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春の章 第四話「第四二管区」

2010年 3月27日 土曜日
18時32分 第二八法廷

「案内人になった方が絶対にいいです」
そう藍坂から言われたが転生出来ないのなら意味が無いじゃないか。
「案内人にならなくても特別許可を与えて浮遊霊として現世で暮らせますが」
裁判所の人は浮遊霊になることを薦める。
「選択肢はその2つだねぇ…案内人か浮遊霊か」
閻魔様…まともな選択肢が無いじゃないか。
「案内人になっても転生は出来ないんでしょう?」
いつの間にか法廷には冥界の役人と名乗る人が来ていた、その人は僕の質問にあっさり答えた。
「特別許可を出せば出来ますよ、条件がありますが」
僕は驚いて「えっ!?」という声を出してしまった。
「どうゆうことですか?」
役人は事務的に何の感情もなさそうに淡々と喋る。
「案内人はですね、死者を冥界に送ると『徳』と呼ばれる、まあ給料みたいなもんです、それを貰えます。」
なんとなく話が読めてきたぞ。
「その『徳』を集めたら転生が出来るんですか?」
役人が一瞬、笑みを浮かべた気がした。
「その通り、君の場合はね…きちんとした寿命じゃないから20万徳ぐらいかな」
ニジュウマン?
「20万徳は多すぎなんじゃ…」
藍坂が役人に文句をつけようとしたが裁判所の人に耳打ちされ
「でも20万徳は妥当ですね」
あっさり寝返った。
さて、これでこれからの選択肢は1つになり案内人になる道のみになってしまった。
「…それで…どれぐらい時間はかかるモノなんですか?」
役人は少し考えてから、やはり事務的に答えた。
「1年で1万徳ぐらいなんで頑張れは20年ぐらいですかね」
まあそれはアナタ次第ですけどね ━そう言うと役人はフテキな笑みを浮かべたがすぐに元の顔に戻った。
「楠木君は案内人でいいんだね?」
おそらく最後の確認なんだろう、閻魔大王は覗きこむように聞いてきた。
「はい…大体それしか選択肢が━━」
と言い終わらぬうちに閻魔大王は判決を言い始めた。
「よろしい…では俗名『楠木 祐一』の判決を伝える!被告人は無期限の案内人を命ずる!但し20万徳を裁判所に納め次第転生の許可を与えるものとする!被告人の所属は第四二管区にする」
では以上で閉廷━━の一言で皆が閻魔大王に礼をした。
「では、我が第四二管区隊に案内します、付いて来て下さい楠木新隊員」
既に、藍坂の部下になっている…
これでいいのか?

