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2010.11.21 Guide 第参話
無機質なコンクリート製の建物。
扉の横に『死霊案内課第四拾弐管区隊』と看板が立てかけてある。
守衛はいないみたいだ。
「ここが我が第四十二管区隊です」

***************

三途の川からおよそ30分…
俺と藍坂は裁判所へ向かわずに隊舎へ向かう事になった。
普通、死霊は六文銭という三途の川の渡河賃を持っているそうだ。しかし俺はそれを持っていない、始めから持っていなかった。
三途の川で思案していると冥府の上級機関らしい『黄泉』から俺の身柄を確保するよう命令が下ったのだ。
「ところで俺が転生出来ないってどういう事?」
命令が下った直後、藍坂に「転生出来ないかも知れない」と言われたからだ。
大体転生出来ないってどういうことだ?
このままあの世でずぅっと居ろって事か?

「……橘花(キッカ)、元気にしていましたか?」
藍坂はさらりと俺の発言を流し門の近くで寝ていた猫を抱き上げた。
虎縞の猫は面倒そうな表情を一瞬した後、藍坂の指を目を細めながら舐める。
何だよ…無視かよ。
「ふふ、くすぐったいですよ」
藍坂は扉を開けたが隊舎に入るのではなく扉の脇で俺が入るのを待っている。
「どうぞ。ようこそ我が死霊案内課第四十二管区隊へ」
こうなったら地獄だろうが何だろうが行ってやる。
何で俺が転生出来ないかも聞き出さないとな。
俺はそう心に決め隊舎へ入った。

*****************

「第一分隊々長『藍坂雛』一等案内尉、『楠祐一』さんをお連れ致しました」
建物の中は外見以上にシンプルだった。
正面に向かい合わせに事務机が4つ(人が机に突っ伏しているのは何も言うまい)、奥に出入り口を向くように机が1つあり、すぐ横に複合プリンターがあるだけで後は何も無い。
白を基調とした床と壁がやたらと目立つ。
「藍坂くんは報告書、楠くんこっち来て」
奥の机に座っている中年男が言った。
白髪混じりの頭を見る限り50歳代だろう。
「うん。この度はご愁傷様です。僕はこの四十二管区隊の隊長をしている原田竹彦二等官吏と言います」
原田は顎をさすりながら言った。
「でね。君はすこぉ~し特殊な事情で裁判を出来ないのよ。野放しにも出来ないし…どうかな、ウチで案内人してみない?」
「…その特殊な事情ってのを教えてくれよ」
困ったような表情をする原田。
困ってんのはこっちだってのに…
「知りたいなら教えていいけど…知りたい?」
「当たり前だろ。転生出来ないってまで言われたんだ納得できるか」
ため息を1つ吐くと真剣な表情をした。
「実はね、取り違えたんだよ。この前冥府の事務員総入れ替えでゴタゴタしててさ君と『楠木祐一』って人と取り違えちゃった。ゴメンね」
え?
「取り違えは肉体があれば生き返る事が出来るんだけど肉体の損傷が激し過ぎて…」
なるほど
良く分かった
ここの人たちは話に人を付いて行けないようにするのが得意らしい。
「俺は別に生き返りたいとか言ってる訳じゃないだろ。転生したいだけなんだよ」
「それは無理だ」
後ろから声がした。
さっきまで机に突っ伏していた人だ。
左目から頬にかけて大きな傷がある、まるで…というかまんまYAKUZAだ。
「ミスをした事実は冥府の役人にもみ消された。つまり君は存在しない魂って事だ。まぁ運が悪かったと思って諦めろ、お前の代わりに『楠木祐一』が生きるからさ」
………何たる事だ。
ヒューマンエラーで死んで、諦めろだと?
そんな無茶あるかよ。
「俺の今までは何だったんだよ…」
「失礼致しますよ。楠さんはアナタですね」
入り口から声がした。
……これはまた随分古風というか古事記に出てきそうな服装をした少女がいる。
真っ黒の短い髪に漆黒の瞳…何とも不思議な雰囲気を醸し出している。そして何より背が小さい。これは藍坂より小さいんじゃないかな。
「イ、イザナミ様!!」
原田が言った。
同時に藍坂も傷の男も気を付けの体勢になる。
「黙りなさい。ワタクシはこの殿方とお話しているのです」
「ハッ!申し訳御座いません」
原田を一喝した少女:イザナミは俺の方を向くと深々と頭を下げた。
「この度はこちらの失敗で多大な迷惑をお掛け致しました。黄泉津大神イザナミとして心よりお詫び申し上げます。申し訳御座いません」
イザナミは最敬礼の体勢で微動だにしない。
こんな小さな子に謝らせて、俺が悪いみたいな感じがしてきた…
「お、おい。頭上げてくれよ」
「なりません。ワタクシの部下の過失で殺してしまったのです。御家族に何とお詫びして良いか…」
過失は過失だがこんな小さな子にここまで謝られるとはな…
「いいから頭を…」
「なりません!間違えた挙げ句、籍も全て削除し事実を隠蔽、治安維持課を使って魂ごと消そうとしたり言語道断です。せめて案内人として働かせる事は私の権限で出来ますが…申し訳ありません転生は出来ないんです」

