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鬱蒼とした密林に複数の人影が見える
異様に大きい銃は背丈程もあるのだが誰一人として重そうにしていない
先頭を歩くのはアックス少尉
彼だけがこの小隊で一人だけの男性であり唯一の人間である

「各員集合」
『ヤーッ』
「ここで大休止をとる、まず俺とリッター・オルデンで見張るから交代までゆっくり休め」
『ヤーッ』
「ではリッター、行くぞ」
「ヤーッ ヘル、コマンダー」

リッターオルデンは対物狙撃銃よりも大きい銃を軽々と持ち上げると木の根っこを飛び越えアックス少尉の後ろへ付いた

「リッター、お前はアッチだ。しっかり見張れ、何かあったら直ぐ無線で知らせ」
「ヤーッ。小隊長の反対側を見張り、異常の場合は無線で指示を仰ぎます!」

リッターオルデンは敬礼をしながら言った
完璧な返答である

さて、アックス少尉は唯一の人間と言ったがまさしくその通りだ
リッターオルデンや他の兵隊は歩兵化戦車と呼ばれる兵器である
戦車並みの攻撃力、歩兵並みの機動力を有する兵器で巨大な銃はそのためだ
左手に盾を持ち、形状が各自がモデルになった戦車の砲塔が模され、敵軍からは「悪魔」と呼ばれ恐れられている

アックス少尉が配置に着くのとほぼ同時に無線がノイズを発しながらリッターの声を流した

『こちらはリッターオルデンです。配置に着きました』
「了解、交代まで見張れ」
『ヤーッ』

普通の人間であるアックス少尉は士官学校を出た直後に設立したばっかりのこの第1実験小隊に配属された
意気揚々と配属先に行ってみると居るのは女の子ばかり
小隊長と聴いていた彼は酷く落胆し上官に転属願を提出しようとしたが受理されず渋々訓練を開始した
すると彼女らは人間とは思えない(人間ではないのだが)成績を納め関係者を驚嘆させアックス少尉自身も驚嘆した
それ以来彼は第1実験小隊の小隊長として働いるのである

今回の彼女らは敵状視察が目的だ
勢力範囲境界線の状態を探る為に行動中である

アックス少尉の無線が鳴った
呼び出し音がイヤフォンから聴こえ受信ボタンを押す

『小隊長、正体不明の人影が複数接近してます。撃ちますか?』
「バカ撃つな。対象の確認急げ」

何故か彼女らは直ぐに発砲しようとする
兵器だからなのか分からないがとにかく喧嘩っ早い

アックス少尉は無線で大休止している彼女らの1人に連絡することにした

「モーロト、リッターオルデンの所に行け」
『敵ですか?』
「分からん、とにかく行け。ヒノモトも連れてけ」
『ダーッ!』

連絡を終えると自らもリッターの所へ向かおうと思ったがその前に彼女らが大休止している所へ向かった
雨が降ったせいか地面がぬかるんでいる
アックス少尉は木の根に生えた苔を踏んで転けそうになったが何とか無事に彼女らが大休止をしている場所着いた
休止を取り止め警戒するようにアックス少尉が命令を出す
彼女らは目を輝かせその命令を受けた

『小隊長、モーロトです。リッターオルデンに合流しました』
「対象はどうだ?」
『敵だと思います』
「バカ、思いますはヤメロ。きちんと調べろ」
『ダーッ』

モーロトは優れた歩兵化戦車だ
訓練成績はかなりのモノでロシアのT-80をベースに開発されただけはある
しかし隊の中でも一番喧嘩っ早いのが玉にキズだ

「俺達はシンツンをしんがりにしてモーロト達に合流する。セールプはLZ1確保に行け、途中の障害があった場合排除しろ」
「了解」

小柄のセールプは似つかわしくない無骨な銃を持つと中腰に走り出した
アックス少尉を先頭に3つの影が密林を歩いていく

「グリム、見えるか?」
「見えませんね、リッターたちも見えません」
「そうか。シンツン後方はどうだ?」
「異常はなしネ」
「よし、しっかり見張れ」

第1実験小隊は実戦をほとんど経験していない
もちろん初めてではないが実戦といえる実戦ではなかったし小隊全員での戦闘は初めてである

「リッター、場所が分からん。手は挙げれるか?」
『了解、リッターオルデン現在地!』

密林の草むらから手が伸びた

「よし、見えた。グリムは前へ、シンツンはモーロト達へ合流」
「了解シタ」
「ROG」

アックス少尉とグリム…グリム・リーパーはリッターたちから10m程離れた草むらに隠れた

「対象はどこだ?」
『私たちから1時の方向200mです』

言われた方向を双眼鏡で見る
しかしまったく見えず見えるのは草と生い茂った木ばっかりだ

「くそっ、見えんな。対象の所属はどこだ?」
『ベレーのクレストを見る限り敵ですね』

先ほども言ったが彼女らは人間ではない
人間のように見えても実際はアンドロイドだ
視力は1km先のタバコの銘柄が分かるぐらいでそれを狙撃することも出来る

「こんな所に歩兵だけが来るのはおかしい、引き付けて捕虜にするぞ」

アックス少尉は捕虜にすると言った
しかしシンツンが不服の表情を見せた

「…なんだよ」
『少尉サン、敵は殺すべきだヨ』
「ほぅ、シンツン…その理由を述べろ」
『やっぱりネ、敵なんだしサ。殺してもいいと思うんだヨ。生きてたらウルサイしネ』

