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春の章 第一話「全ての始まり」


春は出逢いと別れの季節だと言われる、僕はこんなに一度に出逢いと別れのをするとは思わなかった。


2010年 3月26日 金曜日
09時46分 市道

━なんだこれは━
現在、視界の半分が黒く、半分赤く濁っている 何かあったらしいがよく分からない。
起き上がらないと、と思ったが体が動かないし、声を出そうにも口が動かない。

周りが騒がしくなってきた、でも何を言っているのか全く分からない。

僕はアルバイトに行こうとしていたんじゃなかったかな?確か珍しく寝坊して…

その時、はっきりとした声で「もう大丈夫、ゆっくり寝ていいよ。」と聞こえた。
そうか、これは夢なのか、じゃあ寝てもいいな。早く起きてバイトに行かないと━━━
そう思った刹那、体が突然軽くなった、と同時に上半身だけ起き上る。
視界は回復している、が騒がしい声は聞き取れない。視界の端に何か黒いモノが
映ったので目を向けると、黒いスーツを着た少女がいた。
「落ち着いてよく聴いて下さい」
今度もはっきりと聞こえた。
この少女はさっきの「寝ていい」という声の主のようだ。
「残念ながらアナタは今しがた亡くなりました。これから冥界に逝く準備をしなければなりません。」
少女は訳の分からないことをさらりと言う。
  
少女はさらに
「クスノキ ユウイチ君ですね?」
何で僕の名前を知っているんだろう、しかも年上に君づけかよ…
とりあえず頷く
「…OK、じゃあ説明をはじめます…あっ、私の名前を教えていませんでしたね。
私は藍坂雛、冥界の案内人です。」
あまりに意味が分からないので口を開けて喋るという行為を忘れていた。
「ちょっと待って?何の冗談?大体僕の名前何で知ってんの?いくら子供でも怒るよ!?」
僕は立ち上がりながら少し興奮気味に言った。
藍坂は少し不機嫌そうに
「全くコレだから事故死は… いいですか?アナタは先ほど交通事故で亡くなりました━━━」
と言い終わらない内に僕は喋る。
「嘘つくなよ!僕はこうして生きてるし…」
藍坂は僕の足元を指さしながら
「じゃあ足元の遺体は誰かしら?」
足元を見ると、見るも無惨な死体が転がっていた。
その死体の着ている服はこれでもかという程血まみれだが僕の服とよく似ている、顔も血まみれで分かりにくいがこれまた似ている。
「コレは僕か?」
自分でも聞き取れるか分からないほど小さい声だった
しかし藍坂は全て理解したようにゆっくり頷き
「アナタは冥法第26条により寿命を迎えた為亡くなりました。よってアナタの魂
は転生の準備のために閻魔大王の裁きを受け冥界に送られます」
突然説明を始めたが、まだ納得出来る筈がない。これがドッキリカメラだとしたら名演技にも程がある、そんなことを考えていたが、藍坂は説明を続けている。
「冥法第42条により寿命を迎えた肉体と魂は切り離さなければならない 案内人は
迅速に魂の切り離しを執行しなければならない」
と言い終わると同時に手首のアクセサリーに何かよく分からない言葉をかけると
アクセサリーはデスサイズになり僕目掛けて投げつけた。
回避も防御も出来ずデスサイズの鈍く光る刃は僕の身体を突き破り、ブチッという切れてはいけないモノが切れたような音がした。
すると藍坂は柄についた鎖を思いっきり引いてデスサイズを手元に戻した。
デスサイズは元のアクセサリーに戻った。
藍坂は元に戻るのを確認すると一言発した。
「執行完了…」と━━
ちょうど救急車が到着し僕の身体を担架に載せるところだった。
「いきなり執行して申し訳ありません。ですが早めに切り離さないと…肉体が先に無くなると魂は…」
藍坂の声は段々と小さくなっていく、僕には言い訳にしか聞こえなかった、しかし今ので僕が死んでいることが分かった。
鎌が刺さったにもかかわらず体に穴すら空いていないからだ。(それに救急隊員の反応をみれば演技でないことがよくわかる)
「いいよ、僕が死んだことはよく分かった。でも何で君は僕の名前を知ってるんだ?」
僕の言葉に驚いてもいない、恐らく訊かれたりするのだろう。
「冥界は死者がでる2時間前を基準にその死者の詳細を送ってきます、だからアナタの名前が分かったんです」
なるほど、冥界には死者を管理する組織があるらしい。
もう、こうなった以上信用するしかないだろう?
「僕は具体的に今から何をすればいいんだ?」
「通夜から葬儀までにの間遺体の傍に座っておいて下さい、でもまだ特にする事は無いですよ」
藍坂はにこりと微笑みながら言った。

とりあえず歩こう
死んでしまったけど歩こう
出来る限りのことをして早く転生しないと
「…で、何処に行けばいいのかな?」
「家に帰りましょう」

第1話 終

第2話に続く
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