上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
「田中陸士長、倉田3尉の出頭命令に基づき出頭しました」

******

透明な羽根を生やした使用人に案内され倉田に言われた場所に向かった。
紅い廊下を歩き、紅いシャンデリアの下がる部屋に通された。
「士長、こっちだ」
「ハッ!」
倉田の隣へ向かう。
「…田中陸士長。さっきスキマに会ったわね?」
テーブルで紅茶を飲んでいる少女。
少女はレミリア・スカーレット
田中たちが帰るまでの間門番として雇ってくれている。
「スキマ?傘を持った女性ですか?」
「そうよ。あなた達を神隠した張本人で呪術を施したのもアイツ」
「戦争がどうとか…」
「そう、戦争よ。アイツは幻想郷の完全統一を目論んでる。武力を使った統一、里から妖怪の山、冥界、彼岸まで全てをスキマが統一管理するのが目的」
「その幻想郷の戦争に自分たちが関わっているのですか?」
「そうよ」
違う方向から声がした。
田中はすぐに声のした方向を見る、いたのは見るからにひ弱そうな少女。珍しいデザインのワンピース、ストリートファイターのチュンリーのように髪を纏め帽子を被っている。
「スキマはあなた達を侵略者に仕立て、団結して侵略者を叩き潰そうって民衆を先導して統一っていう算段の筈」
少女は歩きながら言った。
レミリアの隣の椅子に座り、ワインを口に運ぶ。
「あなた達は侵略者、あなた達を雇っている私たちも敵って事ね」
レミリアが言った。
楽しそうに、とても楽しそうに言った。
「レミリアお嬢様、申し上げます。就寝時間で御座います」
「もうそんな時間?仕方ないわね、また夜に会いましょう」
咲夜に付き添われレミリアは部屋を出た。
吸血鬼だからか昼間は眠るようだ。
「3尉…どうしましょう?このままじゃ自分たちが戦争のど真ん中に」
「うん、それでだ。この戦争負けたら死ぬ。勝っても侵略者のままだろう、だからある程度戦って引き分けりゃいい。共存するんだ」
「共存?帰るんじゃないんですか?」
「それがな…」
声を詰まらせる倉田。
倉田が言葉を詰まらせるなど珍しいと田中は思った。
「彼は人間じゃない」
少女が言った。
「人間じゃない?」
「あぁ、自己紹介がまだだったわね。私はパチュリー・ノーレッジ。魔女よ」
「自分は田中龍之介陸士長…ってそうじゃなくて」
「彼はさっきレミィに殺されて吸血鬼になった」
田中の思考は停止した。
「正確には咲夜のナイフに首を切られて失血死しかけたところをレミィが血を呑んで吸血鬼になった。そうね?倉田3尉」
「はい、その通りですパチュリー様」
「ちょ、ちょっと待って下さい!全く意味が分かりません」
「その内分かるよ。今はそうとしか言えない。詮索するな他言は無用だ。いいな?田中陸士長、他言は無用だ。もちろんリグルちゃんにも美鈴さんにもだ」
腰に挿していた89式多用途銃剣を抜き、田中の喉元に突き付けた。
突如、倉田の目が紅く染まり田中は倉田が人間ではないことを悟った。
「了解…」
「よし。…そうだ、不寝番明けだったな。Ⅰ○○○時まで休め。その後は十六夜さんに訊け。すまんが俺も寝る」
「ハッ!Ⅰ○○○時まで待機します」
田中は敬礼すると踵を返し部屋を出た。
色んな考えが頭を巡り、倒れそうだった。

