があるとか言っていたけど、こういう事か。
ようやく合点がいった。
「後、大蛇さんじゃなくて姫子でいい」
やっぱり読んでる!!
「とにかく、明日な。集合はどうする?」
「迎えに行くよ。9時ぐらいにしようか」
「うむ、了承した」
楽しみなのがよく分かる。
それぐらい、いい笑顔で返事してくれた。
私も明日が楽しみだ。
「…なぁ、いつまで耳塞いでりゃいいんだよ」
……あ、忘れてた。
姫子さんと2人、そんな顔で見合わせた。アブラゼミの鳴き声が住宅街に溢れていた。
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