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前回のあらすじ
買い物だってよ

ふとっちょの兵隊が突然いなくなってから20分が経っていた。
俺とエヴァはハイドリヒを探す為に商店街を走り回っていた。
「いたか?」
「いない」
「クソ…一旦、アーケードに戻ろう。そろそろカナリスが戻る頃だ」
踵を180度反転させる。
相当イライラしているんだろう、眉間のシワがハンパじゃない。
せめて、ハイドリヒの行きそうな場所とかが分かれば重点的に探すのに…2人だけで虱潰しは無理がある。
「なぁ、行きそうな場所とかあるか?」
「分からない…」
「何だよ。お前隊長じゃないのか?」
「…色々話はするけど、たまにアイツが何を言っているのか分からないんだ。『萌え』とか『二次元』とか言われても分からないだろう?」
……そうか
だったら1つ行くべき場所があるな。
商店街に書店は牛島書房のみだと俺は言った。
確かに書店は牛島書房だけだ、だが「ハヤブサ屋」という書籍、グッズ、同人誌を扱う店があるのだ。メインがグッズなので書店にカウントしていなかった。
…1つ注意してもらいたいのだがハヤブサ屋は友人が好きだから知っているだけで俺はハヤブサ屋で買い物したことがない。

……
………
ハヤブサ屋は商店街の真ん中あたりの3階建ての雑居ビルに入っている。
3階の窓にはやぶさ屋とデカデカと書かれていた。
以前は1階だけだったのだがみるみるうちにデカくなり3フロア全てハヤブサ屋になったのだ。
「ここにいるのか?」
「分からない。でも、居るかも知れない」
殆ど賭けに近い。
正直、ここにはいて欲しくないが…
その時、自動ドアが開いた。
むさ苦しそうな一団が同時に出てきた…真ん中あたりにいるのは見たことある黒い軍服の…
「イサム殿は素晴らしいですな!!」
「そうかな。ハハッ」
「素晴らしいですよ。日本文化にここまで堪能な海外オタクは見たことないであります」
5人中(ハイドリヒ除く)全員がチェックのブラウス
多分オタクなんだろう。
そこまで典型的ではないがオーラというかそんな感じがする。
「ではイサム殿。また機会があれば」
「うん。また」
左手にハヤブサ屋の紙袋を下げホクホクした笑顔のハイドリヒはようやく俺たちに気付いたらしい満面の笑みで手を振った。
「どうする?私は近付いてはいけない気がするんだが」
まったくもって同感だ
「中尉、どうしたんですか?」
自分がいなくなった事で他の人間にどれだけ迷惑をかけたか自覚がないらしい。
「馬鹿者!貴様が勝手にどこかに行くから探していたんだろうが!!」
「え?自分はショウゴさんに言いましたが」
「「え?」」
俺とエヴァはコンマ1秒のズレもなく声を発し、同時に目を合わせた。
「ショウゴ…どういう事だ?」
「全然知らなかったんだが…ホントに」
「…ハァ…分かった。もういい、帰るぞ」
ため息を1つ吐き、アーケードへと向かうエヴァ。俺とハイドリヒは後ろへ続いた。
「中尉、どうしたの?不機嫌だけど」
…何となく答える気がしなかったから返事をしなかった訳じゃない、エヴァが悪霊のような血走った目で睨んできたから答えなかった。ハイドリヒもそれを理解したからか何も言わなかった。

商店街 アーケード

アーケードにはカナリスがいた。
ダークグレーの乗用車のボンネットに座りタバコを吹かしている。
乗用車はこれまた古臭いデザインで屋根が無い(幌みたいなのはあるが)。
カナリスはこちらに気が付いたのだろう、タバコを消し、キヲツケの体勢になる。
「カナリス、オットーは?」
「ヤーッ!ティーゲルの整備であります」
「そうか分かった。さて…ハイドリヒ!どこかへ行く時は私に言ってからだと言わなかったか!?貴様何度目だ!」
「ヤーッ!数え切れません!」
「馬鹿者!巣へ帰ったらペナルティだ!分かったな!」
そう言うとエヴァは助手席(運転席は左)に座った。
相当怒っているんだろう耳まで真っ赤で肩で息をしている。
「全員乗車!」
もちろん俺も含まれているらしく左側の後部座席に座った。
「ショウゴ付き合わせてすまなかった。家まで送るから道を教えてくれ」
車はゆっくりと徐々に早く夕暮れの街を走っていった。

……
俺が道を教えている内に車内の空気が変わっていくのが分かった。
「その交差点を左に曲がって…あそこに町工場があったんだ、その隣」
「……そうか。カナリス、降ろしてやれ」
「ヤボール」

なんだ?
車はゆっくりと我が家の前で停まった。
ドアを開け降りる。
「ショウゴ。今日は助かったよありがとう。また後でな」
エヴァが言った。
後で?
「あ、あぁ。」
エヴァたちの乗る車は我が家の隣にあった町工場跡に吸い込まれるように入って行った。
え?
な、なんで?