***********

何とか門までたどり着き、倒れるように座り込んだ。
軽装甲機動車のタイヤに寄りかかり現状を整理しようと考えを巡らせる。
「(えぇと…3尉が吸血鬼で?死んだ?俺たちは幻想郷に迷い込んだんじゃなくて侵略者?)」
考えを整理できない。
ヘルメットを脱ぐと傍らに置いた。
太陽がまだ上がったばかりだからか気温もそこまで高くなく過ごしやすい。
美鈴をみるとやはり立ったまま器用に寝ている。
「(門番じゃないのかよ)」
「何だ?見ない奴がいるんだぜ」
聞いた事のない声がした。
首を巡らし、声の主を探した。
…いない
「こっちだぜ」
視線を上に向けると逆光で殆ど見えないが誰かいるのは分かった。
浮いている。
声の主は箒と思われる物に跨り空中に浮いていた。
「誰か!!下りてこい!」
9mm機関けん銃を構えた。
しかし、声の主は驚いた様子を見せず素直にゆったりと下りた。
声の主は少女だった。
黒い帽子に黒いスカート…まるで魔法使いのようだ。
なるほど、魔法使いなら箒で浮いているのも納得いく。なにせ此処は幻想郷だ、外の世界の常識は通用しない。
「ここは入れない。すぐに帰りなさい」
「新しい門番か?私を止めたいならスペルが必要だぜ」
魔法使いは右手の人差し指を円を描くように回した。
すると星が現れ、1つは正面から1つは右、1つは左、さらに壁のように大量の星が出現する。
「な、なんだ!?」
弾幕…田中の頭に1つの単語が浮かんだ。
チルノとリグルがしていたやや物騒な遊び、弾幕ごっこ。
当たっても死なない弾幕。
「(威嚇発砲しかない…!)」
9mm機関けん銃のコッキングレバーを引き、銃口を真上に向け引き金を引いた。

乾いた音が連続した。
静寂をぶち破る破壊的な音が湖畔に響いた。

***********

銃声は館の中でもよく聞こえた。
訓練で幾度も聞いた、9mm機関けん銃の銃声だ。
「あの馬鹿野郎!!」
部屋を飛び出し門へ向かう。
右手には89式小銃を握りしめ、ヘルメットを被り顎紐をしっかり締める。
クソが付く程真面目な田中が発砲したのはかなりの事だ。
できる限り早く行ってやらないと。
自衛官…吸血鬼倉田はできる限り肌の露出を抑え、急いで田中のいる正門へ走った。