はぁ…
何かどうでも良くなってきた
「……案内人になるにはどうすればいい?」

あぁ…
今思えばこの一言で始まったんだろう…
もう少し考えて言えば良かったと思う。

*****************

イザナミは原田と話をしている。
俺は藍坂に「案内人とは」みたいなものを教えられる事になった。
「まず、知っての通り案内人は死者の魂を彼岸へ案内する事を生業としています。基本的にする事はそれだけです」
「じゃあ、三途の川に居た笹原とかいうのは?」
「彼女は治安維持課。冥界の治安維持と現世(ウツシヨ)の霊的な異常を取締ります」
つまり、藍坂たち案内人と笹原たち機動隊は全く異なる物だという事だ。
黒いスーツとか似た部分はあるけど本質的に別物なのだ。
「後は追々話します、案内人登録も隊長に任せましょう」
「登録?」
「はい、現世に行けるのは案内人か機動隊など限られた者だけなんです。もし、みんながみんな行けたら冥界と区別が無くなり幽霊だらけになりますよ」
なるほど
確かに幽霊だらけになるな。
もう一度会いたい人ぐらいみんな居るだろうし。
「登録は原田隊長に任せます。アナタは取り敢えず挨拶をしてきなさい」

*****************

「あの~。初めまして、楠祐一と言います。よろしくお願いします」
机に突っ伏していた傷の男は気怠そうに顔を上げた。
顔を間近で見るとやはり強面…というよりは人でも殺してそうだ。
「俺は樫山賢吾(カシヤマケンゴ)。第2分隊の隊長をしてる。この奥にもう1人いるから挨拶して来い」
樫山は背中側にある扉を指差しまた机に突っ伏す。
寝たいのか?
まぁ言われた通り奥の扉へ向かい開けた。

廊下は人が2人並んで歩けるぐらいだ、途中『食堂・売店』と書かれた看板が天井からぶら下がっているすぐ側に扉がある。
"あの部屋か?取り敢えず行ってみるか"
その廊下にある部屋はそれだけで奥に階段が見えるだけだ。
「知らない男の子発見!」
廊下に声がわんわん響く。
階段の方から黒スーツが走ってくる。
どうやら、女性のようだ。
「誰かな?君、誰かな?」
「俺は楠祐一です。これからここで働くことに-」
「あぁ~、キリーさんの後継ぎだね。私は姫野桜花(ヒメノオウカ)二等案内士、好きな物はアルコールです」
俺のセリフの途中だったんだが…
姫野は子供みたいな笑顔で話す。
栗色のショートカットで前髪をヘアピンで留めている。……きっと誰とでも友達になれる人なんだろう、姫野の笑顔はそんな力を持っていると思う。
「…?どうしたのかな?ぼーっとして。私の顔に何か付いてる?」
「あっ!い、いや。何でもない」
「そう、ならいいや。」
売店兼食堂の職員『霧島楓(キリシマカエデ)』を姫野に紹介してもらい待機所(原田や樫山がいた場所)に戻った。

****************

待機所にはイザナミと原田はいなかった。
藍坂が手招きしている。
「はい」
「登録は無事完了しました。そこで制服、浄霊具の支給を行います」
浄霊具?
「浄霊具はこういう物の事です」
ゴトンという重い音と共に黒い物体が現れた。
ふむ…これは銃とかいう代物だろう。『冥府死霊案内課 九弐式特殊浄霊具』と彫ってある。
「これは私が使っている浄霊具です。九弐式特殊浄霊具…モデル『ベレッタM92F』、9ミリ特殊弾頭で成仏を促します」
なるほど
これを支給する訳か。
エアガンを使って空き缶を撃って爽快感を味わったことが男子なら一度くらいあるだろう。
俺はちょっと嬉しくなった。
「ですが、アナタは特殊浄霊具は使えません」
藍坂はサラッと言う。
「特殊浄霊具…つまり銃タイプは階級が曹以上の方のみです。アナタはこっちの型を…」
藍坂が取り出したのは漆黒の鎌だ。
草刈り用ぐらいの大きさだが持つ所から刃まで真っ黒、全て金属製で『零式浄霊具』と彫ってある。
「え?これ?」
手にとってみると予想以上に重い。
でも、少しカッコいい…
「はい。零式浄霊具…通称「鴉」。裏側に『南無阿弥陀仏』が彫ってあるでしょう?これで成仏を促します。一応これも私が任官された時に支給された物です」
鎌を使って死者をご案内ってそれじゃ死神じゃないか…
真っ黒の服着てデスサイズ持ってるって…死神じゃないか。

藍坂は銃を仕舞い、ひとつ息吐くと立ち上がった。
「では本日付けで『楠祐一』を二等案内士とし第四十二管区隊第一分隊へ任官致します。…以上っ!」
「あ、はい」
「制服の支給を行います。売店へ来なさい……あと、言葉遣いには気を付けなさい」
鎌を俺に突き付けると冷たく言った。
目つきもさっきまでとは違う、まるで敵を見るかのようだ。
こんな人だっけ?
何だがもうよく分かんねえや
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