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あらすじ
転校生が現れた…戦車で







市街地に近づくにつれて交通量が増えてきた。
センターラインを余裕で跨ぐ戦車(タイガーというらしい)は対向車に道を譲ってもらいながら前進してゆく。
「ショウゴ。この辺でスーパーマーケットと言えばなんだ?買い出しをしたいんだ」
ハッチから顔だけひょっこり出しているエヴァが言った。
戦車は有り得ない程の騒音を撒き散らしている。つまり会話なぞ出来ない、出来るはずがない。
だがエヴァの声ははっきり聞こえる。
理由は簡単、乗車と同時に有線のヘッドセットを装着させられたからだ。

「この辺にスーパーは無いんだよ。ここは地元の力が強くて商店街にスーパーが負けるんだ」
そう、元々スーパーはあった。
ジャ●コとか銀●ルとか。しかし地元の人は商店街に足を運ぶので撤退を余儀無くされたのだ。
「よし、商店街に向かうぞ!オットー!」
『ヤボール』
道分かるのか?
そう思ったが余計な心配だったらしい。
戦車は途中の交差点を戦車独特のその場旋回で曲がり商店街の方向へ走った。どうやら道は分かるらしい。

『大城一番星商店街』と書かれた看板がいたるところに設置され商店街が近い事を示す。ここは昔からの商店街で爪楊枝からテレビ、エアコンまで大体の物は揃う。ただし道幅が極端に狭く、荷物を搬入する軽トラックが停車しただけで車は通行出来なくなる。こんな戦車は通れる筈がない。
「むぅ…さらに狭いな…オットー!どこかに停めよう、歩くぞ」
『ヤボール。ヘル、コマンダン』
商店街のアーケードをくぐる手前で戦車は停止した。
エヴァはベレー帽が落ちないように右手で押さえながら戦車から飛び降りた。
やはり買い物客が珍しそうに集まりだした。
「ショウゴ。駐車場はないか?」
「そこに時間制の駐車場ならあるぞ。ただ戦車はどうだろう?」
「中尉、だから言ったんですよ。キューベルワーゲンにしようって…」
「…だってティーゲルのがカッコイイじゃないか。このヘンシェル社の無骨なデザイン、アハトアハトを搭載したことによる圧倒的な攻撃力と100ミリ装甲の防御力…」
戦車の車体を撫でながらその魅力をエヴァは語りだした。さすがに気持ち悪いの一言だ。
「また始まったよ…ハイドリヒ!降りるぞ」
「ヤボール」
砲塔のハッチから背の高い男が出てきた。
エヴァ同様、黒い服を着ている。肌が白く金髪でエメラルドグリーンの瞳、はっきり言ってかなりイケメンだろう。
「君が中尉のカメラーデンか?俺はカナリス…ヘルベ・カナリスだ。射撃手をしている。こいつ…ハイドリヒ!」
カナリスが出てきた横のハッチから小太りの男が出てきた。白人ではなく黄色人種だった。黒い短い髪だがブラウンの瞳だ。
「僕はイサム・ハイドリヒ。装填手だ。よろしく…えっと操縦手は『オットー・シュベーヘン』だ。あまり顔を見せないけどいいやつだよ」
見るからにいいやつという顔立ちのハイドリヒはスッと手を出した。握手を求めているんだろう。
「小野田章吾です。よろしく…」
ハイドリヒの手はとても温かい。
軍服を着た男たちに緊張していたがホッとした。
「カナリス!ティーゲルを移動させろって言ってる」
「どこにですか?」
エヴァは白髪混じりのオッサンと話している。あのオッサンはこの辺じゃちょっとした有名人だ。
大城一番星商店街を管理するオッサン…大城商工会々長の東条のオッサンだ。
「そこのタバコ屋の前に置けるみたいだ」
「ヤボール。オットー!聞こえたか?」
「もちろん…動かすぞ」
マフラーから真っ黒の排気ガスをぶちまけつつ唸りを上げるエンジン。騒音は商店街中に響き道行く人々の足を止めた。
ハイドリヒの誘導でタバコ屋の前に戦車はその巨体をゆったりと休めた。
エンジンが止まると周りは『こんなに静かだったのか』という程静まり返った。
まるで森、それも鳥の鳴き声や風の音さえしない完全なる静寂だ。
「ショウゴ。食料が売っている店を知りたい。案内を頼む」
「あ、あぁ。わかった」
あまりに周りが静かだったから一瞬エヴァの言った事が分からなかった。

「とりあえず、商店街には何でもある。食い物、家電、マンガ、日用品…etc.etc.…食料品ならあの辺だ」
「わかった。ハイドリヒ、カナリスは商店街に何の店があるか調べろ。オットーは車両を守れ。ショウゴは私と糧食を買いに行く」
『ヤボール・ヘル・コマンダン』
俺に家に帰るという選択肢は与えられないらしい。
渋々、食料品が売っている場所へと向かった。