2010年 3月27日 土曜日
20時34分 第四二管区隊舎

隊舎の中には奥の机に1人と手前の机に2人いた。
「区隊長!第一小隊小隊長『藍坂 雛』只今、新隊員『楠木 祐一』と共に戻りました!」
区隊長と呼ばれた男はゆっくりとこっちを向いて喋った。
「はい、帰還を確認しました。あ~っと楠木君ちょっと来て」
呼ばれた僕は区隊長の方に歩く。
「どうも、着任ご苦労様。君の事は閻魔に聞いたからね、この度は大変残念でしたね…まあ頑張ってね」
区隊長は穏やかな話し方で話す。
「区隊の説明でもしようかな、まず君が在籍しているのは第四二管区隊。東京郊外の約10キロ四方を担当する管区だよ。我が管区には2個小隊あって君は藍坂君の第一小隊、もう1つはそこにいる厳つい人の第二小隊があるんだ。後は…此処は隊舎の待機所、出動命令を待つ間待機する場所だ、奥には個人の部屋があってその奥には売店もあるから。…後は藍坂君に聞いてね…あっと、忘れてた、僕はこの区隊を預かる原田です。」
よろしく、と握手したあと区隊長は書類読みに戻ってしまった。
振り向くと厳つい人が手招きしている、少し迷ったが行かざるえない。
その人は見るからにヤクザで懐からドスかトカレフが出てきそうだ。
「君が楠木君か…俺は第二小隊小隊長『樫山 賢吾』だ、まあよろしく」
普通だった。
「よ、よろしくお願いします!楠木祐一です!」
はっはっはっは、と樫山は笑うと
「元気があって大変宜しい!あっとそうだ、姫野!ちょっと来い!」
姫野と呼ばれた人は間発を入れずに返した。
「了解、カシ君」
一瞬樫山が怖い顔をした。
「こいつは『姫野 桜花』第二小隊の隊員をやってる。まあ俺の部下だ」
姫野は笑みを浮かべると右手で挙手の礼をしながら話した。
姫野は藍坂とは違い大人の女性という見た目だ、いろんな所が藍坂とは違いハイスペックだ。
「初めまして。私は『姫野 桜花』第二小隊の隊員をやってます、楠木祐一君だね?じゃあ名前の祐一からとってユウ君かな」
よろしくユウ君!
ユウ君…ずいぶん前に誰かに言われた気がするな…
しかし、早速アダ名が決まり打ち解けた感があるが僕はまだ死装束のままだし仕事の内容を聞いていない。
「あの…服はどうしたら…」
僕の問いは姫野に何か思い付かせたようだ。
「雛ちゃん!ユウ君着替えたいって!雛ちゃん手伝ってあげないと!」
満面の笑みで姫野は藍坂に話しかける。
樫山はニヤニヤ笑っている、どうやら二人は藍坂を弄るのが大好きのようだ。
黙ってこっちの様子を見ていた藍坂は、思い出したような顔をして
「ああ、忘れてましたね。道具も一緒に支給しないと」
やはり藍坂は淡々と話す。
「今日はもう遅いから明日にしましょう。我慢して下さい」
そう言って藍坂は隊舎の奥に行ってしまった。
「むぅ…微妙な反応…」
姫野は残念そうだ。
「もっとこう、恥じてほしいな」
樫山も残念そうだ。
「いや、あれは自分の部屋で恥じたりするタイプだよ」
区隊長もいつの間にか参加している。
「あの…僕の部屋とかは…」
姫野がニコニコしながら部屋に案内すると言い出した。
「同じ小隊なんだから近いほうがいいよね!うん!いいに決まってる!」
姫野の思い付きによって僕の部屋は藍坂の隣になった。
「雛ちゃんには私から話しておくから今日は寝ていいよ、疲れてるでしょ?」
確かに色々ありすぎだ…すごい疲れた…
「ありがとうございます、お先に失礼します」
「じゃ~おやすみ~」
姫野が戻ると僕はすぐ横になった。ホントに疲れた…
とりあえず寝よう

翌日
2010年 3月28日 日曜日
8時16分 第四二管区隊舎

朝、藍坂に呼ばれ、服と道具である鎌の支給に行くから付いて来るように、と言われた。
「普通は試験を受けて案内人になるので支給品は自分で注文するんです、アナタは試験を受けずに特別許可だったのでしかたありません」
試験があるのは知らなかった。
「試験ってどんな内容ですか?」
「魂の丈夫さですね、魂が丈夫でないとこんな仕事出来ませんよ」
精神力のようなモノらしい。
隊舎の奥の売店に着いた。
「すいません、支給1型貰えませんか」
あ~はいはい、という声が奥から聞こえた。
顔を出した人は僕と藍坂を交互に見た後ニカッと笑って
「雛ちゃんデート?新隊員連れて、中々やるねぇ」
しかし藍坂は動じない
「違います、新隊員の『楠木 祐一』です。支給を受けにきました」
「よろしくお願いします、楠木祐一です」
売店の女性は満面の笑みで喋る。
「うん!よろしく、ここの売店で働いています、霧島です。楠木君サイズは中3型ぐらいかな」
漆黒のスーツを持ってきた、スーツを受け取り鎌のアクセサリーも一緒に貰う
「その鎌は案内人には絶対必要だから、いつも携帯しておいてね」
分かりました、と了解し藍坂に着替えた方がいいのか尋ねる。
「そうですね…とりあえず出動は今日はありませんからどちらでもいいです」
じゃあ着替えてきます、僕が部屋に戻ろうとすると偶然?姫野が現れた。
「あっー!ユウ君見っけ!支給されたの!?」
「あっ姫野さん、さっき支給されました」
姫野はフフフーと笑うと売店の前にいた藍坂の元へと走って行った。…スタイルはいいのになぁ 天然なのか…
「雛ちゃん!ユウ君の着替え手伝わないと!早く早く!」
予想通りといえば予想通りの声が聞こえてきた。
「何で私が祐一の着替えを手伝わないといけないんですか!」
ついに藍坂が怒鳴った、しかし姫野が注目したのはそこではなく
「え?ユウイチ?雛ちゃんいつの間に呼び捨てで呼びあう仲に?」
ちなみに僕は藍坂に呼び捨てで呼ばれたことはない。昨日の今日でまず呼ばれる事は無いが。
「べ、別に上官なんですから よ、呼び捨てでもいいじゃないですか!」
藍坂は相当焦っているのだろう、見てみたいが戻ったらボコボコにされるだろう。
部屋に戻って着替えるのが先だ。

