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用語説明
ヴルスト:ソーセージ
ティーゲル:Ⅵ号戦車ティーガー
パンツァー:戦車
「ヤボール。ヘル、コマンダン」:ドイツ語で「了解しました。司令官殿」という意味



今朝、我が家の朝食はソーセー……ヴルストが出た。
親父はやけにこのヴルストを気に入っているらしくエヴァをべた誉めである。
「お前もエヴァさんは大切にしろよ?日本に来たばっかりで分からない事が多いだろうからな」
現金な奴め…
ヴルスト貰って上機嫌の親父は鼻歌混じりにリビングを出た。
俺も朝飯をいつも通り食うと制服に着替える為自らの部屋へ向かった。


……
俺と親父はいつも同時に家を出る。
時間は7時30分ちょうどだ。
俺はバス停まで歩き、親父は駅まで原付で向かうが…どうやら今日は違うらしい。
「グーテンモルゲン、ショウゴ」
「…おはよう」
「どうした?元気が無いな。さあ乗れ、学校だぞ」
乗れって…戦車じゃないか!
「Ⅳ号戦車G型だぞ?ティーゲルよりちょっとだけ速くて、軽い戦車だ」
知るかよ、俺に戦車の区別は付かねえよ。
「章吾、誰だ?この子は」
「オヤッサンがべた誉めしてたエヴァだよ」
親父はエヴァがドイツ人って事で白人、蒼い目のブロンド美女を想像してたに違いない。
だがエヴァは白人だが銀髪、小柄で寸胴な体型、ブラウンの瞳というおおよそ親父が想像したのとは違う人間だろう。
「ショウゴ、今ものすごく失礼な事を思ってないか?」
「思ってねぇよ」
ホントだよ?
「父さんは仕事に行ってくるよ」
「え?あ、あぁ」
そう言うと親父は原チャリに跨り、逃げるように駅に向かった。
…どんだけエヴァに幻想抱いていたんだ、あのオッサン。
「あ、章吾~」
聞き飽きた…否、聞き慣れた声。
見飽きた…否、見慣れた顔。
「紅葉か。どうした?」
「どうしたって、それはこっちのセリフ。何してんの遅刻するよ」
「そうだ。遅刻するぞショウゴ。モミジも乗れ、行くぞ」
儲けた、とばかりの顔をする紅葉。
何だよ…乗るしかないじゃないか。
「パンツァー!フォー!!」
エヴァの声から一拍置いて戦車は騒音と砂利を撒いて走り出した。
昨日乗ったとはいえ慣れる訳ないだろう。
この揺れ!
酔うぞ


保健室

ハハッ
見ろ!!言ったろう。
酔うと
言ったろう?酔うと!
「章吾…大丈夫?」
「すまない、昨日は大丈夫だったからてっきり…」
「……大丈夫だから…早く教室へ行けよ……俺の事はほっといてくれ」
今日乗り物酔いした理由は簡単だ。
飯を食ってさほど時間が経っていなかった上、戦車がやたら揺れるからだ。
いつもはバスだから直前に飯を食っても酔わない、というかあんなに揺れない。
「エヴァさんは教室へ行って。章吾は私が看ておくから」
「しかし看ておくと言ってもザニエーター(衛生兵)もいないし…ショウゴがこうなったのは私の所為でもあるしだな」
「転校2日目から遅刻するわけにはいかないでしょ?大丈夫よ、章吾はバカだけどそんな事で怒ったりしないよ」
俺、さり気なくバカって言われてない?
「むぅ……分かった。モミジの言葉に甘える事にしよう。……ショウゴ、モミジ…すまない…ありがとう」
エヴァはそう言うと保健室を出て行った。
俯いたまま出て行った。
少し可哀想だな。