***************

迫っていた星の弾幕は銃声と同時に霧散していった。
魔法使いは目を見開き驚いた表情をしている。美鈴も銃声で目を覚まし、何事かと辺りを見回している。
「しまった…撃っちゃった…3尉に殺される…」
「な、なぁ…それなんだ?今の音はそいつが出したのか?もし良かったらこの……斧と交換してくれ」
魔法使いはどこからか鉄パイプのような物を取り出した。
それは"斧"と言うより…
「道路標識?」
『市内全域』と『40』と書かれた看板が付いている。誰が見ても道路標識だ。
「頼むぜ。そいつを見せてくれ」
「…え?ダメだ。これは一般人が触っていい代物じゃない」
頼むぜ。この通りだぜ。
魔法使いは田中を拝みだした。
とは言っても下手に扱えば死ぬかもしれない代物だ。絶対にそんな事出来ない。
「田中ァ!!!」
館の方向から走ってくる影が1つ。
迷彩服に身を包んだ人間…倉田だ。
田中の真横で急停止した。全力疾走にも関わらず全く疲れた様子を見せない。
「お前何で撃った!!」
田中の胸ぐらを掴む。
「す、すいません。この子が侵入しようとしたので…つい」
「このボケッ!!ついで撃つ奴がいるか!」
「しかし…攻撃されそうに……」
「ボケ!」
思いっきり田中を殴り倒した。
2メートル程田中は吹っ飛んだ。
「…それで君は?こんな所で何してる。危ないから帰りなさい」
魔法使いを睨みつけながら倉田が言った。
美鈴は倉田と魔法使いを交互に見た後、館へと走って行った。誰かを呼びに行ったのか全力疾走で館へ走った。
「私はただの魔法使い、霧雨魔里沙だぜ。ここの図書館に用が―」
「帰りなさい」
一蹴
霧雨魔里沙のセリフに被せるように言った。
霧雨魔里沙の眉がピクッと動いた。
「何人たりとも通すなと言われている。故に通せない、騒ぎになる前に帰りなさい」
霧雨魔里沙は俯いてしまった。倉田の位置からは見えないだろう。しかし吹っ飛ばされて倒れている田中からは霧雨魔里沙が妖しくニヤリと口角を上げているのが見える。
「だったら力ずくだぁ!」
斧(道路標識)を振りかざす。
しかし、倉田は全く動じない。
40キロ制限の標識が倉田の頭目掛けて振り下ろされる。
しかし、中る寸前で標識は止まった。
「な、何で避けない」
「俺たちは自衛官だ。君の攻撃が中った時点で君を攻撃しなければならない。……国防をなめんなよ?」
睨み合う2人。
倉田の方が優勢に見える。しかし魔里沙は楽しそうだ。
「私が撃つとそっちも撃つんだな?だったら闘ろう」
光の粒子が魔里沙の空にかざした手のひらに集まる。
しかし田中は動かない。
魔里沙が手のひらを振り下ろしたと同時に星が倉田に飛翔した。
小さい物は手のひらサイズ、大きい物は顔程もある。被弾すればきっと痛い。
「3尉!」
叫ぶと同時に倉田の周りに土煙が上がった。
もうもうと上がる土煙。
「…何だ?拍子抜けだぜ。じゃあ通らせてもら―」
門をくぐろうとした魔里沙の体が宙を舞う。
背中から叩きつけられ苦悶の表情を浮かべた。
「な、何だ?」
「そう簡単に通せないな。何せ門番だ、門を守らないとオマンマ食い下げだ」
土煙が晴れ、ようやく事態が明るみになった。
魔里沙の弾幕を回避した倉田は土煙に紛れ接近、体術で倒したという訳だ。
「うぅ…ちくしょう」
「美鈴さんが十六夜さんを呼びに行ったらしい。早く帰りなさい」
背中に付いた埃を払い魔里沙は立ち上がった。
「美鈴も咲夜も私は倒した事あるんだから―」
「倉田3尉、田中陸士長。何をしているのですか?」
倉田の真後ろに突然、咲夜が現れた。
門を通った形跡は無い。
一瞬にして館から門に現れたのだ。まるでテレポートしたかのように。
「侵入者を撃退しておりました」
「そう……魔里沙、パチュリー様が本を返すなら図書館に入ってもいいと仰られてるわ」
「そりゃ無理だぜ。あれは私が死ぬまで借りる約束だからな」
「(泥棒だな)」
田中はそう思ったが声にしなかった。
「だから今回も借りに来たんだぜ!!」
スプレー缶のような物を咲夜に向けて投げた。
咲夜の足元にワンバウンドで転がる。
田中の足元には金属のレバーが転がった。田中の脳は訓練で何度も見た手榴弾の安全レバーだと認識した。
「しゅ、手榴弾!」
田中が叫ぶと同時に倉田がそれを蹴り飛ばそうと一歩踏み出す。
ほとんど蹴ると同時だ。
爆竹のような破裂音と共に周りを煙が包んだ。
「こ、これは!?」
「これはすごいんだぜ。この隙に通させてもらうぜ」
「待て!止まれ!!3尉、発砲許可願います!!」
「バカ!撃つな!!追いかけろ!」
田中が追いかけるが相手は箒で高速で紅魔館へ飛ぶ。
館の扉まで後半歩ほどのところで扉が開いた。
顔を出したのは美鈴だ。
迫りくる魔里沙に驚いた表情を見せた直後はねられた。同時に魔里沙も吹っ飛び箒から転がり落ち、地面に叩きつけられる。
「動くな!!動くと撃つぞ!」
ようやく追い付いた田中が9mm機関けん銃を突き付ける。
先ほどの魔里沙の言動からして銃を見たこと無いのだろう。
田中は弾倉を抜き、チェンバーからも弾を取り出しポケットに仕舞う。
「一体何なんだぜ?紫に絡まれるし、門番にのされるし厄日か?」
「魔里沙、とりあえずさっきの煙の缶はなにかしら?」
いつの間にか咲夜がいる。
「あれは紫に紅魔館の門番に投げれば面白い事になるって言われて貰ったんだぜ。よく知らんが確かに面白い事になった」
「田中陸士長、あれは何かしら」
「ハッ!あれは発煙手榴弾です。爆発すると周りを煙幕で囲む事が出来、その隙に相手に接近したり逃げたり連絡用に使用します」
「……何故、紫がそんな物を持っているのかしら…」
顎に手を当て考える仕草をする咲夜。
しかし、発煙手榴弾が分からない咲夜にとって手榴弾がどこで手に入るかも分からないのだ。
「とにかく魔里沙は話があるから来なさい。ノーとは言わせないわ」
「嫌だぜ…と言ったら?」
フッと1つ息を咲夜は吐く。
「風見幽香に頼んで本気で相手してもらうわ」
魔里沙の顔色が一瞬で真っ青になった。
今まで強気だったとは思えない、弱気を絵に描いたような顔だ。
「は、反則だぜ」
「どうするの?私とお話?それとも…」
「分かった!分かったぜ!!咲夜と話で頼むぜ」
咲夜の口角がつり上がる。
悪い悪い笑顔になった。
「全く…今日は厄日だぜ…」
引きつった笑顔で魔里沙がそう呟いた。
スポンサーサイト
Secret

TrackBackURL
→http://436c75746368.blog73.fc2.com/tb.php/637-b514349e
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。