上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
「紫様…何ゆえに彼等を拉致したんですか?」
「言ったでしょ?暇つぶしの為よ」
「ご冗談を。もし彼等が異変を起こすと戦争になりますよ」
「いいじゃない戦争。だったら私はその戦争を終結させた英雄ね」
「……」
「幻想郷の結束が乱れてる…幻想郷にはそれを束ねる英雄が必要なのよ」

田中の運転する軽装甲機動車は1つの小高い山の麓で止まった。
いつの間にか倉田は後部座席に移動しルーミアと共に居眠りをしている。
「3尉。3尉!」
「ん?お…おぉ着いたか?」
「この山の頂上に神社はあるよ」
助手席のリグルが言った。
確かに頂上へ向かう階段と鳥居が見える。
「よし、行くか」
えっちらおっちら田中たちは一応(89式小銃と9mm機関けん銃で)武装し参道を登った。
見た感じ普通の参道だ。特別何かあるとかは見受けられない。ただ向かって右側の林に御札や注連縄が大量に供えられているのが目についた。
「向こうは博麗大結界があるの。ここは幻想郷の端っこ、迷い込んだ外来人はここから帰るのよ」
「へぇ。じゃあ向こうは俺たちの世界って事か」
「正確には違うけど、まぁ…そういう事」
だが、田中には結界だとかもうそんなものどうでも良かった。
訳の分からない場所に連れて来られ、ようやく帰れるのだ
幻想郷などという世界は田中たちの世界から見れば存在しないも同然。さっさと帰ってこんな事忘れてしまいたい。
階段を登るに連れて足取りが軽くなるのが感じた。

