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詳しい事は前回を読め!
大蛇姫子

青色の大きなリュックサック、の傍らで得意気な表情をする姫子。
…で?何だって?
「しばらく世話になるぞ」
「何でだよ」
「勇太が選んだんだぞ。『私の世話をする』それが選択肢だ」
少し意外そうな顔で姫子は言った。
完全に『』の部分が抜け落ちている。絶対に言ってない。これは―
「詐欺じゃねえか」
「…じゃあ死ぬか?」
…ひでー。
選択の余地無いし。
「まぁいいじゃないか。こんな可愛い私と一緒に暮らせるんだ。嬉しいだろ?フフン、感謝しろ」
自分で言いやがった。
その台詞は自分で言うような台詞じゃないし得意気に言うなよ。
まぁ、可愛いか否かは置いといて。
「置いとくなよ」
「モノローグを読むのは止めてくれ」
話が前に進まないからな。
とりあえず戻して。
「それはお前の意志か?」
「お前じゃない姫子だ。お父様に付けてもらった大蛇姫子という名がある。訂正しろ」
「…姫子の意志か?」
「まぁ、ある種決まり事の様なものだ。相手を殺すか世話をさせるかどちらかってな。そういう掟だ」
なるほど。
その掟に従うのが姫子の意志って訳だ。
ややこしいなぁ。
「ところで、勇太」
「何だよ」
「部屋の外に1人いるぞ。聞き耳を立てているのか?」
人差し指で部屋の扉を指差した。
この部屋は防音が皆無に等しく、ある程度近付けば部屋にいるかのように聞こえる。
但し、そういう事する奴は1人だ。
対処方法は簡単。
「姫子…すまんが、卑猥な事を言ってくれ。そうしたら奴はいなくなる」
まぁ、いなくなるというかアレなんだが。
しばらくすれば分かるさ。
「な、ななな何をバカな事を言うんだ!バ、バカじゃないのか!?バカーッ!」
見事に顔を…いや、耳まで真っ赤にしながら姫子が言った。
まぁ、そうだろうな。これが普通の反応だ。
「だったらお姉ちゃんにお任せ!!下ネタからエロゲーの台詞まで任せな!!」
これは異常な(姉の)場合
部屋に入って来て開口一番の台詞がそれかよ。年頃なんだから自重してくれ…
ホント心配だよ。
すごくいい笑顔で言う台詞じゃねえよ。
「ほら、姉ちゃんに言わせたいんだろ?卑猥な台詞をよ。何て言って欲しい?」
「お前聞き耳立ててただろ。そんな事してる暇あるならレポート書けよ。さっさと部屋帰れ」
俺は扉を指差し言った。
姉は所謂キモオタ…は言ったか。
久しく姉の部屋に入って無いが中学の頃に姉に用事があって部屋に行った。
汚い部屋の床に散らばっていたのは……エロ本だった。しかも薔薇色だった。
姉はニヤリと笑う。
不敵な笑みだ。
暗黒なオーラが姉の後ろに見える…気がする。
「そんな事言っていいのかな?お姉ちゃんは勇太が持ってるエロ本を把握しているんだよ?」
「今すぐ出ていけ!」
「まさか、あんなマニアックなジャンルとは…ダークドン引きだよ。麻縄が趣味とはね」
「俺の部屋を漁ってるお前のがダークドン引きだ!」
気持ち悪いわ!弟の部屋漁ってエロ本探すってどんだけ気持ち悪いんだよ!
「ふぅん?そんな口きく悪い子にはお仕置きだべぇ。母さんと父さんにバラしちゃ―」
「そ、それだけは…」
「じゃあ、ジャンプとエースと大王とゲーマガ買ってきて。姫子ちゃんは私が見ててあげるから」
けっこうな出費だなぁ!おい!
だがそれで口封じになるなら安いもんだ。
買うしかないな。
「金は俺が出すんだよな?」
「勿論」
仕方ないよな。
バラされたら一巻の終わり。オヤジにぶっ殺されるにちがいない。
何かよく分からん内に姫子は我が家に居候する事になってるし……あぁ、そうか。どの道、ぶっ殺されるな。

*****

本屋からの帰り道。
空には闇が少しずつ広がり夜の訪れを示している。
梅雨独特の湿り気を帯びた風が体を撫で若干不快だ。いや、かなり不快だ。
もしかしたら雨が降るのかもしれない。
雑誌が濡れたら姉に殴られるだろう。
早く帰ろう。


……今気付いたけど。
ここは姫子が言っていた神社か。いつもは気になんて止めなかったから素通りしていたけどちょっと寄ってみるか?
…雨が降ったら迎えに来てもらおう。
買い物袋をガサガサ鳴らし神社へ足を向けた。

*****

最近、神社に来てなかったけど前とほぼ変わっていない。
境内の雑草も無いに等しく、本殿もスゴく綺麗だ。ゴミと呼ばれるモノが全く落ちていない。
いや、境内の裏から箒とチリトリ持ったオッサンが出てきた。
近所の人が掃除してるのかな?だったら綺麗でも不思議じゃないな。
「こんちは」
「こんにちわ。…ん?もしかして、何年か前に蛇投げた兄ちゃんか?」
驚嘆した。
声が出ない。今、俺の顔は世界で一番「驚く」という動詞が似合う表情だろう。
「アカンで?此処は蛇神信仰の神社やから、蛇に祟られるで」
もう祟られてる…とは言えないから「あ、はい。すんません」と、軽く謝った。
……
……蛇神信仰?
今、このオッサン、蛇神信仰って言ったか?
「あ、あの蛇神信仰って何ですか?」
「蛇を神様として崇めることや。この神社に祀られとる神様が蛇なんや。せやからこの神社も『大蛇神社』言うやろ?」
オオヘビジンジャ…
あぁ、なるほど。『大蛇姫子』ね。確かに大蛇だわ。
「なんや、兄ちゃんオオヘビ様にに興味あんのか?せやったら―」
「すいません、失礼します」
話が長く…というか怪しげな方向へ行きそうだったから。
サッと踵を返し、脱兎の如く逃げる。
何て言うかそういうのはまっぴらゴメンだ。(新興宗教ではないだろうが宗教はちょっとな)
面倒なこの上ないだろう。
でも、収穫はあった。
蛇神信仰、オオヘビ様、蛇の祟り
これは姫子に訊いてみないと。
何と返事するだろう?
自分を神とか抜かす少女のオロオロする姿が脳裏に浮かび、自然と顔が緩む。
ヤバい、これは相当気持ち悪い。
手のひらで頬を叩き、引き締め直す。
よし、これで大丈夫だな。

いつしか、本格的に雨が降りそうな、どんよりした雲になっていた。
急いで帰ろう。そして姫子に言ってやろう。
「オオヘビ様」ってな
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