俺はしばらく自宅の前で呆然としていたがエヴァが出てきたのを見てハッとした。
「お隣さん?」
「そうだ。今日、引っ越してきた」
よぉし、落ち着け。落ち着け俺
まず、状況を整理だ。
我が家の隣には小さな町工場があった。しかし不況の煽りでその町工場は潰れてしまい今は建物だけになっている。
そこにエヴァたちが入って行ったってことはエヴァたちはそこに越してきた?
「うむ、そういう事だ。大変だったんだ。ティーゲルとⅣ号戦車とキューベル・ワーゲンを収容、整備出来る場所で道幅がある程度ないといけないからな」
「じゃああの中には戦車が」
「もちろん。今は整備と改造中だがな。役人がうるさいんだ、履帯で道路を傷つけるなとか排気ガスとか騒音とかを抑えろとか」
それは当たり前だろう。
今の日本の道路はあんな戦車が通る事なんて想定してねえだろ。
「履帯のゴムは来る前に付けてたけど、エンジンを改造したおかげで今回走れるようになったんだ」
すごいな。
大城市はかなり環境には厳しい自治体で有名だ。そこを走れるんだから相当改造したに違いない。
もしかしてハイブリッドにでもしたのか?
「さすがにポルシェ博士のような事はしないぞ。エンジンとマフラーを良くしただけだ」
俺にはポルシェ博士が誰なのか分からなかった。更にエンジンとマフラーを良くしたら低燃費になる理由もさっぱりだ。
などと考えているとエヴァの片手にビニール袋が下がっているのに気付いた。
「それは?」
「これか?これはヴルストだ」
「ヴルスト?」
「そうだ。ミュンヘナーヴルストだ。美味いぞ」
へえ
とりあえずヴルストが何か分からないが美味いモノだというのは分かった。
「引っ越しの挨拶だ。ご両親は在宅か?」
「母親ならいるよ。親父は仕事だ」
「ありがとう。ちょっと挨拶してくるから待ってろ。この後、向こうの家にも挨拶行くから付いて来てくれ」
そう言うと我が家の玄関へ向かった。
呼び鈴を鳴らし、母が出て来た所で挨拶、ビニール袋を渡し終了。
小柄な体を鞭のようにしならせ深々とお辞儀をする。母もニコニコ顔でお辞儀している。
玄関が閉まり、エヴァが小走りに戻って来た。
「ふぅ…さて、行くか」
「あぁ」
我が家から見てエヴァ宅を挟んで隣の家に向かった。

……
『広河』と書かれた表札。
さっきと同様に呼び鈴を鳴らす。
「は~い」
玄関が開いた。
顔を出したのは俺と同じ学校、同じクラスの『広河紅葉』だ。
「夜分遅くに申し訳ありません。私、隣に越して来ました―」
「エヴァさん!?章吾!!」
「む?どうして私の名前を」
「よく見ろ。同じクラスの紅葉だ」
とはいえまだクラスの顔と名前は一致しないだろう。
「え?どうしてエヴァさんが章吾と一緒にここに?」
テンパりまくりの紅葉。
「落ち着け。コイツは隣に引っ越してきたんだよ」
「あ、あぁそうなの。私は『広河紅葉』、よろしく」
「エヴァ・グデーリアンだ。よろしく頼むカメラーデン。これは引っ越しの挨拶だ、受け取ってくれ」
そういうとビニール袋を渡した。
多分「ヴルスト」とかいうのが入っているんだろう。
「あ、ありがとう。……ソーセージ?」
え?ソーセージ?
そうか、ソーセージの事をドイツ語だとヴルストって言うんだろう。
「ヴルストだ。アミー(アメリカ)のと一緒にしないでくれ…まぁみんなで食べてくれ、美味いからな」
「うん、ありがとう。また明日学校でね。章吾もね」
「あぁまた明日」
「じゃあな」
広河家の玄関が閉まる。
同時に生ぬるい風が吹いた。
風には若干機械油の匂いが付いていてそれが妙に鼻につく。
きっとエヴァ宅で作業しているからだろう。
「今日はホントにすまなかったな」
エヴァがポツリっ言った。
エヴァが謝るのは二回目だ。
「別に気にするなよ。俺の所為でイサムさんを捜す羽目になったんだし、謝るのは俺だ」
「あれはハイドリヒが悪い。部下の失敗は私の失敗だ、ショウゴが謝る必要はない」
これでも隊長という訳か…
「さぁ、明日も学校だ。ショウゴ、遅刻するなよ?」
「分かってるよ。お前もな」
「お前じゃないエヴァ・グデーリアンだ」
口を尖らせながら言った。
髪も肌も白いから口を尖らせたらまるでアヒルだ。
「遅刻するなよ、エヴァ」
両側の口角を上げニッと笑いながら満足そうにエヴァは頷く。
同じく俺もニッと笑った。


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