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「紫様、彼らは紅魔館に向かうようです」
「そう…」
「どうされました?」
「何でもないわ。…そう何でもないの。とてもとても他愛のないことよ。幻想郷の為に人が死ぬだけ…」
「…………」

田中の運転する軽装甲機動車は最初に辿り着いた湖畔に来ていた。
トラックを三台放置していたからだ。
トラックには軽油や火器が大量に積んである、もし何かあればえらい事になり兼ねない。
「これが限界ですね」
トラックの荷台いっぱいに積んだ荷物を見て田中が言った。
「あとどれぐらいだ?」
「燃料、手榴弾、銃本体は全て積み込みましたが弾は半分ちょいしか積めてません」
「ドラム缶が6本、手榴弾26個、9mm拳銃、9mm機関けん銃、89式小銃が5挺ずつ。M2が1挺、ミニミが2挺か」
「弾は全て合わせておおよそ8000発です」
倉田は怪訝な顔をしたが田中や車内にいたリグルからは見えなかった。


紅魔館 正門前

「遅いわね…」
待てども暮らせども彼らは来ない。
時間に比例してイライラが募る。
「それもこれもあの隙間の所為よ…」
1人ブツブツと言っていると遠くに土煙を撒き散らすモノが見えた。
土煙をもうもうと撒き散らしているのは2台の車…とは言っても幻想郷にある車は荷車や牛車ぐらいであれほどまでに土煙を撒き散らす程のモノではない、つまりアレは幻想郷外のモノだ。
徐々にディーゼルエンジンの爆音が大きくなる。
「美鈴(メイリン)」
「zzzz」
「美鈴!」
「zz…イ、イエス!アイマム!」
空気椅子で寝ていた女は霊夢が怒鳴ると直立不動の体勢になった。
女はまるで中国の民族衣装のようなの服を着て、帽子には金色の星、星には『龍』と書かれている。
肩の高さより伸ばした赤い髪を揺らし周囲を確認する、首を左右に振る度に髪が大きく揺れた。
「あ、あれ?咲夜さん…じゃなくて霊夢さん?」
「お客さんよ。咲夜かレミリア呼んできて」
「お客?」
軽装甲機動車とトラックが急停車する。
爆音と排気ガスを流すディーゼルエンジンに霊夢が怪訝そうな目で見る、田中はそれを見てすぐにエンジンを止めた。
倉田は既に車外にいた。トラックのドライバーをしていたのは倉田だ。倉田は停車すると同時にエンジンを止め89式小銃を担いで車外に飛び出していた。
「あの…霊夢さん?彼らは誰ですか?」
「お客さんよ。大事なお客さんよ」
「美鈴!これは何の騒ぎ!?」
門の内側…つまり屋敷側から声がした。
田中とリグルも車外へ出た。田中は声の主がとこに居るのか分からず探していたが、リグルには一度聞き覚えがあった。
永夜異変の時だ
無数のナイフで体をズタズタに切り裂かれた挙げ句、そこまでしなくていいだろうと言うぐらいボコボコにされた。
思い出しても恐ろしい…心に刻み込まれた恐怖 脚が勝手に震える
「リグルちゃん大丈夫か?俺の後ろに下がってな」
田中が気付いてくれた。
リグルは田中の上着の左脇腹辺りを掴んで隠れるように後ろに下がる。
「さ、咲夜さん。霊夢さんが…」
「ちょうど良かった。彼らをここで働かせてやって」
「…そんなの私に出来る訳ないでしょ。お嬢様が決めるのよ」
チラッと田中の方を見た。
声の主はいわゆるメイド服を着ている。
白と紺のメイド服に灰色の髪はショートカット、頭には白いカチューシャを付け、いかにもメイドさんと言った感じだ。

「いいわよ」
更に屋敷の奥から声がした。
影が2つ見える。
「しかしお嬢様」
「屋敷の門を警備する兵隊が欲しいと思っていたところよ。それに美鈴だけだと頼りないし」
2つの影は門のすぐ前にまで来た。
1つはメイドさん、もう1つは少女だ。しかし少女にしてはやけに威厳というかオーラみたいなのがある。そして何より目につくのは背中から生えた蝙蝠のような羽根だろう。
「そうね…美鈴は働き過ぎね。昼間は彼等に任せて休んでいいわ」
「え!?ほ、ホントですか!?」
「もちろんよ。それにアナタ達は見たところ人間だし昼間の方がいいわ」
田中たちを指差し少女は言った。
メイドさんに日傘を持ってもらい自らは手ぶらでいかにもお嬢様といった感じだ。
「少し疲れたわ…咲夜、紅茶を淹れて」
「は、はい」
少女は踵を屋敷へと向けゆっくりと歩いた、咲夜も小走りに後へ続く。


