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攻撃ヘリコプターが低空で砂塵を撒き散らしながら急速に接近する
ミニガンを乱射しバタバタと兵士たちを薙ぎ倒し、塹壕という塹壕にロケットをぶち込み生身の人間をバラバラにしていった

「…小隊……大…夫…で…」
「アックス小隊長!」

鼻が曲がりそうな硝煙と人の焼ける臭い
負傷した兵士の呻き声
戦場特有の不快感が充満している
目を覚ましたアックス少尉は事態を飲み込もうと起き上がろうとした

「小隊長ダメです!頭を打たれてます!」
「じっとしてなよ、小隊長さん」

小柄の女性兵士…ヒノモトとセールプが起き上がろうとするのを無理やり止める
2人ともヘルメットと迷彩服を砂漠用に施しているが先ほどの攻撃で砂をマトモに被り頭から砂まみれになっていた


アックス少尉らの小隊は密林の基地からヘリコプターで北に1時間ほど行った砂漠の前線基地で警戒活動するように命令された
その砂漠は相手国との間に広がる広大な砂漠で相手国の侵入を防いでいたのだが雨期に入り密林戦が厳しくなったので砂漠へと戦場が変わったのだ
アックス少尉らは砂漠に到着直後、ヘリに襲われ現在に至る訳だ

「チクショウ…ヘリは?撃墜したか?」
「防御がやっとだよ、アンタは最初のロケット攻撃で塹壕の壁に叩きつけられて気絶したのさ」
「小隊長サン!大丈夫!?」

続々とアックス少尉の部下が集まる
涙目だったり憐れむような目だったり様々だ

「小隊長、すぐに衛生兵が来ます。この塹壕から少し行ったら野戦病院があるので搬送してもらいます」
「くそっ…モーロトお前指揮執れ。1人も死なすなよ」
「了解」

しばらくしてアックス少尉は小太りの衛生兵2人に担架で運ばれて行く
彼女らはそれをただじっと見送った

「さぁて、行こうか」
「ねぇモーロト、アナタ小隊長代理になるの?」

モーロトのすぐ右にいたグリム・リーパーが言った
グリムもヒノモト同様に砂まみれになっており、綺麗なブロンドの髪も砂まみれでボサボサになってしまっている

「そうだけど何?」
「いや…何でもない。無茶な命令はしないでよ?」
「わかってる」

そう言うとモーロトは自らの銃のコッキングレバーを引き初弾を薬室に装填し「誰も死なせない」ヘリの襲撃で散った兵士たちが運ばれるのを見ながらボソッと呟いた


『モーロト!戦車ダ!その後ろに兵員輸送車ト戦闘装甲車!』
「迎撃用意!シンツン下がって」
『何デ!?』
「そこじゃ敵弾が集中する、死ぬよ」
『モーロトさん!ヘリ4機接近!モーロトさんから10時の方向!』
「スティンガー!急いで!」

敵接近の一報はモーロトへと飛び込み、すぐに対応する
接近しているのはヘリコプター、戦車、装甲車だ
戦車と装甲車はモーロトたちの相手ではないが問題はヘリだ
モーロトが考えた作戦は彼女らが戦車を叩き、普通の兵士たちが対空火器でヘリを落とすという内容で、すぐに兵士たちに伝わった
兵士たちは対空ミサイル、対物ライフル、車載機銃で迎え撃つ準備を始める

「ヘリは任せろ。戦車は頼んだぞ」

通りすがりの兵士に肩を叩かれた
モーロトは兵士に向かって親指をグッと掲げる
日に焼けて真っ黒になった肌と相反して真っ白の歯を見せ兵士はニッと笑った

「セールプ!戦車は?」

頭を切り替え戦場へと視線を戻す

『本隊の射程まで5キロ』
「偵察ポイントを放棄、本隊に合流しなさい」
『は~い、了解』

セールプとシンツンは塹壕から3km先の偵察ポイントで歩哨に立っていた
最初、モーロトが敵弾が集中する と言っていたのはこの為だ

「ヒノモト、塹壕に戻りなさい。レーダーは別の人に引き継いでもらって、アナタは戦車を迎撃」
『了解』
『何かモーロトの口調違う。張り切ってる?』
『何かお姉さんっぽいナ、どうシタ小隊長代理?緊張か?』

シンツンとセールプがケラケラと笑うのが無線から聴こえた
グリムは注意しようかと思ったが面白そうだから止めた、すぐにモーロトの怒鳴り声が聴こえたからだ

「2人とも無駄口叩いてないで駆け足!!5分で戻って来なかったら砲撃する!!」
『5分!?無理無理無理!!』
『セールプ!走ろウ!モーロトなら撃ってくるヨ』
「ホラホラ走ったらヘリと戦車に見付かるよぉ~」

