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2010.09.28 Guide 壱話
この時間は永遠だと思っていた。
しかし、永遠なんて存在しなかったんだ。
ある少女からその事を教えられた。


1両編成の地下鉄はガラガラで客は俺ともう2人だけ。
車体が揺れる度にキィキィ音を立て軋む。
揺れと同期して乗客の少女の髪を揺らした。
少女は真っ黒のスーツを着、長い髪をマンガのキャラクターのように両サイドでくくっている。
もう1人の乗客は男で少女同様黒いスーツを着、黙って文庫を読んでいる。
『間もなく~。此岸(シガン)~此岸です。彼岸(ヒガン)、賽の河原、裁判所はお降り下さい。尚、川を渡られる場合は渡河賃が必要ですのでご注意下さい。次の停車駅は終点、冥府です』
運転手が言った。
ワンマンの運転席にはミラーが付いていて車内のどの場所からでも運転手の顔が見える。運転手はとても楽しそうにアナウンスしていた。



この春から高2になった俺は思い切ってアルバイトを始めた。目的は特に無し。
強いて言うなら毎日退屈だったからだ。
学校の成績は普通、中の上。案の定、成績が落ちる事を恐れた両親、先生に怒られた。
しかし、成績を現状維持もしくは向上させるという条件の下、許可をもらい、早速街の本屋さんでアルバイトを始めたのだ。

6月ある日
俺はうっかりバイト先に遅刻仕掛けていた。
家から自転車で10分と掛からない距離だ。
愛用の自転車に跨り全力でペダルを漕いだ。
ゼイゼイ言いながら自転車を漕ぎバイト先のすぐ手前まで来た。
"交差点の信号は青!今なら間に合う!"
ペダルを漕ぐ力を更に強くし交差点に進入。その瞬間、突然視界がスローモーションになった。
「(な、なんだこれ!?)」
脳みそは普通だがペダルを漕ぐ足、ハンドルを持つ手の動きはコマ割したようにスローで動いた。
交差点の端に黒いスーツを着た少女がいる。視界端の少女を見たかったが目が動かない…いや、正確にはゆっくりと動いている。
ようやく視線に捉えた少女は無表情のまま口を開いた。
「(お疲れ様)」
言葉は聞こえなかった。口の動きでそう言ったように思った。
「(誰だ?何か嫌な感じがするな。幽霊とか?)」
しかし、その答えが出る前に俺の思考はブレーキ音と凄まじい衝撃を最後に途切れた。