スーツを着る、ネクタイは高校が学ランだったので結び方はわからない。鎌のアクセサリーは…よく分からないからポケットでいいや。後で藍坂か樫山さんに訊こう。
隊舎の待機所に行くと樫山と区隊長がいた。
「おはようございます!」
樫山は左手を挙げて反応した、区隊長は手招きしている。
「おはよう楠木君、昨日は眠れたかね?おっ?それは支給1型だな。うむ!頑張れよ」
じゃあ戻っていいよ
喋る間もなく頷くだけだが区隊長は満足したようだ。
「君の机はこっちだ」
樫山は斜め前の机を指さしている、机の上には『楠木祐一』と書かれたプレートが置いてあった。
「楠木、姫野知らないか?朝からいないんだよ」
「姫野さんは売店の前でうちの小隊長と遊んでます。あっそうだ樫山さん、このアクセサリーはどうするんですか?あと、ネクタイの結び方を教えて下さい」
樫山はアクセサリーを見たあと不思議そうに話した。
「それは道具だろ?」
道具?
「そう、道具。君は雛ちゃんに魂の切り離しの時に見なかったのか?使ってたろ?」
そういえば、手首に付いてた気がする。
「それは案内人が死者の魂を切り離す時に使う道具だ、大事なもんだから大切にしろよ」
ちょっと姫野を呼んでくるから何かあったらすぐ呼んで
そう言って席を立った樫山は隊舎の奥に行った。ネクタイは教えて貰えなかった。
これが切り離しの道具か…
アクセサリーを弄っていると藍坂が来た、少し顔が紅い気がするが放っておこう。
「道具を無くしてはダメですよ、再支給はありませんからね」
あくまでも事務的な言い方だ、ちょうど樫山と姫野も帰ってきた。
「小隊長、ネクタイの結び方を教えて貰えませんか?」
藍坂は表情をあまり変えずに目一杯背伸びをしながらネクタイを結ぶ。
少し藍坂が震えている気がするが気のせいだろう。
「はい、出来ました。結び方は覚えて下さいね」
姫野が藍坂を呼ぶ、藍坂は耳打ちされると焦ったような顔をしたが
「何を言っているんですか?姫野隊員は顔を洗った方がいいですよ」

グダグダやっているその時、区隊長の横にあるファックスが音を出して動きだした。隊舎の空気はほのぼのした空気から一気に張り詰める。
書類を見た区隊長は
「第二小隊出動命令!場所はイの26半径30メートル」
「了解!第二小隊出動!」
樫山と姫野は区隊長から書類を受け取りすぐに出発していった。樫山は仕事の目だったが姫野はあまり変わらない気がする。
「今のは?出動?」
「出動命令です、誰かが死ぬんですね」
そうか…ここは案内人の隊舎だった、仕事は死者を送ることだ。
僕はしばらく黙祷した、これから死ぬであろう、名も顔も知らない人に…

第四話 終
第五話に続く
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