ニコニコしながら自らの砲を戦車が接近する方向へと向けた
それはシンツンたちのいる方向でもある

「シンツン、そこからMBTを狙える?」
『グリムか?もちろん狙えるヨ。何で?』
「装甲車や人体はワタシラの砲で破壊出来るけど重装甲の主力戦車は撃った事が無いなぁって思ったから」
『確か二…モーロト、撃ってもいいカ?』

モーロトは頬を赤めながら砲を構えてウットリしていたがシンツンからの無線でハッと正気に返った

「破壊出来なかったらどうする?」
「足を狙うんですよ」

ヒノモトが塹壕に滑り込んだ
同時に砂も塹壕に落ちてくる
ロケット攻撃でメガネがいがんでいるのか仕切りにメガネを確認している
よく見ると、ヒビがいっているではないか

「シンツンさん、足まわりを攻撃して下さい。APFSDSで足撃てば行動不能に出来ます」
『わかっタ、やってみるヨ』
「セールプさんは戦車の砲かペリスコープを攻撃して下さい」
『任された』

ヒノモトの指示は的確だった
シンツンは戦車の履帯を粉砕しセールプは砲口へ弾を打ち込み誘爆させる
戦車の砲塔が火を吹きながら空中へと吹き飛んだ

「やった!撃破!」
『スゴイヨ、ヒノモト!』
『他のも殺っちまおう』
「モーロト、あんたの役取られちゃったねぇ」
「……別にいいよ、やっつけたし」

モーロトは燃え盛る戦車を見ながら言った
グリムには嫌な予感がした
只、突撃するだけなら誰でも出来る
ヘリはこちらの対空火器で苦戦しているのに戦車だけで突撃する訳ない
何か秘策でも無いと無意味に人を殺すだけである

『次の戦車はどれにしようカナ』
『全部、T-62だ。アタイより性能上じゃない』

セールプ達は談笑している
恐らくかなり余裕なんだろう
しかし、戦場で談笑などする余裕はない

バシュッ!バシュッ!
戦車と装甲車が発煙筒を発射する音だ
爆竹のような音が直後に響き戦車たちを煙が覆う

「煙幕?」
「マズい!セールプ!シンツン!退避!」
『何だよモーロト。大丈夫だよ、只の煙幕だろ?』
『晴れるまで待機ネ』
「アンタ達の位置がバレたんだ!急いで逃―」

煙幕の中から煙を裂いて榴弾が一斉に飛び出してきた
煙を飛び越すように迫撃砲弾も飛翔する
シンツンらが居る場所に爆煙と火花が散り炎が上がった

「シンツン!セールプ!」
「うそ…」
「偵察ポイント、こちらはリッターオルデン応答せよ。応答せよ」

無線は空しくノイズを流した

「グリム、ここ任せた」
「え?ちょ、ちょっと!危ないから!」
「シンツンたちを退かせる事が出来なかったのは私の責任だから」

そう言うとモーロトは塹壕を飛び出した
乾いた砂を蹴り、前だけを見つめ走った

「ヒノモト、シンツンたちに無線を送り続けて。リッターはアタシとモーロトを援護」
「りょ、了解」
「ヤポール」

最強の戦車、M1戦車をモデルにしたグリムは隊の中でも最も優秀な成績を誇る
30mm滑腔砲を構え照準を絞る…戦車はまだ煙幕に隠れており見えない
モーロトも砂塵で見えなくなった

「ヒノモト…無線は?」
「応答せず……スイマセン…私が攻撃を指示したから敵に見つかって」
「Shut up!誰もそんな事訊いてない!」
「グリム…照準が…つけられなくてさ…ヒノモト、ごめん代わって…私が無線するよ」

砂にまみれた帽子を脱ぎ塹壕内に崩れ落ちた
リッターオルデンは目を真っ赤にし砂まみれの袖で顔を拭く

「リッター!無線するならシンツンたちに連絡して!早く!」
「ヤー…シンツン、こちらはリッターオルデン…応答を…応答」
『こちらモーロト!』
「モーロト!?シンツンたちは!?」
『…何とか……生きてるよ』

