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 気だるい気分は些かマシになった。しかし、生徒会の面倒さは変わらない。
「くそぉ~…何でこんなに体調いいんだよぉ」
寝起きだというのに体が妙に軽い。昨日程ではないが何故か体調は完ぺきだ。
 ベッドを軋ませストレッチをしてみる。背筋を伸ばし体を反らせる。
グウゥゥゥ…
 何だよ、胃腸も調子いいのか。まあ、昨日はトーストを2枚食ったぐらいだ。調子良くて当然か。
 精神的には学校(生徒会)に行きたくない気分で一杯だが、体調は完ぺきだ。行かないとマズイ。
 さすがに昨日のようにトーストを2枚食うほど食欲は無かったが、いつものように食事を済まし、いつもと同じ時間に家を出発した。
 俺は学校までは徒歩で通っている。
自転車という選択肢もあったのだがパンクを直すのが面倒なので徒歩で通学している。ここまで面倒くさがりの俺が生徒会副会長に立候補したのでクラスの友人は「信じられない」だの「実弾の雨が降るんじゃないか」とか言っていた。
大体、俺は立候補したくてしたわけじゃないし第一こんなことしたくない。しかも今日も会議だというし…一体何を会議するんだ。
 学校は少し小高い丘を整地して建てられたらしい。丘と言っても大した高さではなく大阪の天保山ぐらいだろう。
 丘の中腹ぐらいで校門が見えてきた。教室へと急ぐ生徒たちが校門をくぐるのがよくわかる。だが、時間はまだまだある。わざわざ急いだところで何もならないのは2年間通ってよく分かっている。急ぐ連中は日直か週番か小テストの予習をする奴らだろう。生憎俺は日直でも週番でもない。ましてや小テストで予習なんかするつもりは微塵もない。
 のんびり校門へと歩いていると。「おはようございます!」と聴こえた。
何事かと思い声の主を探す。
「おはようございます!」
どうやら校門のすぐ横にいる女子生徒からだ。
女子生徒の吸い込まれそうな黒くて長い髪が挨拶の度にお辞儀するため大きく揺れた。…知っている顔だ。
「おはようござ…あぁ、高島君でしたか。君も朝の挨拶をしなさい。副会長ですからね。」
得意げに鼻をフフンと鳴らし言った。
「マジですか…」
仕方なしに北条の左側に立ち挨拶を始めた。
クラスの連中や夏目がニヤニヤしながら通り過ぎて行ったのが若干癪だったが、何か清々しい気分になった。…俺はもしかして副会長として遣り甲斐を感じているのか?
 俺は時間ギリギリまで北条と挨拶を続けた。しばらくして予鈴が鳴ったので自らの教室へと向かった。
 「ジュン~」俺が教室に入るとほぼ同時にロン毛の男子が話しかけてきた。
「青山…お前な、いっつも言ってるが俺はジュンじゃなくてスミだ。」
「ジュンでも分かるからいいじゃん。みんなジュンって言ってるし。」
こいつは青山。俺とは中学からの付き合いだ。アホそうな見た目に反して意外と読書家で国語や歴史といった文系の成績は優秀だ。
「んで?何か用事でもあんのか?」
「そうそう。この前言ってた本を手に入れたから昼休みに図書室に行こう。」
「あぁ、いいぞ。」
青山はマンガも小説も読む。本は全般が好きらしい。前に行ってみたい所はどこかという話になった時、大体の奴が観光地だったのに青山は国立国会図書館と答えていた。本の虫らしい。
グダグダ言っていたら本鈴が鳴った。しばらくして先生が教科書を持って現れ、授業が始まった。しかし、5分程してから俺の理性は睡魔と戦争を始めた。
理性は最初優勢だったが教師の説明は睡魔への援護射撃以外の何物でもなく理性は徐々に追い詰められた。そこから頑張って打ち勝つのが普通だろう、だが睡魔と戦うのが面倒になった俺は無条件降伏を決め、机に体を預けると我が物顔で脳内を蹂躙する睡魔を受け入れ、深い眠りの海へと沈んでいった。
 気がつくと午前の授業は終わっていた。誰も起こしてくれないとは…中々ひどいじゃないか。弁当を片手にニコニコしながら俺の机に歩み寄る青山を軽く無視しつつ俺は昼飯のパンに齧りついた。
「ジュンすげぇ寝てたな。昨日夜更かしでもしたのか?」
昨日…というか今日寝たのはそこまで遅くない日付は変わっていたがそれでも1時にはなっていなかった。
「授業って眠くなるもんだろ?」
「興味ない授業なら眠くなるかな」
ちなみに午前中一発目の授業は古典で俺が興味ない授業の5本指に入る授業だった…古典なんてどこで使うんだよ。
「図書室行かねぇのか?」
「食うの早いよ。先行ってて。」
パン食の俺は弁当の青山より早く食い終わり、弁当を食べる青山を見ていても仕方ないので図書室へ向かった。
 昼休みにもかかわらず図書室には全く生徒がいない、いるのはカウンターの奥にいる図書当番の女子だけだ。当番の生徒は誰か来るとは思っていなかったのだろう慌てて読んでいた本を鞄へ投げ入れ当番の仕事へ戻った。
何の本だったんだ?
「なぁ、さっきの本て何?」
女子生徒が顔を上げた…知った顔だ…
昨日の会議で1番目立っていた女子:須藤だ。
「何のことですか?」
須藤はそんな事知らないというようにシラを切るつもりらしい。隠されては余計気になるのが人の心理というものだ。
「鞄の中に入れてただろ?別にマンガだったからどうこうするわけじゃないし、いいじゃないか」
すると須藤は観念したのか鞄から一冊の本を取り出した。
『CAT SHIT ONE』
ウサギのキャラクターが表紙の本だ。
マンガなのか?
「あの…没収ですか?」
恐る恐る須藤が訊く。没収されたらホントに嫌なんだろう、「没収!」って言ったら泣きだしそうだ。
「そんなことしねぇよ。ところで、これはどんな話?おもしろい?」
俺がこの本について訊くと目を輝かせ説明し始める。
「この本は『小林源文』先生が描いた動物劇画です。舞台はヴェトナム戦争でキャラは可愛いのにやること容赦なくて最高に面白いですよ!」
…なるほど。須藤は俗に言うオタクという人種なんだな、よく分かった。
マンガを俺に手渡すと「さぁ、読め!」といった感じの視線を送る。昨日の北条のナイフのような視線よりも数段マシだがこのプレッシャーは嫌だ。もうヤダ、おウチ帰る。
「ジュ~ン。お待たせ~」
俺は天孫降臨でも見たような気分になった。
これほどまでに青山のアホ面を見て嬉しかったことはない。
「ほら、この本…そのマンガは?『キャット・シット・ワン』?」
「借りた」
「へぇ~…じゃあ俺は向こうでいつもの読んでるから」
青山はそう言うとさっさと図書室の奥へと言ってしまった。必然的にここには俺と須藤が残り、俺の手元には2冊のマンガがある…とりあえず須藤に借りたほうから読むことにした。