目覚めるとそこは自分の家だった。
いつもの居間、いつものテレビ、いつものソファ、いつものカーテン…しかしそこに"色"は無かった。
全て白黒…モノクロで統一された世界。
居間には妹のぬいぐるみがあった。
カラフルな色使いのカメレオンのぬいぐるみ(確か虹色)もモノクロ。誰もいないのか気配すらしない。
「…………!」
声が出ない。
"誰かいないの!?"
と言ったつもりだったのだが声が出なかった。
言いようのない不安が現れ逃げ出したくなる。しかし玄関の扉、居間のガラス戸、その他全ての外と接している扉や窓は開かない。
"どうなって?あれ?俺は一体?……あっ!!バイト!そうだ!遅刻しかけて…て…自転車で…全力で向かってた時に…交差点で…"
「それ以上、思い出さない方がいいです」
誰だ?
振り向いても誰もいない。
「少し痛いかもしれません。我慢して下さいね」
その言葉の直後、爆竹を爆発させたような乾いた音が響いた。頭に凄まじい激痛が走り、思わずその場に倒れてしまう。
「……!………!!!」
悶絶という単語を初めて使った気がする。
あまりに痛いので言葉が出てこない。半泣きで頭を押さえながら床を転がった。
「お、この餓鬼なかなか精神力あるな。浄土弾喰らっても気絶しないとは…やるじゃないか」
今度は違う人の声が聞こえた。
徐々に薄れていく痛みと同時に涙でピンぼけした視界も回復する。
気が付くと視界に"色"が戻っている。
「こっちです。回れ右!」
言葉の言う通り回れ右をする。
そこには黒いスーツを着た少女と中年の男の2人。
「六文銭は持ったか?杖の準備は?裁判所の被告人席でガタガタ震えて閻魔様に命乞いする心の準備はOK?」
白髪頭に色黒の肌、顎に蓄えた白いヒゲのオッサンがニヤニヤしながら言った。
俺の記憶にはこんなオッサンいない。
「え?…だ、誰だ?」
「桐山さん、下がりなさい。…お初にお目にかかります。私は冥府死霊案内科第四十二管区第一分隊長、藍坂 雛(アイサカ ヒナ)一等案内尉です」
冥府?死霊案内科?ナニソレ
意味が分からないな
「えぇとですね。多分理解出来ないと思いますが落ち着いて聞いて下さいね」
藍坂は諭すように、子供に言い聞かせるように言った。
「アナタは自転車に乗って交差点に進入しましたね?うん、そこで……自動車に轢かれましたんです。大変申し上げ難いのですが…アナタは亡くなられました。ご愁傷様です」
ん?
「亡くなられた以上、この世界に干渉する事は御法度ですので早急に冥界へ案内させて頂きます」
んん?
「さっき、頭が痛かったと思います。あれは冥界に行くには必要な事…悔いや恨み辛みを抱いたまま冥界へは行けませんので浄化させていただきました」
おぉ~い!!
ちょっと!置いてけぼり!
「分隊長、居士さん理解してないよ」
「承知の上です。まず理解して欲しいのは楠さん…アナタが死んだということ、次に早急に成仏しないといけない事、もう後には退けない事。この3つです」
「死んだって…えぇと、あの……ドッキリ?」
あぁそうだ。
そうに違いない。きっと僕が死んだと思って動転している時にテレビクルーが『ドッキリ大成功!!』のプラカードと一緒にニコニコしなから出て来るんだろう。
さぁカメラはどこだ?DVDレコーダーの影か?妹のぬいぐるみの中か?
「突然死んだと言われて理解しろというのは酷かもしれません。でも、紛れもない事実なんです。……アナタは今日、交通事故により頭を強く打ち、脳挫傷を引き起こされ意識不明でしたが搬送先の病院で死亡が確認されました。お通夜は明日、葬儀は明後日ですがアナタはその時には冥府で裁判の最中です」
「で、でもさ。今、俺は意識もある、壁も触れる、手を抓ると痛い。実際にいるじゃないか」
死んだとかそんな事嘘っぱちだ。
大体、初めましてのヤツに「アンタ死んじゃったヨ」何て言われて信じる人間がいるものか。
「……分かった。見せてやる」
「…っ!!桐山さん!いけません!!辛い記憶を無理やりっ!」
「知りたいんだろ?どうなったか。百聞は一見に如かずって言うしな」
桐山は僕の顔を掴んだ。
アイアンクローをされていると考えて差し支えないが…痛い!
凄まじく痛い、頭割れ…る…?
…………………

ナンダコレハ

『俺』がいる
自転車に乗って必死でペダルを漕ぐ『俺』がいる。
『俺』の視線の先にはバイト先の本屋、その手前には交差点。
信号は青、『俺』はペダルを漕ぐ足に力を入れたのか自転車は加速した。
しかし、自転車が交差点に進入した瞬間に自転車は宙を舞った。
……聴こえる。いやだ、聴きたくない。
けたたましいクラクションとブレーキ音、金属のひしゃげる音、周りの人の叫び声、……etc.etc.
音と映像の爆弾だ。
多すぎる情報量に頭がパンクしそうだ。
でも、その情報で1つ分かった。
「あぁ死んだ…」
桐山の手の力が抜けた。
自分の足で立てる筈が力が入らずそのまま膝をついてしまう。
信じられなかった。まさか自分が死ぬなんて誰が予想出来たか。
「運命は回避出来ないんです。アナタはアナタの天寿を全うしたんですよ、次の転生まで少し時間がかかりますが次こそ長生きできる事を祈ります」
僕の目の前に中腰で微笑みながら藍坂は言った。
「これからどうすればいい?」
「地下鉄で三途の川まで移動します。そこから川を渡って、明日には裁判です」
裁判…あの世の裁判はやっぱり閻魔大王が出て来るのか?
嘘吐いたら舌抜かれて地獄行きっていう閻魔大王の裁判か?
「その裁判で懲役刑になることは絶対です。まぁ大きい罪を犯してないようですし、そこまで辛い刑は宣告されないでしょう。大丈夫、アナタならすぐに転生できますよ」
藍坂は仏のような穏やかな表情で言った。
何だろう…何か妙に落ち着くのは何故だ?。
藍坂の笑みは死という厳しい現実を忘れさせてくれそうだった。

視界がぼやけていく。
目頭が熱い…
ようやく理解した現実にようやく湧いた感情
これはしばらく止まりそうにない
「いいですよ。思う存分泣きなさい…涙が枯れて、落ち着くまで思う存分泣きなさい」
しばらく俺は声を上げて泣いた

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