シンツンが言いたいのは捕虜にして騒がれるより殺したほうが手っ取り早いとい
うことだ
アックス少尉はシンツンが言わんとする事は分かったが納得は出来ない

「シンツン…お前が銃を撃ちたいのも分かる、戦争なんだしな。でも戦争だからこそ人を殺さず戦闘するのも大事じゃないか?」
「小隊長…敵さん更に接近。増援呼んでます」
『どうせ歩兵だヨ、上からはトリプルキャノピーだからバレないネ』
「いいか?正当防衛だけだ、先制攻撃は禁止だ」
『…了解』

赤黒いベレーを被った敵兵はキョロキョロしながら歩く
彼女らを捜しているらしい

1人が何か叫んだ
どうやら頭を少し出したシンツンを見つけたようだ
自動小銃を乱射する
直後に地面や草、木の幹に弾丸が命中していく
乾いた音が響き辺りを硝煙が包んだ

『少尉サン!正当防衛していいカ!?』
「クソッ!射撃許可!射撃許可!撃った後投降勧告する、全員殺すな!」
『射撃許可確認、撃ちます』


………
……………
至近距離にいた敵兵はバラバラに吹き飛び絶命
リッターが一番遠くにいた兵隊を銃床で殴って気絶させると回収し捕虜にした
グリムとヒノモト、モーロトがボディカウントしているが生存者はリッターが回収した兵隊だけのようだ

「シンツン!お前わざと見つかったな!?」
アックス少尉はシンツンの胸ぐらを掴みながら言った

「何の事だか分からないネ」
「正当防衛をするためにわざと見つかっただろう!?」
「違うヨ。偶然ワタシが頭を上げたのが見つかっただけだヨ。少尉サン、ワタシがわざとした証拠あるノ?ワタシ戦闘嫌いだからそんな事しないヨ」
「2人とも落ち着いて下さい。無事だったからいいじゃないですか」

小柄の兵隊…ヒノモトが割って入る

「いいか?戦闘はできる限り避けろ。お前たちは強い、だから目立つ行動をすると…」
「より強力な敵に狩られる」

長身のロシア軍のヘルメットを被った兵隊…モーロトが言った
ゆっくりとこちらに近付いてくる

「シンツン、あんたはヘリコプターや攻撃機に対処出来るか?出来ないだろ、戦場では目立たないのが鉄則だ。気をつけろ」
「ナ、なんだヨ。みんなしてワタシを悪者にしテ……もういいよ!1人でLZに行くヨ!」

ヘルメットを地面に叩きつけシンツンは背を向けた
こんな密林を1人で歩くのは大変危険だ

「シンツンさん危ないですよ」
「ウルサイ!小日本のクセに!付いてきたら撃つヨ」

そう言いつつヒノモトに銃を向ける
ヒノモトはとっさに両手を上げた
しかし、シンツンは銃のコッキングレバーを引いて装填し引き金に指をかける

「シンツン止めろ!」

ヒノモト以外の全員がシンツンに銃を向けた
するとシンツンは構えを解きニッと笑った

「撃つ訳ないでショ、先にLZ1に行ってセールプに合流するヨ」

そう言うとシンツンは密林の中へ消えて行った

アックス少尉たちは殺害した兵隊たちを隠し追っ手が来る前に離脱する事にした
捕虜にさるぐつわと手錠を取り付けヘリの到着場所へと急ぐ

「小隊長…シンツンさんは…」

真後ろにいたヒノモトが話しかけてきた
ヒノモトは俯いて話す

「あの状況なら追い掛けるべきだった、だが行ってたら撃たれていた。大丈夫、アイツなら大丈夫だよ。LZに着いたらいつも通りケラケラ笑ってるさ」
「で、ですね。あんなに強い98式戦車がモデルになってますから簡単にやられる訳無いですね」

ヒノモトはまるで自分に言い聞かせるように言った


シンツンが1人でLZに向かってから20分後

シンツンは先に戦線を離脱しLZに向かっていた
わざと見つかって戦闘を引き起こしたのは自分だしその後、アックス少尉やモーロトに言われた事も理解出来る
しかし、謝る事はプライドが許さなかった