保健室には俺と紅葉だけだ。
もし、仮にギャルゲーならイベントシーンが発生する所なんだろうが、相手が紅葉じゃあなあ。
…………沈黙
俺はベッドに寝ころんだまま。
紅葉はベッドの横にパイプ椅子を置き、少し俯いている
…この空気やだなぁ
「あのさ…」
「なに?」
「もう大丈夫だからさ、教室行けよ」
「真っ青な顔して何言ってんの。他人の心配より自分の心配しなよ」
昔からコイツには嘘がつけない。
何故かすぐにバレてしまうのだ。だからいっつも謝るのは俺で、怒られるのも俺だ。
「…分かった、しばらく寝る。恭子ちゃん(担任)には何か適当に言っといて」
「承知」
とりあえず、朝からこんなゴタゴタがあったからかめちゃくちゃ疲れた。
これはよく寝れそうだ
横になっているとウトウトしだした。
そのまま俺は深い眠りの海へ沈んで行った。


―チャイムの音
俺は飛び起きた。
い、今何時だ!?
首を巡らし、時計を探したが視界に時計は飛び込んでこない。
携帯があったのを思い出し、ポケットから携帯を取り出し、画面を見る。
10時30分…今のチャイムは2限目が終わったチャイムか。
…画面端に新着メールのアイコンがあることにようやく気付いた。
メールボックスを開くと5件あった。
メールマガジンだけどね。
メールを読み終わり、携帯をポケットに仕舞い教室へ向かった。


「おぅ」
「あ、もう大丈夫なの?」
「大丈夫だ。悪かったな心配かけて」
「それは私じゃなくて…ね?」
紅葉は視線をエヴァへ向けた。
そういう事だ。
一番心配したのはエヴァという事だ。

「おぅ、どうした?元気ねえな」
机に突っ伏している軍服少女に声をかけた。
少女…エヴァは俺が声をかけると同時に起き上がり、こっちを向いた。
「ショ、ショウゴ!大丈夫なのか!?」
「寝たら治った。悪かったな心配させて」
「そうか治ったか…良かった」
別に俺が酔ったのはエヴァの所為ではないのだが…
単に朝ご飯の直後だったからだ。
だからこんなに思い詰める必要はない。
「ショウゴ、その…お詫びにな?私の家に来ないか?いや、別にイヤならいいんだぞ」
「………ん?」
「だからな。私の指揮が悪くて戦車を揺らし過ぎた。その所為でショウゴを倒れさせてしまっただろう?そのお詫びに私の家で食事でも……どうだ?」
なるほど、そう言う事か。
理解した。でも別にそこまでしてもらう必要はないし…
「イヤか?」
「別にイヤって訳じゃ…」
「だったらいいじゃないか。そうだ、モミジも呼べ、ショウゴのご両親も呼べばいい。放課後に駐車場に来い、買い出しもしよう」
ハァ…
仕方ない。エヴァの歓迎会って事にすればいいか。
だったら、紅葉に言っておかないと。
ってまた戦車に乗るのか…若干気が重い。


放課後
買い出しに行くから駐車場に来いと言われたので駐車場へ紅葉と共に行った。
「来たか。早く乗れ…ショウゴ、気分が悪くなったらすぐに言え」
戦車はすでにエンジンを暖めており、爆音と共に車体を震わせている。
まるで「早く走らせろ」と言わんばかりだ。
昨日のタイガーとは違う戦車、原田は知らなかったのでエヴァに訊いたところ『Ⅳ号戦車G型』というらしい。(因みにタイガーではなくティーゲルだと怒られた)

「よし、戦車前進!」
俺たちが乗ったのを確認しエヴァが言った。
『ヤボール!ヘル、コマンダン!!』
唸りをあげるエンジン、タイヤとは天と地程の差がある乗り心地
どれも戦車特有だ。
俺は砲塔の右側に腰を下ろし、ゆっくりと過ぎ去る景色を眺めていた。

戦車は時速30キロ程で夕暮れの商店街へと進んでいく。
エンジンの細かな振動が少し心地良かった。
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