紅魔館 廊下

「レミリアお嬢様、一体何のつもりですか?彼等を雇うなどと…」
「あのリグルといた男の運命を見たわ…スキマ妖怪が一枚絡んでる。アイツを利用してあの胡散臭い妖怪に一泡吹かせてあげるわ」
「そんなに利用出来るようには見えませんでしたが…どちらかと言うと馬面の方が…」
その時、博麗神社で出現した紫色の空間が現れた。博麗神社と決定的に違うのは大きさが半分程ということと空間が垂直ではなく斜めに出現したということだ。
「デカい口を叩くのね」
紫が上半身を空間から出して言った。
下半身は見えない…いや、見えないと言うとまるで障害物があってその角度からでは見えないと捉えられるかも知れないが、実際に存在しない。つまりパッと見は空中に浮いているかのように見えない事もない。
「ふん、盗み聞きとはいい趣味ね。スキマ妖怪」
「あらぁ?私は盗み聞き何てしてないわ。私は何処にでも居るしどこにも居ない、だから私は最強であり最弱の妖怪。私に一泡吹かせようなんて一千年早いわ…紅いお嬢さん」
「言ってなさい。他人を舐めてると痛い目見るわよ」
今にも戦争が起きそうな空気だ。
しかし咲夜は一切口を挟まず事態を見守っている。
「いつでも宣戦布告は受けてあげる。但し、弾幕でね」
そう言うと、紫色の空間へと紫は消え、空間自体も消えた。
何事もなかったかのように時間は過ぎていった。
「戦争ね」
「始まりますか」
「スキマの狙いはわかってる。戦争を起こして英雄になるつもり、幻想郷の為とか抜かしてね。彼等は実弾を持ってるわ、スキマはそれを利用して彼等を殺すつもりよ」
幻想郷の弾幕と外の世界の弾幕、決定的に違うものがある。それは殺せるか否か
幻想郷の弾幕は殺せない。怪我することはあってもよほど酷い被弾をしなければまず死なない。
殺すことのできる弾幕…幻想郷にはとてつもなく脅威なのだ。
「あのスキマの好きにはさせないわ」
「もちろんです」


紅魔館 正門前

「とりあえず、ここに置かせてもらえるみたいだな」
「じゃあ私は神社に帰るわね。何かあったらこの…美鈴に言えばいいわ」
そう言うと霊夢は神社へと飛んで行った。文字通り地面を蹴り飛んで行った。
「どうも初めまして、紅・美鈴(ホン・メイリン)です。紅魔館の門番とお嬢様たちの警護をしています」
田中たちが呆気に取られていると美鈴が直立不動の体勢を執りつつ言った。
「り、陸上自衛隊第30普通科連隊第5小隊小隊長、倉田肇3等陸尉であります」
「同じく田中龍之介陸士長です」
一方自衛官2人は挙手の礼をしながら言った。
正門前に異様な空気が漂う。
それは3人が引き起こしたのは言うまでもない、何だか可笑しくなった美鈴が吹き出した。倉田、田中の順に敬礼を解く。
「あ~…まだ荷物があるんで取りに行きたいんだが」
「いいですよ。…それにしても変わった首飾りですね」
田中の9mm機関けん銃を指差しつつ言った。
首飾りのようにスリングベルトで下げていたから首飾りと勘違いしたのか、それとも皮肉ったのか、それは分からない。
田中が首飾りではない事を言おうとしたが倉田のが早かった。
「士長、行くぞ。運転しろ」
「りょ、了解」
軽装甲機動車のドアを開け田中、倉田、リグルが乗り込む。
ディーゼルエンジンがうなり声を上げ排気ガスを吐き出した。
美鈴がエンジン音に驚いているのを横目に軽装甲機動車は最初に辿り着いた湖畔へと向かった。

太陽は西の空へ沈みつつあった
夜が訪れる…幻想郷に長い永い夜が訪れようとしていた

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