……
けっこう面白いな。なんだろう…続きが気になる。
「ありがとう。面白かったよ」
カウンターの奥で別の小説を読んでいた須藤は俺の「面白かった」発言でメガネの奥の黒い瞳を輝かせた。
「ホントですか!?じゃあ今度他のも持ってきますね!」
よほど嬉しかったのか小躍りでもしそうだ。
ちなみにどこの高校でもそうだと思うがマンガは持って来てはいけない、大半の生徒は教師の目を盗んで持ってきているが。
「あんまり堂々と持って来るなよ。一応校則違反なんだからな。」
「…はい」
さっきまでのテンションはどこへやら、途端に表情が曇る。だがこれは仕方ないだろう、副会長が校則違反しろとは言えないし、何かの拍子に火の粉が降りかかって来るのは御免だ。
須藤はがっかりした表情で小説へと目を戻した。メガネケースを取り出すと迷彩柄のメガネ拭きでレンズを丁寧に磨く。…てか迷彩のメガネ拭きってすげぇな。
「?…どうしました?」
「迷彩のメガネ拭きって珍しいな」
俺が不思議がっている理由が分からないのかキョトンとした表情で俺の顔とメガネ拭きを交互に見た。
「そんなに珍しいですか?陸上自衛隊の迷彩Ⅱ型なんですけど」
…知るか!自衛隊の迷彩なんぞ知っとる訳無かろう!
「ハアァァァァ?日本人のくせに自衛隊に興味が無いぃぃぃ?」
「興味無いだろ。普通」
「この平和ボケのバカ学生が!アタシが教育してあげましょう!放課後図書館に来なさい。絶対ですよ!」
あれぇ?キャラ変わってませんか?
…てか放課後は会議だな。うん 無理だな。ヨッシャァ!
「会議に出なきゃならん。放課後は無理だ。」
「会議が終わってから来なさい!」
何てこった。ただでさえ少ない貴重な放課後なのにそんなことに使わせてたまるか!
でもそんなこと言ったら須藤はキレるかもしれない。
「せめて…せめて週一に」
「Nein!!!毎日。その平和ボケた精神を叩き直してあげるわ。感謝しなさい。」
はて?感謝しろと?誰に?
俺の勘違いでなければ感謝しなければいけない相手はここにはいないような気がするがどうだろうか?
「じゃあ今日の会議が終わったら来てね」
須藤が言い終わると同時に予鈴が鳴った。どうやら集中してマンガを読んでいたので時間の経過に気がつかなかったらしい。何だろう…ものすごく無駄な時間を過ごした気がするのは気のせいだろうか…
本鈴が1月の凍るような冷たい空気を震わせながらゆっくりと流れた。

……
午後からの授業は午前中に寝たからばっちりだ。板書もしたし先生の話も聞いた。
後は…会議だけだ。
会議室に行くと北条がもういた。他の役員はまだのようだ。
「あ、高島くん…」
資料を各席に配りながら言った。
…俺は北条の席に置いてあった配っていない資料の紙束を手に取り配ることにした。出来レースとはいえ副会長なんだからそれぐらいの仕事はしないとな。
「今日は…卒業式について?」
「はい。主に送辞や他の在校生が関する事を決めます」
へぇー
生徒会が決めてたのか。まったく知らなかったな。それぐらい生徒会には興味が無かった…いや、今もそこまで興味は無い。

……
会議は特筆すべきことも無かった。
大体、副会長は飾りみたいなもんだ。ほとんど北条が議事をサクサクと進め早めに終わった。
…会議は終わった。本来ならここで帰宅するわけだが呼び出されている。
帰りたいな…
そんなことを思いながら会議室を出た。
「た、高島君」
後ろから俺を呼ぶ声が聞こえた。書記や会計などの役員はさっさと帰ってしまったので会議室には俺と北条の二人だけだ。
「あの…高島君。この後予定あるかな?無かったら話がしたいんだけど…」
予定か…
須藤に呼び出されているのは予定何だろうか?
多分すっぽかしたら須藤は怒るだろう、だが正直行きたくない。面倒だし嫌な予感がしてならない。
どうしようか…
北条にしても何か嫌な予感がするのは気のせいでは無いだろう。
さてどうする?どうするよ俺
 北条と会議室で二人っきりでお話し
 須藤と図書室で二人っきりでお話し
どっちもどっちだな…
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