……
「なるほど…これが日本の商店か…」
「ここはパン屋だ。魚は出て右、肉はここの向かい、野菜は…」
「待て待て。後で案内してくれ。一度に言われても覚えきれんだろう」
確かにこの商店街は商店だけでも相当多い、更に毎日のように鯛焼きとか今川焼きとかの出店があるから店の数は余裕で百は超える。
「いらっしゃい!何だ、小野田のせがれじゃないか」
「あ、ども」
「誰だ?」
「俺の親父の友達だ。ここの店長だよ」
「横井正一(ヨコイマサカズ)だ。ところで、この嬢ちゃんはお前の"コレ"か?」
横井さんはニヤニヤしながら小指を立てた。
何というか…古い。小指は古い。
「違うよ。転校生でこの辺の案内を依頼されたんだよ」
「エヴァ・グデーリアンだ」
「へぇ~、外人さんかい。よし、今日はサービスだ。好きなパン一個やるよ」
ニッと真っ白の歯を見せ横井さんは笑った。
ここの商店街の人たちはみんなこんな感じだ。何かにつけてサービスをしてくれる。
ここの商店街が人気の理由の1つだ。

エヴァは食パンを1斤買い、サービスのパンはあんパンを選んだ。見たことが無いらしい。
「あんパンは日本にしかないんだ。だから一度食べてみたかったんだ」
「へぇ~。そうなのか」
エヴァはあんパンを袋に入れ、珍しそうに店内をキョロキョロしている。
「中尉!」
息を切らしてハイドリヒが走ってきた。
おおよそ、軍人らしくない走り方でドタドタと走り店に入ってきた。
「どうした?」
「ゼェゼェ……ド、ドイツ料理の店を発見しました!」
「おぉ!ホントか!?」
エヴァは目を輝かせ外へ出た。ハイドリヒとは正反対のスマートな走り方だ。
「11時の方向、距離120!」
「吶喊!」
ダッシュとは正にこの事だろう。あっという間にドイツと日本の国旗がたなびくドイツ料理店「ゲルマン(店名)」へと消えて行った。
「早っ!?」
「さすが中尉、僕には出来ないなぁ」
ケラケラと笑いながら脂肪で膨れた腹を叩く。
「そうだ。この辺に本屋はあるかな?日本に来たらマンガを読もうと思ってたんだよ」
「本屋なら向こうだ。案内するよ、俺も行くから」
「中尉に連絡してから行こう」
エヴァに連絡したが「ゲルマン(店名)」名物のソーセージとザワークラフトを食べていた。
「中尉!何でザワークラフトをそのまま食べるんですか!それは肉に巻くから美味いんですよ」
「そんな事知っている!とりあえずザワークラフト単体の味を知りたいだけだ」
…何の会話だよ
ハイドリヒが報告しても「ハイハイ」と適当な返事だ。しかしハイドリヒは慣れているのかそのまま店を後にした。

「いっつも中尉はあんな感じだよ。食事と休憩には特に気を使う人でね、不味い食事と休めない休憩は絶対にしない人だよ」
「はぁ…」
「大丈夫、君もすぐに仲良くなるよ。…あ、これが本屋さんかい?」
商店街唯一の本屋『牛島書房』
店長が牛島という名字だから牛島書房だ。
牛島書房というゴシック体の看板のすぐ横に『本』と二周り大きいサイズで書かれているから漢字さえ読めれば誰でもそこが本屋だと分かる。
「今、『何でここが本屋なのか分かった?』って顔してたね…僕は日系なんだ。母さんが日本人でね」
だから『イサム・ハイドリヒ』なんてドイツ人っぽくない名前なのか。
なるほどハイドリヒが黄色人種である理由もこれにあったわけだ。
「だからってわけじゃないけど漢字は一通り読める。それに漢字が読めなかったら『マンガ』が読めないからね」
ニコニコ笑いながらハイドリヒは牛島書房へ入って行った。
半歩遅れて俺も後へ続いた。

……
…………
どのぐらい経っただろう…
30分やそれぐらいでは効かない筈だ。
黒い軍服を着たふとっちょの兵隊と共に本屋に入ってから俺は雑誌コーナーで立ち読みしていた。
店主の牛島のオッサンは居眠りしていたので存分に立ち読みしていた。
ふと、気が付くとハイドリヒが居ない。
「おい、ショウゴ。ハイドリヒはどうした」
後ろから声がしたので振り向くとエヴァがいた。
「それが気が付いたらいなかったんだ」
「またか…アイツはどこかに消える時があるんだ。いつもどこからかひょっこり出て来るから気にしてなかったんだが今日は知らない土地だからな…カナリス!」
「ヤーッ!」
エヴァの真後ろには長身で金髪イケメンのカナリス。
返事と同時に踵を鳴らしてキヲツケの体勢になった。
「ハイドリヒを捜す。オットーと共にキツネに戻ってキューベルを持って来るんだ。ティーゲルは巣に入れてな…30分したらアーケードに集合だ」
「ヤボール!ヘルコマンダン!」
敬礼をサッと終わると颯爽と戦車が停まっているタバコ屋へと走っていった。

時刻は18時近い。
商店街は夕飯の買い物ラッシュを終え少し人気が少なくなっていたが依然買い物客で賑わっている。
「ショウゴ。虱潰しだ。それしかない、行くぞ」
アーケードとは反対側へエヴァが駆け出す。
俺も後を追った。
やけに夕日が紅くて大きかった。
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