「クソ~…何で誰も付いて来なイ。あっ、ワタシが止めたからカ」

などと独り言を言っている時だった
パシュッ
何かこすれたような音がした
直後に右足に激痛が走り倒れ込んだ

「て、敵!?」

彼女らの足には装甲があり足まわりの防御している
それは重い装備でも歩く事の出来る補助の面と防御の面を持つ優れた装備だ

「クソッ 足が」

右足の装甲に穴が空きふくらはぎに弾丸が留まっている
シンツンは穴の大きさから対物狙撃銃であると判断した
辺りの茂みがガサガサと動き、カモフラージュを施した兵隊が4人現れ何か話している
1人は対物狙撃銃を持っている

「…多勢に無勢ネ……さてどうしようカナ」

兵隊たちはニタニタ笑いながらシンツンに向かって歩く、その妙な気配からシンツンはその兵隊たちが何をしようとしているのか分かった
銃を構えセイフティ外し威嚇射撃をしようとした
しかし、足の痛みで思うように照準が出来ない
兵隊たちはその隙を見逃さず跳躍すると腕を蹴られ銃を離してしまう
口を押さえられ声も出せなくなった
シンツンは後悔した
変な意地を張らずみんなと行けば良かった、と
今なら謝れるとも思った
しかしその言葉はアックス少尉たちに聴こえる事は無かった


10分程前のLZ1

彼女らを迎えに来たヘリは時間通り到着した
しかしシンツンがまだ到着していない

「まだ1人来てない!」
「もう燃料が無いんだ!すぐに出る」
「クソッ!シンツンを探しに行く!後で来いよ!?」
「分かった、連絡があればすぐに行く」

アックス少尉はヘリを降り密林へと走ろうとした

「小隊長!私も連れて行って下さい」
「あたしも行く!まだ銃撃ってない!」

ヒノモトとセールプだった
2m程上昇したヘリから飛び降り前転しながら着地した
ヘリのハッチからモーロトたちが覗いている

『小隊長、私らはどうしますか?』
「…絶対帰るから基地で全員分のメシを準備してろ」
『ROG』

ヘリは基地の方向へ飛んで行った
アックス少尉が視線をヘリから正面に戻すと目の前にヒノモトとセールプがいる

「お前ら…」
「すいません小隊長」
「何かあったなら援護が必要だと思って」

アックス少尉はため息を1つ吐くと密林に向かって歩き出した
ヒノモトたちも後に続いた


数分後

兵隊たちは抵抗するシンツンのヘルメットを外し盾を2人がかりで捨てた
シンツンの目の前にいる兵隊が軍服を脱がそうと手をかける
足は痛いし腕は複数で掴まれどうしようもない
少しずつファスナーが降りる

(いざとなったら舌を噛み切ってやる)

シンツンは前歯に舌を挟み力を込めた時だ

「AP弾装填!撃てぇ!」

突然声がしたかと思うと乾いた銃声と同時にシンツンの目の前にいた兵隊が頭から血を吹いて倒れた
兵隊たちは瞬時に銃を構えたが銃声と同時に血にまみれていく

ものの5分もしない内に兵隊たちは全滅した

「シンツン!大丈夫か!?」
「シンツンさん!怪我は!?」

アックス少尉とヒノモトだ
兵隊たちの血にまみれてシンツンは呆然としている

「大丈夫だったか?…脚を撃たれたか…ヒノモト!セールプ!」
「ハッ!」

茂みからセールプも現れた
撃てたのがそこまで嬉しかったのか満足そうに銃を持ちうっとりしている

「シンツンの装備を持ってやれ、後ヘリにLZ1に来るよう連絡しろ」
「了解」
「さてシンツン…どうした?ボケッとして」
「……少尉サン…ワタシ助かったノ?」
「何だよお前らしくねぇな。ほら、掴まれ。帰るぞ」

シンツンの右手を持ち、グッと力を入れ立ち上げさせた
アックス少尉は自らの肩を貸しシンツンの右足を庇うように歩く
右足は修理が必要らしい
このまま基地に帰って修理するのがいいとアックス少尉は判断した

「少尉サン、ゴメンナサイ」
「何が?」
「勝手な行動しテ…怪我しテ…」
「もういい、お前を止めなかった俺も悪い」
「ゴメン…ナサイ」

そう言うとシンツンは涙を流した
よほど助かったのが嬉しかったのだろう

「お前が無事で良かったからそれでいい。死なれたら困るからな」

シンツンは涙を流しながら頷く

「謝謝…小隊長…」

礼を言われたのだがシンツンが涙声だったのと中国語だっのが合わさりアックス少尉には全く分からない
しかしシンツンが自分を「小隊長」と呼んでくれた事の方がアックス少尉にとって嬉しかった

しばらくして遠くからヘリの爆音が聞こえてきた
LZまでもう少しの所まで来ている
どうやらヘリは基地に帰って燃料を補給してすぐに出発したらしい

「もうヘリが来るな。急ぐぞ」

少し早足で到着場所へと向かった

シンツンは負傷したが隊は結束が強くなった気がする
おそらくそれは気のせいではないだろう
隊のみんながそう思った

アックス少尉の真上を迎えのヘリが飛んで行くのが見える
排気熱の作った陽炎がやけに綺麗に見えた


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