何とか生きていた
モーロトの連絡は彼女ら…特にグリムの胸をなで下ろした

『ただ…』
「どうしたの」
『その…損傷が激しくて下手に動かせないのよ』
「……それで?」
『だから…私が戦車を攻撃してる間に装甲車か何かで救出して欲しい』

モーロトの言いたかった事をグリムは予想出来た
だが納得は出来ない 出来る筈がない

「それで、死ぬつもりなの?」
『我が命、砂塵に消えようとも兵器としての本懐を遂げられ―』
『コノヤロー…好き勝手言いやがって…アタイは動けるから…援護だけしろよ』
『…イタタ…私も動けるヨ…モーロトはしんがりをしてヨ』

セールプとシンツンだ
損傷が激しいと言っていたがどういう状態か分からない
しかし、無線を聞く限りではいつもとあまり変わらない気がする

『第1実験小隊の皆さーん!聞こえますか~?』

今の雰囲気に似つかわしく無い緊張感の全く無い声が無線から響いた
全員が呆気に取られ無線へと耳を傾ける

『こちらは~第2実験小隊です~。そちらが苦戦中との報告があった為~支援に参りました~。方位106を見て下さ~い』

指示された方位にはヘリコプターというより人が飛んでいる
距離はグリムの砲がギリギリ届く距離だ
グリムは安全装置を外し砲を構える

「こちらは第1実験小隊のグリム・リーパーだ。第2実験小隊なんて聞いた事がない。味方ならあの戦車共を蹴散らせ」
『今日編成されたチームなんですよ。では…メリー1から各機へロックンロール!』
『了解!』

一気に速度を倍化させ第2実験小隊を名乗る者たちはグリムらの上空を掠めるように飛行していく
彼女らは背中にヘリコプターのようなプロペラを背負い右手にバカデカい武器を持っている
先頭を飛ぶ兵隊はグリムを見つけると手を振った
しかしグリムは砲を構えたまま彼女らを見送る

『メリー1からアイアンメイデンへ、前線の敵を攻撃する。頭を低くし防御せよ』
「アイアンメイデンってそんなに知れ渡っているの?」
「さぁ…今はどうでもいいよ」

『メリー1から各機へ!ファイア!』
『了解!』

彼女らの右手からオレンジ色の光が飛んだ
彼女らは連続して光を出し続け、煙幕を晴らすようにトリッキーに飛行する
煙幕が晴れていく
爆発が起こった
少し後方の兵員輸送車が火を吹いて黒煙を上げ、兵隊が逃げ惑う

「グリムさん、今突撃したら勝てませんか?」
「そうね…勝てる…グリム・リーパーからメリー1へ、直接支援する。気を付けて」
『了解、直接支援感謝します。頑張って』
『こちらモーロト、本隊を支援する』

塹壕から飛び出したグリム、リッター、ヒノモトの3人は盾を押し出し一気に駆けた
シンツンたちの場所まで一気に走る

……

「シンツン!セールプ!」
「グリム?どうしたの血相変えて」
「だって損傷が激しいってモーロトが言ってたじゃない」
「まぁネ、ワタシは脚が動かないシ、セールプは盾と脚にヒビがいっちゃっタ」

確かにセールプやシンツンの損傷箇所は黒焦げになっていて火花を稀に飛ばしている

「せっかく直してもらったのニ…また保健室に逆戻りだヨ」
「保健室って痛い?アタイ保健室初めてだからさ」
「装甲を神経に繋ぐのが気持ち悪いんだヨ。こう…背筋がゾワゾワッてする感じカナ」

そう言うとシンツンはセールプの首筋を人差し指でなぞった
「ヒャン!」
セールプの首筋をゾワゾワッとした感覚が走る
思わず声が出てしまい、その場にいた全員がセールプを凝視した

「セールプ…こんな戦場デ…」
「ち、違うよ!シンツンが触ったから!」
「ちちくりあってる場合じゃないよ」
『アイアンメイデン!支援射撃始め!』

突然無線に男の声が飛び込んだ
彼女らは反射的に砲を構え照準を合わせた
みんな声を聞いた瞬間に声の主が分かり指示に従う

『ファイア!』

一斉に砲が火を吹き、兵員輸送車を吹き飛ばした、逃げ惑う歩兵を榴弾と第2実験小隊の銃弾が襲う
戦車は既に黒焦げで焼けただれ攻撃してきそうに無い

『動けるヤツは敵の掃討に向かえ!突撃!』
「了解!」

モーロトが真っ先に飛び出した
続いてリッター、グリム、ヒノモトの順番だ
動けないシンツンたちは塹壕の方から土煙を巻き上げて接近するトラックを見た
砂漠を飛ぶように走るトラックはバウンドの度に凄まじく揺れ、こけるのではないかとハラハラさせてくれる