……
階段を登ること15分
ようやく朱塗りの鳥居が見えてきた。
もうすぐだ
そう思うと自然に早足になる。
5月の陽気にしては暑く迷彩服の下は汗にまみれていた、しかし帰れると思うとむしろこの汗も気持ちよい。
階段を登り切ると、林を切り開いた土地に静かに佇む意外と立派な本殿が目に入った。
鳥居には『博麗神社』と書かれている事から目的地である事がわかる。
「遅かったですねぇ~。待ちくたびれましたよ」
境内には2人…1人はさっき見た射命丸とかいう新聞記者。もう1人は紅白の衣装に身を包んだ少女…巫女だろうか?
田中たちの知る巫女服はもっと地味だったように思う。肩に切れ込みというより肩と袖は分離し全体的に赤の割合が多いように思う。
「それで?あなた達ね、外来人ってのは」
少女は少し棘のある口調で言った。
面倒なのだろう
田中はそう思った。
「初めまして。陸上自衛隊第30普通科連隊第5小隊小隊長、倉田肇3等陸尉であります」
「同じく、田中龍之介陸士長です」
「博麗神社の巫女兼結界守の博麗霊夢です。それで?外の世界に帰りたいんでしょ?」
霊夢はチラッと田中を見た。
田中は一瞬だけ殺気のようなものが見えた気がした。つい反射的に首からスリングベルトで下げた9mm機関けん銃を構えそうになる。
「あぁそうだ。俺たちは東富士に帰らないといけない」
「いいわ。でもそっちのアナタ」
田中を指差した。
「アナタその呪術は誰に掛けられたの?」
田中を指差しながら尋問官の如く問いただす。
「そんな呪術を放置したまま帰して無事でいられる保証はないわ。アナタは外の世界に帰す訳にいかない」
「ジュジュツ?」
「呪いよ。藁人形とか聞いたことない?まぁ、アナタのは藁人形とは比較にならない程凶悪で最低で最強の呪術よ」
目の前が真っ暗になった気がした。
橋を渡っていたら突然橋が崩れ落ちたようなものだ、それもあと一歩で渡りきるという所でだ。
普段なら幽霊や呪術といったオカルトは信じないのだがここは幻想郷だ。
外の世界とは確実に違う。呪術や通常とは違うことが起きても不思議ではない。
むしろ今は外の世界の方が異常なのだ。
「…死ぬの?俺、死ぬの?」
「すぐには死なないわ。何か方法があるはずよ。調べてあげる」
「話してる所悪いんですけどいいですか?田中さん。今の気持ちを一言で」
素晴らしい笑顔でメモをとる射命丸
マスコミ根性というものだろうか、この空気の読めなさは敬意に値するかも知れない。
「ちょっと、文やめなさいよ」
「新聞記者としては被呪術者のコメントを欲しいんですよ。記事が盛り上がりますしね」
「毎回毎回、香霖堂の広告じゃつまんないですしね」
「五月蝿いですよ、このゴキブリが」
「ゴキ…!蛍ですよ!!」
「あ~…いいか?」
3人の会話を黙って聞いていた倉田がようやく口を開いた。
「結果的に帰れるのか?帰れないのか?」
「アナタは帰れる。帰りたいなら帰すけど?仲間を放っておくならね」
「田中は帰れないんだな。なら俺も残ろう。俺は田中の上官だ、部下をほったらかして逃げる訳にゃいかん」
「3尉…」
「ところで、ここには泊まるような場所はあるのか?1日や2日でどうにかなる代物でもないんだろ?」
「里には旅館はあるけどアナタ達はお金を持ってないでしょう?私の知り合いを紹介してあげるわ。門番が役に立たないって嘆いていたから働く事も出来るし、あそこなら衣食住が付いて来るし、いいんじゃない?」
「霊夢さん…それって紅い館の」
「大正解。それがどうかした?」
リグルは頭をフルフルと横に振った。同時に触角が揺れる。
「どうもしないけどあんな恐ろしい所…」
「恐ろしい?」
「大丈夫よ。言うほど恐ろしい事無いわ」
言いながら霊夢は本殿横の社務所へと向かった。
射命丸は田中たちの服装や持ち物をメモする。その中で倉田が背負っている89式小銃が気になったのだろう、顎に手を当てそれが何なのか考え、思考を巡らせたが分からなかった。
「倉田さん。これは何ですか?」
「ん?あぁこれは『89式小銃』だ」
しかし、名前が分かった所で射命丸はそれが何なのか分からない。手を触れようと手を伸ばす。
「触るな」
低く押し殺したように倉田が言った。
「危ないから触っちゃダメだ。絶対に…絶対に触っちゃダメだ」
倉田の放つ異様な気配に射命丸はすぐに手を引っ込めた。幻想郷に来てから倉田の放つ気配は完全に異常で田中は正直恐怖に近い感覚に抱かざる負えなかった。
「文、小銃は鉄砲の事よ。きっとその鉄砲は文の知っている種子島より厄介ね」
社務所から出てきた霊夢は何も持っていなかった。
一体何の為に行ったんだ
考えたが混乱状態の田中の頭では答えは出なかった。
「さ、行くわよ」
「どこへ」
「あなた達を泊めてくれる所…赤くて朱くて紅い館よ」
ふと、最初にいた場所から見えた紅い館が思い浮かんだ。
「リグル、案内してあげて。門の前で集合ね」
「分かった。紅魔館に行けばいいんだね。じゃあ、倉田さん田中さん行こう」
リグルの案内で田中たちはまた、参道を下りる。
登る時より足取りは重く、口数も少ない。いつもなら大したことない装備がやけに重く感じた。

……
射命丸は先に紅魔館へ飛び立った。1人残された霊夢は辺りを見回し、言った。
「紫、どういうつもり?」
すると、霊夢の右側の空間が音も無く裂け紫色の空間が現れた、ちょうど人が1人入れるぐらいの大きさだ。すると、中からゆるりと女性が出てきた。
「何のことかしら?」
紫は扇で口元を隠しているがにやついているのが目元で分かった。
何かを企んでいるというより今の状況を楽しんでいるという感じだ。
「しらばっくれないでよ。アンタでしょ?アイツラを連れてきたの」
「私じゃないわ。ただ彼等は面白い事をしてくれそうね」
「紫…アイツラはアナタの思ってるほどバカじゃないわ。甘く見ない方が身のためね」
「あら?それは楽しみ。久し振りに楽しめそうかしらね。外の世界の防人の強さ…幻想郷で通用するかしら」
「それは蓋を開けてのお楽しみ。」

ふふ、楽しみねぇ

そう言うと紫は裂けた空間へと入った。一拍おいて裂けていた空間がジッパーを閉めるように縮小し何事もなかったかのように無くなった。
そこには5月とは思えない陽気で蒸れる草しかない。
「はぁ…」
霊夢はため息を1つ吐くと紅い館へと向かった。


スポンサーサイト
Secret

TrackBackURL
→http://436c75746368.blog73.fc2.com/tb.php/442-bdff4e7a
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。