『シンツンとセールプはトラックに乗れよ、すぐに保健室に連れて行くからな』
「了解シタ」
「小隊長、お腹すいたな~。ご飯食べたいな~」
「バカ言ってないでサッサと乗れ」

シンツンたちの真横に止まったトラックから降りて来たのは、最初の攻撃で後退した筈のアックス少尉だった
いつもと同じようにヘルメットをかぶり、愛銃のM-16を持ちトラックから飛び下りた

「俺は今から前線の支援に行くから、お前らは戻ってろ」
「小隊長~、ご飯~」
「保健室が先だ、中隊長にメシは頼んどくから」

満面の笑みでトラックに乗り込んだセールプと対照的にシンツンは俯いている
足を引きずり辛そうに歩く

「どうしたシンツン、元気ねぇな」
「また脚壊しちゃっテ…軍団長に怒られ―」
「る訳ないだろ、戦闘で壊れたんなら仕方ないからな。もし文句つけてくるヤツがいたら俺がシバいてやる」

アックス少尉はニッと白い歯を見せて微笑む、シンツンに肩を貸してやりトラックの荷台へと乗せた
「頼んだ」
荷台にのる整備兵に敬礼しトラックを見送る
そして、自らはモーロトたちの所へ走って行った


榴弾が敵の偵察車をぶっ飛ばした
空中高く車体が舞い上がり破片を撒き散らす
偵察車が地面に叩きつけられ、爆発すると敵の士気は一段と落ちた。唯一無傷だった車両が爆発したのだから無理はない
敵兵が焼け焦げた装甲車の影から両手を頭の上に置いてゾロゾロと出てくる

「ダワイ!ダワイ!」
「…グリムさん、モーロトさんは何て言ってるんですか?」
「あれ?あれは『急げ』って言ってんのよ」
「へぇ~、ロシア語ですか」
「そ、ロシア語」

砂塵を撒き散らして第2実験小隊の3人が降りて来た
右手にバルカン砲、もしくはチェーンガンを持ち、腰のスタブウィングにはロケ
ットランチャーと対地ミサイルを装備している

「ふぇ~…やっぱり実戦と訓練は違うねぇ……あ、改めてメリー1こと第2実験小隊のヒバリです。こっちがメリー2のハチドリ、メリー3のカワセミです」
「よろしくヒバリ、私はグリム・リーパー…グリムと呼んで」
「よろしく、グリム」

2人は握手をする
ヒバリはニコニコ笑顔でグリムは今できる精一杯の笑顔で手を取った

ようやく到着したアックス少尉の話によると第2実験小隊は攻撃ヘリコプターがモデルで第1実験小隊と共同で作戦を行うらしい
しかもアックス少尉が第1実験小隊と第2実験小隊の隊長を兼任することも教えられた

「じゃあ、命令系統とかはどうするんですか?」
「それなんだよ。だから形的には二個小隊なんだけど、実際はひとまとめにして分隊を編成、第1分隊をモーロトたち、第2分隊をヒバリたちってな感じにすれば楽かなって思ったんだがな」

なるほど とヒノモトは手を叩いた
他の彼女らも納得したようだ

「とりあえず基地に帰るぞ。ヒバリたちは先に帰ってろ、連隊長の話があるらしいから」
『了解』

ヒバリたちはビシッと敬礼する
背中のローターがゆっくりと徐々に早く回転し、砂塵を舞い上げる、若干フラつきながらも体を浮き上がらせ、基地の方角へと飛び去って行った
砂塵が目に入らないようグリムたちは防御しつつそれを眺めた

「小隊長、捕虜の集合終わりました」
「よし、よくやった。もうすぐトラックが来るはずだからそれまで待機な」
『了解』

アックス少尉には見えないが彼女らには微かに見えた
砂塵をぶちまけて疾走するトラックが


砂漠での初戦は何とか勝利を得た
しかし、ヒバリたち第2実験小隊の支援が無ければどうなっていたか分からない
シンツンたちは負傷で済んだが、もしかしたら死んでいたかもしれなかった
限りなく敗北に近い勝利である


「小隊長」
「なんだグリム」
「…いえ、すいません。何もないです」

はっきりとトラックが見えた
トラックは3台
助手席にシンツンとセールプが見えた
グリムはそのことを言おうかと思ったがやめた
アックス少尉には怪訝な顔をされたがすぐに気付くだろう
ヘルメットを地面に置きその上に座った
バランスをとるのが難しいがしばらくの辛抱だ、あのトラックが到着するまでの辛抱だ

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